なんだかちょっとくすぐったいような
 気まずい空気、、


 「あ、そ、そうか
  この病室今日は海山さん
  貸し切りみたいですね、、」


  与田医師は
  なんとか話題を見つけたように
  切り出した。


  なるほど。
  そう言えば入れ替わり立ち替わり
  患者さんの出入りの激しい
  この病院にしては珍しく
  4床あるこの部屋のベッドは
  私ひとりだけだった。


  「あ。ホントですね。
   私いびきがひどいとかで
   離れた病室に移されたんですかね」


  「いや〜 それはなんとも…
   海山さんと一緒に寝たことないから
   分からないですね〜」

   と言って
   
   ハッ!!とする与田医師。

   

   「あ!いやいやいやいや、、、
    あのっ!
    なんかそんな変な意味じゃなくて!
    うわっ俺、何言ってんだか、、
    うわぁ〜 もう、すみませんっ!
    ホントもぉ〜〜」


    っと
    さっきよりも更に
    顔を真っ赤にして両手で顔を覆う
    与田医師。



    私は思わずケラケラ笑ってしまい


    「与田先生〜
     大丈夫ですよ〜
     もう、笑わせないでください
     手術あとに響くwww」


     とちょっとお腹を抑えながら
     更に笑ってしまっていた。



    「あ!!
     それはいけませんいけません!
     ごめんなさい、大丈夫でしたか?!」


    と、スッと冷静な医師の顔になり
    私のお腹に手を当てて
    
    「傷はもう塞がってますから
     出血などは大丈夫ですからね。
     もう少しの間
     ゆっくり過ごして行きましょう。」


     ちょっとホッとした顔で
     私の目を見てうんうんと
     頷く与田医師。


     「ありがとうございます、先生。
     なんだか先生と話してると
     ホント安心って言うか
     ほっとするって言うか。
     あ、先生何かSNSやってますか?
     あったらメッセージとか
     出来るといいんだけど…」

     と、ついつい友達のように
     軽いノリで聞いてしまっていた。


     「ん…、、
      んぁー…それ、ダメなんですよね
      患者さんとの個人的なやり取りは
      タブーなんです」


      と何とも申し訳なさそうに
      でもキッパリと断られた。

      「あー、ですよね〜
       すみません、なんか」



      「いえいえ、
      決まりなんでね〜
      うーん、ホント決まりなんで〜」
      と首を傾げながら言い



      「あ、でも、、」
      と与田医師が何か言いかけた時




      「失礼しまーす!
      こちらに骨折の患者様が
      入られますので〜
      隣の整形の病床がいっぱいなので
      こちらに用意する事になりました。」


      と言いながら
      看護師さんがチャッチャと
      準備をすすめていた。



    ん、、と下を向き
    やや気まずそうな表情の与田医師は

    「あ、じゃあ海山さん
     今日はもう大丈夫ですね、
     私は今日当直なので何かあったら        ナースステーションの方にいます。
     ではまた明日」

     と下げたままの右手を
     少し開いて
     じゃ と手でバイバイをしながら
     そそくさと病室を後にした。



     でも
     って何を言いかけたんだろうなぁ

    かなり気になりながら
    夜を迎えた。