「子どもを連れて外出するのが、こんなにも気をつかうことなのか」

──日本に一時帰国して、空港に降り立った瞬間にそう感じました。


日本は治安が良く、子どもが安全に過ごせる国として知られています。

けれど、いざ“子連れで”街に出てみると、想像以上に厳しい目線が向けられることに気づかされます。

無言の圧力と言うものに じわじわと心を締めつけられるような、そんな気持ちになりました。





公共の場で感じた「居場所のなさ」



一歳を過ぎたばかりの息子を連れて、フランスから日本へ一時帰国したときのこと。

12時間のフライトで、息子はほとんど眠れず、疲労のピークに達していました。


「やっと日本に着いた…」と安堵したのも束の間。

乗り継ぎの国内線に乗った瞬間、機内の空気がどこか重たく感じるのです。


平日の昼間ということもあり、乗客の多くはスーツ姿のビジネスマン。

ほぼ満席の機内に、私達は息をひそめるように座りました。

そして離陸直前、ついに息子の限界が訪れます。

ぐずり、泣き、どうしても止まらない。

CAさんたちがリンゴジュースを持ってきてくださったり、優しく声をかけてくださったりしてもダメでした。


その間、周囲からはため息や、露骨に顔をしかめる人の姿も。

「申し訳ない」という気持ちがいっぱいに広がり、肩身がどんどん狭くなっていくのを感じました。

こんなにも“迷惑をかけないように”と気を張らなければいけないのか──。





🇫🇷 フランスとの違い



フランスで暮らしていると、子どもが泣いたりぐずったりしても、周りの人が自然と寄り添ってくれる場面が多いように思います。

「どうしたの?」「眠いのかな?」と一緒に心配してくれる人や「頑張って!」と応援してくれる人も。

レストランではスタッフの方が子どもに話しかけてくれたり、見知らぬおばあさんが「まあ、かわいい子ね」と笑顔をくれたり。

子どもも社会の一部として受け入れられている」という安心感があります。


一方で日本では、「子どもは静かに」「人に迷惑をかけてはいけない」という暗黙の空気が流れている気がするのです。

“人に配慮する”という文化は日本の素晴らしさでもあります。

けれど、その思いやりのかたちが時に、息苦しく感じるものだなあと実感。





 「優しい社会」へ



子どもを育てるということは、未来を育てること。

“迷惑をかけない”という美徳を大切にしながらも、

“お互いさま”と言う認識がもう少しだけ持てたらなと

そして、少しでも安心して子育ての出来る国であって欲しいなと願わずにはいられない。