オイシイものとは何か それは目薬です。 | アホいうやつがアホじゃ

アホいうやつがアホじゃ

“アホいうやつがアホじゃ”はバイウィークリーお笑いウェブジン。

1995年に始まった、あの《アホじゃ》
バックナンバーを公開しています。
《月別》《テーマ別》のリンクから遡ってみてみてください。


オイシイものとは何か
それは目薬です。


調布市 ベンジャミン



 一日コンピュータに向かってたせいで、カピカピに乾いて閉じなくなった目の疲れをまぎらわせるために、夕方になって杉野女子短大のほうからチャイムが聞こえると、天井から目薬をさします。


 天井を見上げて、左手でまぶたを開きながら、口も開けてると、たまごやきをフライパンで作るときのように、眼球全体に、熱く、トロミのある液体がうすくひろがります。


 さらにそのうえ、ああ、なんて声を出してしまっていると、そのトロミは温度を下げながら、だんだん奥の方までじわじわと手を伸ばしてくるので、わたしはもう、のどと鼻の境目の、ノドチンコの裏まで、目薬のなすがままです。


 するとすぐに、一仕事終わったり一段落ついたりして、タバコを吸ったときのように、少し甘味のある粘液が、咽喉にしみ出てきます。まだ食べたことのない、熱帯の果物トロピカルフルーツの濃いめの果汁みたいに、なんだかネトネトします。


 このトロンとした、なつかしいような甘味は、もしかするとメチル硫酸ネオスチグミンかも、なんて思ってると、つい、もう一滴、と量をすごしてしまいます。