「ちゃんと死ねる気がしない…」

LGBTカップルが抱える現実的な問題とは?

 
「人生100年時代」に突入するニッポン。住み慣れた地域で老いて安心して死ぬことができたのは、もはや過去の話だ。非正規労働、シングルマザー、フリーランス、LGBT……。生き方が多様化する中、老後、そして「死に方」の不安とは。

*  *  *
 未婚化というライフスタイルの変化で、独身、あるいは家族と死別・離別した単身世帯、いわゆる「おひとり様」が増えている。国勢調査によると、15年の単身世帯数は1842万世帯と、95年の調査時点に比べ6割増えた。本誌がアエラネットで実施した「おひとり様」アンケートでは、55人から回答があり、78%もの人が「将来への不安を抱いている」と回答した。

「体調の悪いとき」(会社役員、44歳男性)、「病気になったときどうすればいいか。動けなくなったらどうすればいいか」(会社員、46歳女性)「年をとってからの貧困」(会社員、41歳女性)……。健康や経済面から来る不安を挙げる人が多いが、単に経済的困窮だけでなく、社会的孤立から来る不安を挙げる人も少なくなかった。

 東北の地方都市に暮らすおひとり様のA子さん(46)は、そんな一人だ。

「助けてと言えません」

 地方だから地域の絆が強いと思われがちだが、地方ほど保守的で交流が途絶えがち。お金がいくらあっても、地域で孤立すると疎外感を覚えるという。

 A子さんは難病を患っている。だからなおさら、年を取ると外出もままならなくなり地域との絆が薄くなるだろうという。

「弱みを見せたくないので、何かあっても近所にSOSを出せないですし、役所も冷たいです。誰にも迷惑をかけないで60歳までに死にたいです」

 現代は、生き方が多様化し、「家族のカタチ」も変化している。従来の家族のカタチを超えてつながっているのがLGBTなどの性的マイノリティーだ。日本人の7.6%、13人に1人がLGBTに該当するという電通の調査(15年)もある。そんな性的マイノリティーの人たちが抱えるのが、老後、そして「死に方」への不安だ。

 

都内在住のB子さん(27)は、今の心境を吐露する。

「ちゃんと死ねる気がしなくて」

 バイセクシュアル(両性愛者)で、1年半ほど前から1歳年下の女性とつきあいはじめた。彼女とはこのままずっと一緒に過ごしていきたいと思うが、今の日本では法律上、同性婚は認められていない。

「家族」に対する思いが強いほうではない。結婚とは紙切れ一枚の問題だと頭ではわかっている。わかってはいるが、その紙切れ一枚にこだわり、夢を見るのだ。

「だけど、今のままでは夢を見ることができません」

 どちらかが病気や事故などで入院した際、診察には「家族」以外は立ち会えない。パートナーとはそうした話はしていない。その時になってみないとわからないという。また、死んでも、同性婚のカップルは同じ墓に入ることはできない。日本の慣例では、家の墓(一般墓)には「親族」でなければ一緒に埋葬することはできないからだ。墓に対しては絶望的。地元には父親がつくった墓があるが、そこに入ったとして、誰が管理し私を供養してくれるのか。「無縁仏」になるしかないのだろうか──。今かろうじて考えられるのは、こんなことだ。

「死んだ後、迷惑にならないような手続きがあればいいな」