もはや離婚騒動と同じ。佐藤優は日韓合意をどう見るか?
慰安婦問題に関する日韓合意をめぐり、韓国政府が元慰安婦の意見集約が不十分だったとする検証結果を発表した。それを受け、河野外務大臣は「合意の変更は断じて受け入れられない」と談話を通じて表明した。
また、河野大臣は報告書に基づいて韓国政府が合意を変更しようとすれば日韓関係は対処不能となると警告した。
報告書では、日韓合意に非公開部分があったことも明らかにしている。それによると、日本側は日韓合意への反発が予想される挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)などの説得を韓国側に要請した他、アメリカなどでの少女像設置の動きは不適切だと主張。これに対し韓国側は説得の要請を事実上受け入れて、海外での像の設置も支援しないと確認したという。
日韓合意や二国間関係は今後どうなっていくのか?元外務省主任分析官の佐藤優氏に、ニッポン放送「あさラジ」の高嶋ひでたけが聞いた。
日韓合意に関する問題はまるで芸能スキャンダル
高嶋:
佐藤さん、素朴に伺いたいのですけど、国と国とで交渉しますよね。そうすると国民や世界に向かって公表される部分というのは大体「結論はこれですよ」というのが出てくるわけですけど、その“見えない部分”が水面下に潜っていく。これは出て来る部分と見えない部分というのはどのくらいの割合ですか?
日韓合意に関する問題はまるで芸能スキャンダル
高嶋:
佐藤さん、素朴に伺いたいのですけど、国と国とで交渉しますよね。そうすると国民や世界に向かって公表される部分というのは大体「結論はこれですよ」というのが出てくるわけですけど、その“見えない部分”が水面下に潜っていく。これは出て来る部分と見えない部分というのはどのくらいの割合ですか?
佐藤:
こういうのは出て来ないのが普通です。30年後の外交文書解除のときに初めて分かるということなのですね。
こういうのは出て来ないのが普通です。30年後の外交文書解除のときに初めて分かるということなのですね。
これは“結婚と離婚”と同じで考えたら良いと思うのですよ。例えば松居一代さんと船越英一郎さんとか。結婚をするときは双方の合意ですよね。離婚のプロセスに至るときというのは、片方が「もう嫌だ」と言えばどんなにもう片方が相手を今のままにしようとしても駄目なのですよ。
ただそのときに、例えばYouTubeとかTwitterとかでありとあらゆることを言うとなると炎上するでしょう。韓国は今炎上させているわけですよ。炎上をさせることにメリットがあると思っているからなのですよ。そうするとこれは芸能ニュースと同じ構造で捉えた方が良いわけです。
高嶋:
その発想で見た方が分かりやすいと。
その発想で見た方が分かりやすいと。
佐藤:
そうすると、ここでとにかく頭に来ていると。ここで炎上させると。韓国はそう考えているわけですよね。だから外交のルールでやっていないですよね。芸能スキャンダルに近いことになっています。
そうすると、ここでとにかく頭に来ていると。ここで炎上させると。韓国はそう考えているわけですよね。だから外交のルールでやっていないですよね。芸能スキャンダルに近いことになっています。
だから「マネージ不能」というのは間違えた話で、これはもう駄目になっている夫婦ですから、離婚しか無いわけですね。だから別居するなりクールダウンするべきで、駄目な上でどうやってマネージメントをするかと。これ以上YouTubeで余計なことを言わないようにする為にはどうすれば良いかと、こういう方向のマネージに入った方が良いと思いますね。
高嶋:
ということは「不可逆的に」という表現は全部ぶっ飛んでしまったと。
ということは「不可逆的に」という表現は全部ぶっ飛んでしまったと。
佐藤:
もう終わりです。これは常識で考えましょう。要するに結婚のときは両方の合意だけども、片方がこういうことを言い出して、この結婚生活を維持できるでしょうかという段階ですよね。
もう終わりです。これは常識で考えましょう。要するに結婚のときは両方の合意だけども、片方がこういうことを言い出して、この結婚生活を維持できるでしょうかという段階ですよね。
高嶋:
でも佐藤さん、国のレベルでそんなことで良いのですか?
でも佐藤さん、国のレベルでそんなことで良いのですか?
佐藤:
これは珍しいのですが、起きてしまったことはどうしようも無い。要するに国家間関係でもひとつの国は今までのルールを守っていて、ひとつの国が極端に飛び跳ねたことをしてしまった場合にはそれが余計になってしまいますから。
これは珍しいのですが、起きてしまったことはどうしようも無い。要するに国家間関係でもひとつの国は今までのルールを守っていて、ひとつの国が極端に飛び跳ねたことをしてしまった場合にはそれが余計になってしまいますから。
でもそういう国はひとつではないでしょう? 今話している国のちょっと北の方にもそういう国があるでしょう。あの2つの国との関係というのは普通の外交のルールが通じない。
約束はしたけども「守る」とは約束していないということになり得るということを常に考えた上で外交戦略を構築しなければいけないという、我々は非常に高い授業料を払ったと考えて先に進んで行くことが大切だと思いますね。
韓国にとっても大マイナス
高嶋:
過去の歴史の中でそういう国で象徴的なものはあったのですか?
高嶋:
過去の歴史の中でそういう国で象徴的なものはあったのですか?
佐藤:
全く無いというわけではないですけど、ドイツ第三帝国とかですよね。
全く無いというわけではないですけど、ドイツ第三帝国とかですよね。
高嶋:
ソ連が日ソ不可侵条約みたいなのをやりましたよね。
ソ連が日ソ不可侵条約みたいなのをやりましたよね。
佐藤:
ただあのときは連合国に言われているという側面との天秤がありますから。今回は天秤が無いのですよ。内政上の理由だからです。
ただあのときは連合国に言われているという側面との天秤がありますから。今回は天秤が無いのですよ。内政上の理由だからです。
そうすると、ナチス・ドイツの第三帝国とかファッシ・イタリアとか、そういうところの方が先例に近いですよね。「一方的に外交のルールを決めることができる」「国際秩序は変更しても良いのだ」という考えはいかに国際社会の中で顰蹙を買うかと。
韓国にとっても大マイナスですよ。それから政権が変わっても国家が変わったわけでは無いですから。しかもそこで戦争があって革命があって政体が変わったわけでは無いですから。
合意は拘束するというのは国際法の大原則なのです。これは双方が合意しないところでこういった調査をすること自体おかしいし、しかも双方の国が秘密だと言っていることを一方の国が明らかにすると、今後もこういうことが有り得るということなので、秘密の話はできないですよね。だから韓国は今多くの物を失っているのですよね。
日本としてもこの合意ができなくなったら全部おしまいだというのは外交上の修辞としては良いですけど、もう終わったということを考えた上でどういう風に韓国との関係を再構築していくかという。嫌な人がいた場合、人間だったら引っ越すという手がありますけど、国家は引っ越せないですから、こういう風に考えないといけないのです。
ただこれによって日本が国際社会で失っている物は無いですからね。一方的に失っているのは韓国ですから。
高嶋:
何だか文在寅さんが中国に行ったときにもどうやら思うように接待してもらえなかったとか、何だか泣き言みたいなことをあそこは余計に言うのですよね。
何だか文在寅さんが中国に行ったときにもどうやら思うように接待してもらえなかったとか、何だか泣き言みたいなことをあそこは余計に言うのですよね。
佐藤:
いずれにせよ内政上の理由で、今はおそらく「我々はコケにされている、軽く見られているんだ」ということを言うのが「何を!」というかたちで、だから「大統領頑張れ!」となっていると。
いずれにせよ内政上の理由で、今はおそらく「我々はコケにされている、軽く見られているんだ」ということを言うのが「何を!」というかたちで、だから「大統領頑張れ!」となっていると。
「今までの大統領は本当に国の利益よりも外国の為に動いていましたね」と、こういう雰囲気を出そうとしている内政要因ですね。韓国は自分のことしか考えていない“トランプ症候群”で、善悪ではなく快不快で動く外交になりつつある。
高嶋:
社会常識的なことで言うと、何だかトランプさんと少し似ていません? 自分のことだけ考えるみたいな。
社会常識的なことで言うと、何だかトランプさんと少し似ていません? 自分のことだけ考えるみたいな。
佐藤:
似ています。だからこれは“トランプ症候群”がこういうような形で世界中に広まっているのですよ。自国のことだけ良ければ構わないのだという発想ですよね。それで相手が激しく文句を言って来て、マイナスになったときに初めて考え直すと。しかし、それも心の底から反省しているのではなくて得か損かで動いているということですよね。
似ています。だからこれは“トランプ症候群”がこういうような形で世界中に広まっているのですよ。自国のことだけ良ければ構わないのだという発想ですよね。それで相手が激しく文句を言って来て、マイナスになったときに初めて考え直すと。しかし、それも心の底から反省しているのではなくて得か損かで動いているということですよね。
犬は「テーブルの上に乗るな」と言ったら本当に言うことを聞いて乗らないですけど、猫はテーブルの方がちょっと温かいと乗っている。それは善悪ではなく快不快で動いているのですよね。
だから少しそういう風な外交になってきていますよね。「ばれなきゃ良いんだ」とか「文句言わなければ良いんだ」とか、あとはとりあえず大声で言ってみて、後から妥協するにしても「大声で言った後で折り合いを付けるから自分の方に少しだけ有利になるんだろう」とか。これは“トランプ型”ですよ。
高嶋:
常識的に考えれば、北朝鮮がいつ何をするか分からないようなおかしな状況になっているわけでしょう。それと休戦協定を結んでいて、南の方で自由を謳歌しているわけですけど、アメリカや日本というのがこちら側の体制で韓国を押してくれるわけで、そういう状況から言えば、とてもこんなことを言えた義理では無いと僕は思うのですけどね。
常識的に考えれば、北朝鮮がいつ何をするか分からないようなおかしな状況になっているわけでしょう。それと休戦協定を結んでいて、南の方で自由を謳歌しているわけですけど、アメリカや日本というのがこちら側の体制で韓国を押してくれるわけで、そういう状況から言えば、とてもこんなことを言えた義理では無いと僕は思うのですけどね。
佐藤:
そこについては「それはそれ、これはこれ」という。だから「そこの部分は思い切り言わせてやるけども、北朝鮮に対して韓国が頑張るときにはちゃんと助けろよ。それはそれ、これはこれ」と、こういう話でしょ。
そこについては「それはそれ、これはこれ」という。だから「そこの部分は思い切り言わせてやるけども、北朝鮮に対して韓国が頑張るときにはちゃんと助けろよ。それはそれ、これはこれ」と、こういう話でしょ。
高嶋:
河野さんも打つ手は無いですかね?
河野さんも打つ手は無いですかね?
佐藤:
無いですね。これは打つ手が無いです。だから逆に冷静に、打つ手が無いというところから認識して時間を掛けて向こうの対応が変わるまでは少し静かにしておくと。この合意は崩れたと見た方が良いと思います。
無いですね。これは打つ手が無いです。だから逆に冷静に、打つ手が無いというところから認識して時間を掛けて向こうの対応が変わるまでは少し静かにしておくと。この合意は崩れたと見た方が良いと思います。
高嶋:
2018年の朝鮮半島って、無茶苦茶面倒くさいですね。
2018年の朝鮮半島って、無茶苦茶面倒くさいですね。
佐藤:
面倒くさいです。本当に大変で複雑です。これは何も無いということの確認が重要です。
面倒くさいです。本当に大変で複雑です。これは何も無いということの確認が重要です。