「ちょっ!わっ!!」

気が付いたときには、いつものベッドの上だった。

「よっしゃ。合コンにいたタイプの女の持ち帰りに成功~」
楽しそうにそう言ったのは慶一だった。
いとも簡単に奈々を押し倒した彼の表情は、とても…それはもう、とても楽しそうだ。


「ごっ…持ち帰り……」
「俺に持ち帰られちゃったな、奈々。まあ、ここお前の家だから俺に持ち帰られるのは当然だけど」

今、奈々の家と慶一の家は同じだ。
まあ、当然だけど…


タイプの女の子………か。

「ねぇ、慶一」
「ん?」
「本当に、奈々で合ってる?」
「……は?合ってるって、何が」

あなたのタイプの女性は、本当に奈々で合っている?
こんなにも何も無い奈々が、彼のそれに当てはまるのだろうか。

「慶一の好きな女の子のタイプって、本当に奈々で合ってるの…?」
「……?合ってるけど」
「でも、奈々なんかより素敵な女の子なんてたくさんいるよ」
「………」
「いつか、もっとタイプの女の子に出会っちゃったら……慶一はその子のところへ行っちゃうのかな」

ああ。
嫌だ。
行ってほしくない。
ずっとそばに居てほしい。

「そんなの…ヤだな……」

この距離に居ても、彼に聞こえるかどうかわからないほどの小さな声で呟く。

「何言ってんだお前。行くわけねぇだろ」
そう言い切った彼へと視線を向ける。

「奈々、お前…これだけ俺に執着されてながら、少しもわかってねぇんだな」
「わかってない…?」
「俺がお前から離れるわけがねぇってこと」

執着…?

「でも…」
「絶対にない。ぜったいに」
「……どうしてそう言い切れるの?」
「俺の心は、お前にしか動かない。それは俺自身が一番よくわかってる」
「慶一の心は、奈々にしか動かない…?」
「俺の心を動かした責任とれよ、奈々。……ついでに、そんなくだらない考え事なんてこの俺が全部ぶっ飛ばしてやるよ」
「え…?」



………………
…………

……






「はぁ……はぁ………はぁ…………」
洗い息をしたまま、シーツの海へと沈む。

ダメだ。
もう指先ひとつ動かせない……

そう思ったその時。
大きくベッドが軋んだ。
おそらく、慶一が隣に寝転んだことによるものだろう。
動けない奈々からは、直接見えないけれど。

「あれー?奈々ちゃんは、コレで限界?」
少し意地悪な声が、奈々の耳元で聞こえた。

限界に決まっている。
どれだけしたと思ってるの…!!

「チッ……もう終わりかよ。お前、クソも体力ねぇーな」
などとながら、力強い腕が奈々の身体を包んでくれた。

ダメだ…
反論もできない……

その時。
自分では動かせない左腕が急に動いた。
彼が奈々の左手首を掴んだからからのようだ。

直後。
奈々の左手の薬指あたりに温もりを感じた。

なんだろう…?


「俺は一生、お前のモノだ」

慶一…?

「何を考えてたのかは知らねぇが。この指輪に誓ったとおり、俺は一生お前のモノだよ」

指輪……
結婚指輪のこと…?

「それから………奈々は一生、俺のモノだ。逃がさない。ぜったいに………」
そう言いながら、少し強く奈々の身体を抱きしめる彼。

どうしてこの人は、奈々の欲しい言葉をたくさんくれるのだろう。

逃げるわけない。
逃したくないのは奈々の方だ。

大好きだよ、慶一。

そんな事を思いながら、ゆっくりと意識が遠くなっていった。




**********


意識を手放したらしい彼女の髪に優しく触れる。

その綺麗な黒髪の束に唇を落とす。


甘い。
奈々の身体は、全てが甘い。


食べ物ならば、甘いものが苦手な俺だけど。
奈々の甘さなら、どこまでだって好きだ。

ずっと彼女を堪能していたい。


よくわからねぇが、さっきはコイツが変なこと言うから好き勝手にしたが……
ヤり過ぎたのか……?

反撃はもちろんのこと、反論も出来なかったみたいだったな。
奈々に反撃されたとこで、俺は痛くも痒くもないが。

『けいいちのバカぁー!』
っと、泣きそうな奈々に殴られた所で肌には何も感じない。

アレは力入れてんのか?
俺相手にかなり加減してるのか……?
よくわからねぇが、奈々に叩かれたトコで俺には触られた感触がある程度でしかない。
もしもアレがそこそこ本気だというのなら、コイツの力の無さに不安を覚える。

(※ 本気ではないにせよ、奈々はそこそこの力を出してる。バケモノレベルに慶一の防御力が高いだけ)


それよりも、泣きそうな奈々の顔がたまらなく可愛くて。
もっと泣かせたくなる気持ちになる。

まあ、でもやっぱりコイツには笑ってほしいと思う。

コイツの笑顔が、俺の力になるから。

もう一度、彼女の左腕を握る。
そうしてキラリと光る、約束の指輪へと口付ける。

俺がお前から離れる…?
んなこと、あるわけがねぇだろ。
何があったって離れるつもりなんてない。

離れるかもしれないのはお前の方だろーが。
まあ、逃しはしないが。
ぜったいに。

この指輪に誓ったんだ。
お前は一生、俺のモノだ。


「おやすみ、奈々」








**********


「……うっ…」

目が覚めて、一番先に出た自分の声がコレだった。

「なっ……また……………」

朝起きると、またしても自分の身体が自由に動かなかった。

身体のあちこちが痛い。
力が入らない。
見える範囲の自分の肌には、彼が付けた所有物の痕がたくさんある。

原因はもう……


「おはよ、奈々。何だよ、あの程度で。お前また動けねぇの?」
そう言って鼻で笑ったのは、旦那様の慶一だった。

もおおおぉぉ……!!

また、この人は〜〜〜!!!

「テメェこんなに体力ねぇと、さすがに生きるのに支障あるんじゃねぇの?」

あ り ま せ ん !
そう思いながら、キッと彼を睨む。

けれど、睨んだところで彼に効果は全く無さそうだ。

「ぶっ続けで一週間くらいヤり続けてみてぇけど、お前がこんなんじゃ無理だな」
ため息交じり慶一が言う。

「……………」

…………。
うん。
聞かなかったことにしよう。

奈々は何も聞かなかった。

「なぁ。クソつまんねぇから、お前も体力つけろよ」
「………………」
「あと、もっと食え。食わないから体力も付かねぇんだろーが」
「……奈々、頑張って体力つけてるもん。それでも慶一の体力になんて追いつけるわけないでしょう」

奈々の旦那様は、どうしてこんなにも体力がありすぎるのだろうか。

「俺が離れるかもなんてクソくだらねぇこと考えてる暇があるなら、俺の愛を全て受け止められるように体力付けやがれ。言っとくけど、昨日の俺の消耗した体力なんて2%かそこらだからな」
「にっ……2%……!?100%中、2%ってこと!?」
「%なんだから百分率だ。そんなもん当たり前だろ」

しっ……信じられない……
2%……!?
残る98%の体力は使ってないってこと…!?

意味がわからない……


「余計なこと考える暇がるなら、俺の全てを受け止める覚悟しやがれ」
そんな声が聞こえた直後。
急に彼に組み敷かれた。

「いや、覚悟なんてどうでもいいか」
「え……?」
「余計なことを考える暇なんて、与えなきゃいい話だよな」
「え……?え?慶一……?」

まさか…
また…!?

「ってわけで、今から俺の愛を受け止めろよな。俺の奥さん」
「ちょっ、ちょっと待っ……んっ…!!」
言いかけた言葉は、彼の唇で塞がれたことでそれ以上言えなかった。

「待たない」
「でもっ…」
「お前は俺に持ち帰られたんだ。つまり、俺の好きなようにしてもいいって事だよな」
そう言って笑った彼が、優しく奈々の頬に手を触れた。

その後。
彼の言葉通りに不安が消し飛んでしまうほどに、受け止めきれないくらいの愛を与えられたのだった。




合コンごっこ…? END