ボットンにサンポール落としちゃった
脳内出血を起こして、記憶も曖昧になりながらどうしてこんなことを覚えているんだ、と不思議に思う。山梨の田舎にいくと、平屋家屋にボットン便所と呼ばれる汲み取り式のトイレがあった。そこには懐かしの緑色の容器サンポールというトイレ洗剤が置いてある。たいがい、ミカンが入っていた赤い網の中にトイレ用の芳香剤キンモクセイの香りも入れてトイレには下げてある。これらを全て正確に思い描けた方は間違いなく昭和の人間です。このセットが全て揃った古い家屋に迷惑な客が現れた。それは孫という名の私だ。一日一善を心がけたつもりが、迷惑をかけてしまった。トイレブラシで和式便所をこすっていたところ、ヒジがサンポールの容器にぶつかった。和式便器に大きな穴が開いているだけのボットン便所に吸い込まれるようにしてサンポールが落ちていく。「あ……」ブラックホールに飲み込まれたようボテっ「ぶわーっはっはっは!」もう私は笑いが止められなくなった。存在そのものが面白いサンポールが歴史的遺物のボットン便所に吸い込まれて頭の蓋だけが見えている。【まとめ買い】 サンポール トイレ洗剤 尿石除去 1000mL × 4個Amazon(アマゾン)1,019〜1,262円Amazon(アマゾン)で詳細を見る楽天市場で詳細を見る手を伸ばしてトイレブラシで取ろうとしても全く届かない。神奈川からわざわざやって来て汚いトイレでも掃除して行こうと思ったら、サンポール落として大笑い。当時一人暮らしのお爺さんはカンカンに怒った。汲み取り式のトイレに物を落とすと大変なことになるらしい。汲み取り用のバキュームカーを呼ばなくてはならないからだ。 ◇エルフ 8年式 特種車両 バキュームカー 糞尿車 車検30年3月まで 4.33L 積載2700kg 現役 兵庫より ◇ https://t.co/rnJjDveW96 pic.twitter.com/udD8OErua4— あつきちゃん (@at__k__08) 2017年11月21日「大変なことをしてくれたね!」お爺さんはカンカンだ。お気に入りのサンポールが落とされたのに犯人はトイレブラシを持って大笑いしているのだから。お爺さんは汲み取り業者にすぐ電話した。暇だったのか、バキュームカーが即座にやって来た。あの、ちょっと匂うカタツムリみたいな車だ。長くて太いホースで汚物を吸い取る。私は子供の頃からあのバキュームカーを近くでじっくり観察してみたかった。「おおお!」おじさんが太いホースをかつぐ。汲み取り用の穴にホースを差し込みものすごい糞尿の匂いが辺り一面に広がる。ゴオオオ…唸りをあげてホースが汲み取りを開始する。「汲み取りは頼むと高いんだからね!」と言ってお爺さんはカンカンだ。そして汚いし、危ないからと言って私は見えない所へ追いやられてしまった。これが現代だったらバッチリ動画撮影するところだったけれど…貴重なる瞬間を見逃して、落とされたサンポールは無事地上に帰還していた。「お爺さんがちゃんと洗って干してあるから」と言って日光消毒されている緑のサンポール。えええ、それまだ使うのかぁ…あの汚物に埋まっていたやつを?私も大人なんだからかかった費用を聞いて支払えば良かったのに笑いをこらえるのに必死で何もしなかった。だいたいサンポールが落ちたのは中身がほとんど入っていなかったから容器が軽くなっていたせいだ。普通、もう使用せずに捨ててもいい気がする…無責任な孫は歴史的遺物である旧式ボットン便所にサンポール容器を墜落させて日頃のうっぷんを晴らすがごとく大笑いをして大満足で帰って行った。私が来ると嬉しいことよりも迷惑なことが起こると、お爺さんは嫌がっているようにも見える。これから行こう、という時に来ないでくれ、と言われたことすらある。インフルエンザの流行期で「お爺さんはまだ長生きしたいから、お爺さんを殺さないでくれ」と頼まれた。何それ!?と憤慨して私はかわりに福島の出張に出かける父の車に便乗して、ついでに松島観光に行ったことがある。今の時代みたいにスマートフォンがあって気軽に動画や写真が撮れていたのならあの貴重なボットン事件を撮影しておけたのに。だとしても画的に汚すぎてどこにも公開できない。そもそもこの記事自体、公開しても良いのか判断に迷う。ただ、おそらく昔は何万人もボットン便所にサンポールを落として怒られた人間がいたのではないか、と推測する。その記憶のあるほんのわずかな人達に向けて、懐かしいサンポールの記憶とボットン便所を思い出して頂けたら幸いです。懐かしい…そう言えば、トイレの花子さんという怪談話がありますよね?水洗トイレから妖怪の手が伸びてくるという怪談ですが、アレ、水洗トイレよりボットン便所の方が怖くないですか?花子さんが汚物の中から手を伸ばしてきて、「助けて〜」と言ったら「お前、どこに入ってるんだ!今助けてやるからなー」と答えてつい手を掴んでしまう。そして自分も引っ張り込まれて落ちちゃったりして…ボットン!