「魔法少女まどか☆マギカ」と「けいおん」。

ともにビジネス面において抜きんでた作品ではあるが、両者のヒットの質に大きな違いがあることにお気づきだろうか。


とりあえず金になるということで、切符やら何やらと作品との関連性に乏しい商品を大量に生み出している「けいおん」。

ご存知のとおり、内容は皆無に等しく、部室で菓子食いながら雑談している萌えキャラを眺めるだけのアニメであり、何故ヒットしたかを別のカテゴリーで例えるならば、とある風俗店が他の店よりも見栄えがよく客受けしそうな女の子を集めたから、他の風俗店よりも大きな売り上げをあげましたという程度の話である。

つまるところ、「けいおん」は、「かなめも」、「そらのおとしもの」、「乃木坂晴香の秘密」といった同次元の競合作

よりも萌えたキャラがいたからというのがヒットの理由であり、幾ばくか儲けを出したからといって、数字上はともかく、文化的な見地からみれば、それほどふんぞり返って威張るほどのものではないことが理解できるだろうね。


翻って「まどか☆マギカ」は、まさに革命的な傑作であり、一見平凡な少女たちが魔法少女として生死を賭した

戦いに身を投じる全編ハードな展開は、従来の温く凡庸なアニメ群とはまったく異なる高みにまで達しており、

例えるなら、「ウォークマン」や「IPod」、「ファミリーコンピューター」といった文化を変えるほど発明品と同じ高みにいる作品といえばその凄さが分かるだろう。


今はネットが発達し、少数のオタがどこかしこに押しかけるだけでニュースになり、その情報がまたたくまに拡散し、皆が知ることになる時代であるため、「けいおん」のような、コア層に支えられているアニメなのに、社会現象ではないかと錯覚してしまうのも無理はないかもしれない。

しかし、映像ソフトの売り上げを見れば、「IS」といい勝負という時点で「けいおん」のファン層が実は狭いことが

理解できるだろう。


「まどか☆マギカ」と「けいおん」。

同じヒット作でも、その質には大きな違いがあることはきちんと認識すべきだろうね。










2011年はオリジナルアニメが活況を呈しているようだね。


「魔法少女まどか☆マギカ」に始まり、今春は、「タイガー&バニー」、「花咲くいろは」、「あの花~」と、高い評価と人気を博しているオリジナル作品が例年になく次々と放送されており、2011年はオリジナル(非シリーズ)アニメの年といってもいいだろうね。


もともとオリジナルアニメは、原作物と異なり、視聴者のとっては、先の展開が分からないため、次の展開をあれこれ予想したりと楽しみは多いのだが、制作者側にとっては、ゼロから作品を生み出すことの労力の大きさと、原作を売るというビジネスが出来ないことや、最初からファンがいる原作物と異なり、どれだけ人気が出るか計算が困難などといった理由から、オリジナル物は忌避されてきたきらいがあった。

故にアニメは、そこそこ売れている萌え系ラノベ物であったり、計算が立つガンダム、マクロスといったシリーズ物ばかり作られてきた。

しかし、2011年は、マイナス要素が多いにも関わらず、オリジナルアニメが大いに盛り上がっている。


これは、「コードギアス」の成功が大きな要因ではないだろうか。


ご存知の通り、「コードギアス 反逆のルルーシュ」は冠絶した大傑作であるとともに、非シリーズ物の完全オリジナル作品である。

通常、オリジナルアニメを企画は放送前の3~4年前から始まることを考えれば、2006年秋から放送されたコードギアスの絶大な人気を目の当たりしたアニメ制作者たちが、我先へとオリジナルの企画を考案しだしたことは

想像に難くないだろうね。

「エヴァンゲリオン」のように、「ラーゼフォン」、「エウレカセブン」といった無意味に小難しい三流ロボットアニメや、「涼宮ハルヒの憂鬱」のようなセカイ系とかいう矮小で温い人間関係に終始するアニメしか生み出さなかった

作品と異なり、コードギアスは、アニメ界を健全でよりよい方向に導いているようだね。









テレビ版ガンダムシリーズ最新作である「ガンダムAGE」が発表されたようだね。


さまざまな事前の予想は大きく外れ、キャラ、メカデザイン、世界観と、どれを見てもまごうことなき子供向け作品になっており、果たしてこれがガンダムなのかという疑問が沸き起こるのも無理は無いだろうね。

確かにこれまでもSDガンダムといった低年齢層向けのガンダムこそあったものの、あくまでもデフォルメされた

派生作品であり、大々的にテレビアニメで放送されるのは、ハイティーン向けのリアル等身のガンダム作品であった。

ところが今回のAGEは、派生作品というわけではなく、SEED、OOに次ぐ、ガンダムビジネスの中核でるテレビアニメ版ガンダム作品であり、あまりの毛色の違いに戸惑い、失望するファンが多いというわけである。


もっとも、やや高齢化しつつあったガンダムのファン層を、低年齢層にも広げる必要があるから、今回の子供向け路線もいいだろうという声もある。

子供向け娯楽作品で実績のあるレベルファイブが全面的にかかわることで、イナズマイレブンのような効果をもたらすことを期待する向きもあるだろう。


しかし、今回のような急激な路線変更が従来のファンを失うことになりはしないだろうか。

90年代に、シリアスで陰惨なV、エンタメ格闘路線のG、女性ファンを意識したW、ひたすら地味なXと牧歌的でダサイターンエーと、作品ごとにバラバラで統一感の無いガンダムを放送した結果、ファンが離れ、ガンダム冬の時代を迎えてしまった悪しき前例を思い起こさせるものがある。

そもそも、子供向けロボットアニメなら、勇者シリーズを復活させればいいだけの話であり、ブランド維持のためにもガンダムはガンダムの作風というものを守る必要があるだろう。


少なくとも2011年~12年において、希少なリアル路線のロボットアニメがひとつ無くなったわけだが、これによって、「コードギアス 亡国のアキト」にかかる期待はますます大きくなったと言えるだろう。

今回の路線変更の一端には、当面、コードギアスにリアルロボット路線を任せるという意図もあるのかもしれない。

なんにせよ、失望の声が広がっていくのは間違いがないだろうね。