メガネと犬と聴診器

メガネと犬と聴診器

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恋って、どういうことだろう

恋人って、なんだっけ



10代の私は
「好きだよ」と言い合うのは1人のヒトに
キスをするのも1人のヒトだけ
それが恋で
そのヒトが恋人ってやつだと思ってた

20代の私は
新しく「好きだよ」と言い合うヒトを
見つけたら
昨日まで恋人ってやつだったヒトに
サヨナラして
新しく恋を深めていった
1人のヒトで収められないヤツがいるのも
知ったけど
それは私には関係ないコトだと思ってた

30代になった私は
恋とかいうモノがいよいよわからない






何気ない駅から家までの帰り道

楽しく女友達と遊んだ後の余韻に浸って
ニヤニヤLINE

改札を出て横断歩道

いつもと少し違うのは
何か起これば面白いなんて
おまじないのように
駅のトイレで落ちたメイクを直して
出ただけ


歩き出した私に
近づいてきたのは
スマートそうな
小綺麗な大人男子

「帰るの?ねぇ、ちょっと待ってよ」

「帰るよ。そこの喫煙所でタバコ吸ったら帰るの。じゃあね」


スマート男子は慣れたもんで
「じゃタバコ吸ってよ。見てるから」と
スルリと手を繋いで
歩き始める

「見てるって何ソレ」
気付けば、微笑んでしまってた


スマートで小綺麗で
だけど?
だから?

胡散臭い
なのに
少し強引で
少し紳士なフリもする


タバコを吸ったら帰ると言ってた私

どうやら家の方向が
ホントに一緒みたい

まさかの番地が2つ違うだけ


振り払うのも面倒だし

恋なのか何なのかわからない

こんな感じも悪くない



手を繋いで歩いてみると
寒い空気に刺激され
30代の私は
10代の私に
問いかける


昔は、手を繋いで歩くなんて大事件だったよね
昔は、手を繋いで歩くヒトに「もうこの人しかいない」って気持ちで歩き出してたよね


ぼんやり、10代の私に問いかけながら

何か話しかけられている言葉に
頷いたり、はにかんだり
テキトーに男が喜ぶ反応を自然としてしまってる

グッと手を引かれて30代の私に帰ると

そこはオシャレな部屋
木目の暖かい家具に
柔らかいオレンジの間接照明

自由な大人男子の一人暮らし

強めの酒をサッと綺麗なグラスで
出してくるのが
いつもの手業なのかしら

間接照明が
1つ消え…
2つ消え…

3つ目が消える頃には
キスをしていた

最後の灯りが消える頃

「さっき出会ったばかりだけど
彼女になってほしい、大事にするから」
「普段はナンパなんてしないけど
見つけた瞬間に
自分でも考える前に
声を掛けてしまってたんだよ」


まぁ、小綺麗にまとまった恋愛小説


また私は
10代の私と20代の私に問いかける


こういうドラマみたいなことに
憧れたりなんかしてたよね

でもね、30代のお姉さんになると
ドラマは
60分ものワンクール連続なのか
120分の単独スペシャルなのか
歴史に残る名作映画になるのか

なんとなくわかってしまうの

そしてね、
どれでもいいの


綺麗に話が展開し
綺麗に終わりが来ればいい

名残惜しくラストを飾るなんていいかもね





素肌で重なり
吐息を合わせる

そんな中でも


私は1人
昔の私に語りかけながら
このドラマをプロデュースする



スマートで
綺麗に
官能的で

最後は
憂いのある
退廃的な画にしよう

名作とは言われない
よくあるフランス映画のようにね




私の好きなフランス映画は
綺麗な朝焼けを迎えない

薄暗く
朝日がまだ地中の中で
くぐもっている空がいい


ピーンと張った寒い空気の中

服は綺麗に着なおして
背筋を伸ばして早足

ヒールの音を立て
タバコに火をつける



「彼女って何かね
大事にするって何のことか」

呟くように小さく吐き捨てる


もう最近じゃ
一度きりの関係に
虚しさや寂しさも感じない


恋って、どういうことだろう

恋人って、なんだっけ


歳を追うごとに
随分と難しくなる