書き散らしの日々 -4ページ目

京響の《ファウスト交響曲》を聴いてきました。

久しぶりの更新となります。申し訳ない限りです。

さて、昨日(1月21日)は、京響の定演に行ってきました。曲目はリストのピアノ協奏曲第1番と《ファウスト交響曲》。指揮は沼尻竜典、ピアノ独奏が児玉麻里でした。

いやあ、すばらしい《ファウスト》でございました。沼尻氏の指揮をナマで聴くのは実は約20年ぶり。この前どこで何を聞いたのか資料を掘り返したら、93年2月1日、パリのレ・アールにあるシャトレ座のオーディトリオム(今は大きなシネプレックスが入ってるところ)で、プログラムはこんなでした。

バルトーク:三つの村の情景Sz79
リゲティ:ラミフィケーションズ
ハイドン:交響曲第7番「昼」
武満:ア・ウェイ・ア・ローンII
エルサン:ミサ・ブレヴィス

演奏:アンサンブル・オルケストラル・ド・パリ
   グループ・ヴォーカル・ド・フランス

うーん、懐かしい!グループ・ヴォーカル・ド・フランスなんて、とっくに解散してしまったではないですか?

この時の演奏会は、しかしながら正直言って、リゲティ、ハイドン、武満といったところぐらいしか記憶に残ってません。バルトークはツィクルスの一環だったんだけれど、たしかこのシーズンのシャトレ座はシューマンのツィクルスを同時に行っていて、そちらにはかなり行った記憶があるのですが、バルトークの方はあんまり行かなかったのではないかしらん。大好きなエルサンの出世作《ミサ・ブレヴィス》など、プログラムを見返して初めて聴いていたことを知ったという体たらく。困ったもんだ(x_x)。


Hersant: Paysages avec rui.../Various Artists

¥1,500
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※モバイル非対応


閑話休題。以前聴いた時も沼尻氏の音楽にはかなり好印象を受けた記憶はあったのですが、今回の京都の《ファウスト交響曲》でも、あらためて彼の巧さというものを堪能しました。あのやたらに長く、かつとらまえどころのない音楽に対して、きちんとした起承転結を与えて鮮やかにまとめてみせる手腕は、並大抵ではないと思いますよ。

ところで、リストの《ファウスト交響曲》、私は曲がもつ数々の欠点については十分に認めつつ、そうした弱さも含めて、この曲が大好きです。もう愛といってもいいくらい(^_^;)。私には市場に出てるCDのコンプリートを目指している曲目というのがいくつかあるのですが、当然《ファウスト交響曲》もそのうちに入ってます。(リストではあと《ダンテ交響曲》と《十字架の道行》が収集対象です。)ナマで聴いたのは2度目ですが、舞台上をみながら聴くとやはり新しい発見が聴くたびにありますね。楽器の組み合わせの奇天烈さとか、楽器配置を考えるとどうにも妙チクリンな楽器法とか、リスト以外の誰にも思いつけなかったであろう奇想があちこちに仕掛けてあって、それを追いかけるだけでも楽しさ満点です。そういえば今日は東京では読響も《ファウスト交響曲》を採り上げていたのですなあ。聴きに行けなくて残念。今年はアニヴァーサリー・イヤーでもあることですし、できればもう一度どこかで実演を聴いておきたいものです。

Liszt: Faust Symphony (Sinopoli)

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オステルリッツ駅にて

千々岩英一さんのtwitterで紹介がありました。アルテミス四重奏団がパリ・オステルリッツ駅のホームでベートーヴェンの弦楽四重奏曲を弾いております(第15番の第3楽章)。ご覧になれるのは今日から数えてあと170日ほどだそうですので、お急ぎを。

えっと、演奏もよいのですけれど、いちばん気になったのは、どうやって音を拾ったのかということです。だって、あそこってすごくうるさいのに。途中で入る足音とかからすると、相当に指向性の強いマイクを4本立てたということでしょうか。

iTunesで映画を落とす

とうとう日本でも始まりましたね。iTunesでの映画販売&レンタル。音楽ファイルと違って、HD画質なんてクオリティの高いものをいきなり売るというのがすごいですなあ。
(音楽ファイルの時は、最初低音質で販売を始めて、途中からアップグレードしましたからね。)

さっそく1本ダウンロードしてレンタルしてみました。何にするか悩みましたが、とりあえず懐かしの大映映画『大魔神逆襲』にしました。これ、私は子供の頃に封切りで観たことがあるのが自慢です(^_^)。

大魔神逆襲 デジタル・リマスター版 [DVD]/二宮秀樹,北林谷栄,名和宏

¥2,940
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おっと、まだアメブロのアフィリエイト用ツールからはiTunes映画販売へのリンクは貼れませんでした。

しかし、ただいま出張中のために今回はiPhone(+ WiFi)で落としてるのですけれど、90分のHD映画を落とすのに、ほとんど90分かかりますぜ。何だかなあ(>_<)。これはもう、寝る前にダウンロードを始めて、次の日に観る、というのが正しい使い方かもしれませんなあ。

次にレンタルする映画ももう決めてあります。『ゴッド・ファーザー』3部作。次はおうちのパソコンから、もう少しサクサクっとダウンロードする予定です。

冬眠前のクマのように

CD・mp3ファイルのドカ買いをしている最中でございます。

まあこういう一種の「大人買い」にはしるときというのは、基本的にこれから記事を書く曲目について、手持ちのCDじゃあちょっと足りないなあと思って、アマゾンやらiTunesやらを使って目ぼしい音源を買い漁るというパターンが大半なのですが、それ以外にも折々で原稿に関係なく気になった曲の音源を集めて聴いたりもする。でもって、そちらに熱が入り過ぎるあまりに肝心の原稿書きがおろそかになることも、しばしばたまにあるのですけれど、今回はその両方がいちどに我が物欲を襲ってきていてちょっとたいへんな事態になってます(x_x)。ほぼ毎日ネットの画面をポチッとする一方で、入手したCDをリッピングしてiTunesにとりこむのに膨大な時間を割いている状態です。

原稿に関係する方はここでは触れませんが、もう一方というのは、なんとシューマンのピアノ協奏曲。こんな有名な曲が私はずっと苦手で、今まで手許には2,3種類(かな?)のディスクしかなかったんですけれど、思い立ってあれこれ手に入れて聴いてみました。

Schumann: Piano Concerto

¥1,500
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これは今回iTunes Storeで買った1枚ですが、今物理ディスクでは出てないんですなあ。アンドラーシュ・シフ独奏、アンタル・ドラティ指揮コンセルトヘボウ管の演奏で、1983年の録音です。ドラティの泣きを入れない剛毅さとシフのベタつかない繊細さがいい味出してますね。一方、今までふつうにこの曲を何で聴いてたかというと、

シューマン&グリーグ:ピアノ協奏曲/ルービンシュタイン(アルトゥール)

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言わずと知れたルービンシュタイン&ジュリーニ、それにサンソン・フランソワ独奏、パウル・クレツキ指揮のEMIの古い録音あたりでしょうか。後者は近々に発売される「フランソワ・EMIコンプリート・レコーディング」でも買わない限り、現在は入手不可のようですが。

急にシューマンの協奏曲が気になり出した理由は、やはり奥泉光の『シューマンの指』であります。今月の《レコ芸》にも登場しててビックリしてしまいました。

シューマンの指/奥泉 光

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これの冒頭にシューマンの協奏曲の話が出てくるんですな。それで気になって聴き出したのです←というと、冒頭しか読んでないみたいですが、もちろん最後まで読んでます。内容は——以前コメント欄でも書きましたが、今どきのミステリとしては至極真っ当、彼の小説としてはぶっ飛んでない分とっつき易いだろうなあと思います。レコ芸の記事で本人も言ってましたが、今回は「シューマンの代表的なピアノ作品の解説がストーリーに呼応する」ところにミソのある小説です。

ついでですが、《レコ芸》で奥泉氏の紹介しているウゴルスキのシューマン《ダヴィッド同盟舞曲集》も物理ディスクとしてはとうの昔に廃盤のようですね。iTunes Storeにリンクしておきます。

Schumann: Davidsbündlertänze, op.6

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今月のレコ芸では(2010年11月号)

今月も無事に(かどうかは編集さんに訊いてみないと分かりませんが)原稿をすべて入れ終わり、先日《レコード芸術》誌最新号が書店に並びました。

私が原稿を書いている分については、マーラー特集のディスク・チョイスなど、説明の必要そうなところもあれこれあるのかな、と思いますが、基本ここでは誤植・誤記以外の言い訳はしないことにしているので、そちらについては触れません。今月は特捜プロジェクトでブルーノ・マデルナを採り上げた原稿を書かせていただきましたので、今回は恒例?により、そちら関連の参考文献&出典を挙げておきます。関係する文献は何冊か持っているのですが、とりあえず参考にしたもののみ。

Raymond Fearn, Bruno Maderna, Contemporary Music Studies : Volume 3, Harwood Academic Publishers, 1990.

おそらく現在マデルナ関連の文献としてはいちばん基本的なところではないでしょうか。譜例を豊富に引用しながらの作品解説が主となっていますが、巻末付録にあるビブリオグラフィーがたいへんに詳しく、抜粋して使わせてもらいました。記事では字数の関係から省略してしまいましたけれど、少年時代のマデルナの養い親となったイルマ・マンフレディ夫人のエピソードも非常に面白く、またマデルナの人格形成や作曲修業の過程を知る上で欠かせないように思います。いつかどこかで紹介できるといいなあ。

マデルナの出生から幼年時代に至るまでの数奇な成り行きというのは、日本語ではWikipedia!でもちゃんと記述されていないので、まあ紹介できてよかったかな、と(^o^)。

Geneviève Mathon, Laurent Feneyrou, Giordano Ferrari (éd.). A Bruno Maderna, 2 vols., Basalte, 2007, 2009.

なぜかフランスで刊行されたマデルナ関連の論文集です。2巻合わせると1100ページを超えるというとんでもない分量で、私はもちろんちょっとしか読めてません(^^;)。大半は作品論なんですけれど、同時代人の証言もけっこうな数収録されていて、記事に引用したノーノの文章は第1巻から、ブーレーズの言葉は第2巻の後書きから採りました。実はブーレーズは作曲家としてのマデルナをあまり評価していないのですけれど、彼が追悼曲を書いたのがマデルナただ1人という点からして、敬愛していたのは間違いないですね。(ちなみに、評価しない理由は、楽譜が不確定記譜としても不完全過ぎるということだそうです。何かを始めても、それをきちんと綿密に、最後まで仕上げるということのできない人だった、というようなことを言ってますな。)

うちの書棚をひっくり返すと、神童時代のマデルナを撮った写真の載っている本だかCDのブックレットだかが出てくるはずで、今回もここで紹介できないかと思ってそれを一生懸命探したのですが、出てこなかったなあ。残念。