前回の続きです。居飛車の▲35歩に対して、振り飛車が△45歩と反撃した局面について、検討していきます。

 

 

普通に銀が逃げては振り飛車が△35歩で一歩得。仕掛けたのは居飛車ですので、応手として考えられるのは▲45同銀と▲34歩です。

 

(1)▲45同銀

 

振り飛車は△35歩とすれ違いで歩を取ります。次に△44歩で銀が詰んでしまうので、居飛車は立ち止まれません。

 

▲35同角には、△77角成▲同桂△35飛という角をタダ捨てしつつ角を抜くという大技があります。以下、▲46歩△44歩(△33桂もある)▲26角△34歩が一例。飛車は質に入りますが、▲45銀が助からない形で、振り飛車優勢です。

 

 

▲35同角に代えて、▲34歩△42角▲35角△34銀▲同銀△同飛▲79角(▲57角なら△88銀)△54歩が一例で下図です。△52金+△32飛型のまま銀交換になると、割銀(▲41銀)が生じるので嫌なのですが、飛車が捌けての銀交換は、陣形に差があるため振り飛車歓迎の展開です。次に△64角が強烈です。

 

 

仮に△54歩に▲16歩と手待ちすれば、△64角▲46角(▲46歩には△45歩)△同角▲同歩△47歩▲同銀△37銀のように強く戦って、振り飛車優勢です。

 

 

 

(2)▲34歩

 

△同銀は必然ですが、居飛車の▲46銀が逃げる手と逃げない手があります。

 

逃げる場合、どこに逃げるかにもよりますが、△42角~△54歩~△64角 or △51角~△74歩~△73角 or △35銀(銀の進出+△34飛型の余地)など、振り飛車側に指したい手が沢山ある一方、居飛車側は仕掛けを跳ね返された形です。

 

実戦的にはまだまだですが、振り飛車が少し指しやすいでしょう。

 

よって、居飛車が妥協しないならば、逃げない手(▲35歩)を選んできます。これに△43銀では、▲45銀で居飛車がまずまず。やはり銀が5段目まで出てくると、振り飛車が捌きにくくなります。

 

 

振り飛車は押さえ込まれると一気に指し手が難しくなるので、実戦的にもいけません。よって、▲35歩には△46歩と踏み込みます。

 

△46歩▲34歩△42角以下、居飛車が▲46歩と手を戻すなら、△34飛と歩を取り、手順に浮き飛車の軽い形になります。こうなるなら、振り飛車が楽しいでしょう。いくらでも指したい手があります。▲46歩に代えて▲41銀にも△34飛で十分です。

 

 

△34飛を防ぐなら、▲45銀や▲35銀が考えられます。

 

▲45銀には、△47歩成▲同銀△44歩▲同銀△34飛もありますが、この場合は△54銀と合わせてしまうのがわかりやすいでしょうか。

 

▲同銀△同歩は手順に△64角が発生しますので、▲46歩と支えるくらいですが、以下、△45銀▲同歩△54歩と進めた時、45の歩が上ずっているため、次の△64角が受けにくい格好です。

 

 

▲35銀には、悠然と△54歩と突いて△53角と覗く手や△64角を作ります。▲46歩には、△53角が結構厳しく、▲38飛には△27銀▲37飛△28銀不成、▲45歩には△88銀(△64角も有力)▲同角△35角▲76歩△46角のような順で捌けます。

 

 

▲24歩△同歩▲同銀にも△34飛と走ります。▲23銀不成なら△24飛が会心の捌き。居飛車の引き角の利きが止まっているのがポイントです。

 

 

▲23銀成なら△27歩▲同飛△38銀か、△26歩▲同飛△15角を狙います。

 

ちなみに、この(2)▲34歩以下の変化で、地味に52の金がいい仕事をしているようで、▲43銀(△34飛を防ぎつつ飛車取り。もし△42角型ならば両取り)のもたれ指しを消しています。

 

三間飛車は41以上に43の地点がウイークポイントになると弱い面があります。例えば石田流(△34飛型)では、43に利きがないと▲43銀のような手で飛車が詰むケースまであります。

 

今回の課題局面は、三間飛車と△52金型の相性の良さがわかりやすく出ています(割銀が生じるのはたまに傷ですが)。△54歩よりも△52金左を優先するのは、実戦的に正解のようです。

 

という事で、居飛車(嬉野流)が▲46銀型から▲35歩と仕掛けるのも、少し難しかったです。

 

 

では、居飛車にもう少し力を溜めてもらいましょう。

 

ちなみに、振り飛車がここから美濃囲いを目指すのは、完成まで2手もかかるのがネックで、△82玉の瞬間に、△61金のひもが瞬間的に外れてしまいます。

 

もちろん美濃を目指すのもありですが、常に▲35歩があり得る現局面では、少し指しづらいのが実戦的な人情ではないでしょうか。また、△64角を準備する△54歩を優先したい気持ちもあります。

 

△52金左以下、▲37銀△54歩▲26銀と進めて下図です。居飛車は右銀も繰り出してきました。

 

 

この局面では、振り飛車がいきなり△45歩と突く手がありますが、まずは△94歩▲35歩の変化を見てみます。個人的には、カウンターを狙うこちらの展開の方が、△45歩のつっかけよりも振り飛車が指しやすい気がします。

 

 

ここで△45歩は、▲同銀と取られて無効です。先ほどは△35歩と取る手が次に△44歩で銀を詰ます手を見て有効でしたが、今は△35歩を▲同銀と取られてしまいます。また、△45歩に▲34歩△同銀▲35銀左とぶつけられても、銀交換後に割銀が生じるので気持ち悪いでしょう。

 

よって、この場合の▲35歩には△42角と引き、飛車の利きを3筋に通しつつ、△64角を作ります。居飛車は▲34歩と取るくらいですが、そこで△64角と出ます。

 

 

居飛車が放っておけば、△45歩や△34銀等から攻めが続きます。▲35銀と出ても△34銀▲同銀△同飛と捌けます。35ではなく34で清算する形にするのがコツのようです。

 

△64角と出た時点で、振り飛車がかなり指しやすくなっており、形勢は振り飛車よしです。

 

 

また、先ほども言及しましたが、▲35歩と仕掛けられる前であれば△45歩を突く手は今回もあるところです。銀が逃げるなら、△44銀と出たり、△55歩▲同歩△同角を狙って振り飛車十分です。

 

 

△45歩に▲同銀なら、△42角と引いて△33桂で銀を詰ます手を狙います。これを避けるなら▲35歩と突きますが、△64角と出て振り飛車が好調です。▲46角には△同角▲同歩△35歩で、次に△44歩で銀を詰ます手を狙います。

 

 

また、△42角に対して▲46歩と開き直って駒損を素直に受け入れる手が、意外と実戦的に難しいケースもあるので、見ておきましょう。

 

以下、△33桂▲37銀(後の△64角の先受け)△45桂▲同歩△47銀が好手のようです。▲48銀型を解除したため、47の地点がキズになっていました。逆に、この銀を打てないと、▲44桂で駒損を解消する筋を見られて嫌な感じです。

 

△47銀の狙いは、次に△56銀成で歩を取る事です。歩を取れれば、△35歩▲同歩△64角と出て、次に△36歩を狙えます。

 

 

△47銀に▲48桂の受けなら、△35歩▲同歩△64角▲24歩△同歩▲同飛△37角成▲同桂△36歩▲同桂△同銀不成▲21飛成△37銀不成が一例で、振り飛車が指せる分かれです。

 

また、△47銀にはやはり▲44桂が実戦的に嫌ですが、△同銀と食いちぎって攻めを続けます。

 

以下、▲同歩△64角▲43銀△45桂▲46銀△56銀成▲32銀不成△46成銀▲43歩成△62金▲58飛△47歩(次に△48銀)が一例で、振り飛車優勢です。陣形差があるので、多少の駒損は恐れず、強く戦う事がこの戦型では大事です。

 

 

さて、ここまで居玉での嬉野流の仕掛けを様々検討してきましたが、三間飛車で十分に対応できました。

 

どうやら、嬉野流側も玉を少し囲ってから仕掛けた方が良さそうです。

 

次回以降、玉を囲った形を検討していきます。