aican2012のブログ

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もう三年にもなるかな。


暑い夏だった。


僕は、高崎線の電車に乗ったんだ。


先頭車両に乗ろうと思ったが、なぜかその日は三両目に乗った。


連日の暑さで疲れていたんだろう。


座席に座って目を閉じていた。


意識ははっきりしていたんだ。


快速の電話だったから、スピードは出ていたと思う。


鴻巣を過ぎたあたりだろうか。


電車に急ブレーキがかかったのを感じたんだ。


車輪がレールの上を滑っているのが分かった。


なぜならキーという音と車体が左右にゆっくりと揺れていたからだ。


それから数秒してかすかに衝撃を感じた気がした。


人身だな。直感でそう思ったんだ。


早く止まれと思った。


何かが自分の車両を通過したのが分かった。


何かに乗っかった感じがしたからだ。


ようやく車両が停止した。


踏切から4~5m離れた位置だった。


若い車掌が緊張した声で、


「ただいま、この電車にて人身事故が発生しました。」


とアナウンスした。
「え~っ。」「マジかよ。」「ちぇ(舌打ち)。」


乗客から声があがる。


車両には、座席に隙間がないくらいには乗客がいただろうか。


しばらくして「今から運転手と車掌で現場の確認のために外に出ます。しばらくアナウンスは行ないませんのでご了承ください。」


乗客が一斉に携帯を打ち始める。


「ちょっと遅れるね。」「人身にあっちゃったよ。」


約束に遅れることを伝える人の声が聞こえる。


メールを打つ人、何かを調べる人、僕も平静を装いながら携帯から情報の検索を始める。


とにかく何が起きているのか、知りたかったのだ。


こういう場合、現場にいる人間ほど情報がないものだ。


もちろんすぐにこんな情報がネットに出てくる訳もない。


斜め前に座っていたおやじさんが窓を開けて身を乗り出して外の様子を見ていた。


僕は怖くて窓の下を見ることができなかった。


こういう時にいろんな経験をしてきている親父というのは、強いものだと痛感した。


数分して再び車掌からアナウンス。


「近くの駅から駅員がまいります。車両をまわりますので、気分が悪い方は申し出てください。


なお、お客様のなかに鉄道関係者がおられましたら、名乗り出てください。」


しばらくすると駅員が車両をまわってきた。


「気分の悪い方は、おられませんか。」


おばちゃん数人がトイレの位置を聞いている。


乗客の何人かが今起きていることを問いかける。


「ただいま、"救出作業"を行っています。」との答え。


救出と聞いてほっと一安心したようだ。


少なくとも死んではいないのだと誰もが思ったに違いない。


僕もそう思った。


けれど車両の下で今まさに大怪我をして苦しんでいる人がいると思うと気が気でなかった。


またしばらくして救急車とレスキュー隊のサイレンの音。


踏切を見れば開かない踏切のせいで、道路は大渋滞。


何が起きているのか分からない外の車の人達も苛立っているのが見て取れた。


しばらくすると線路の砂利の上をカッパのようなものを着た警察官が走っていくのが見えた。


そのすぐ後にJRの工事関係者だろうか。黄色いヘルメットをかぶった人達が走っていた。


再び、踏切に目をやると、騒ぎを聞きつけた中学生だろうか。


自転車に乗りながら現場をパシャ、パシャと携帯で撮影していた。


外で起きていること、いま君が目にしていることが知りたかった。


40分ほど待っただろうか。


乗客も飽きてきて、寝る人や本を読み出す人。


隣の友人としゃべる人など、だんだん緊迫も緩んできた。


車掌からアナウンス「ただいま救出作業が終了しましたので、発車いたします。」


別の車掌の声に聞こえた。


その後も携帯で情報を調べ続けたが、出てくるのは高崎線の遅延情報だけ。


ただ人身事故による遅れとしかなかった。


終点駅までその後の車両は、いつもと変わらない風景に戻っていた。


停車駅で普通に降りる人、事故車両とも知らずに普通に乗り込んで来る人。


その後乗り込んで来た乗客達は、さっきまでの緊迫ムードも知らずに楽しそうに旅の思い出をペチャクチャとおしゃべりしていた。


ほとんど事故当時の乗客がいなくなった終点駅で僕は電車を降りた。


本当にこの車両が事故を起こしたんだろうか。


あまりに日常的な光景に僕は先頭車両を見てみた。


人身事故の何の痕跡すら発見できなかった。


何か狐につままれたような気がしてならなかった。


後日、どうしても気になってネットでこの人身事故について調べてみた。


日時が一致したニュース記事があった。


そこには20代の男性と思われる、間もなく死亡とあった。


性別すら特定できない状況で救出とは・・・。


後に知ったことだが、死亡の判断するのは医者らしいので、それが明らかだとしても踏切事故の時点では「救出」というんだとか。


しかし、あの時にそれを言われてたら正直パニックだったかも。



その時知ったんだが、首都圏の鉄道の人身事故の多いこと多いこと。


もう二度とこんな事起きて欲しくない。


どうやったら身近な人を守れるんだろう。


JRや行政に何度も何度も申し入れしているんだが、都内の全ての駅に転落防止柵を設置して欲しいんだよな。


1駅に転落防止柵を設置すると1億円と維持費がかかるとか言われたんだが、行政を動かすには議員かと思って、議員に言ったら、ようやくJR山手線のいくつかの駅で設置し出したよ。


早く設置して。


小さな子供が親のスキを見てホームの端に走りだして、何度ヒヤヒヤしたか。