自分は全然頑張れてない。
世間というやつは、金か結果らしいが、どちらも手にできていない。
金は無く、結果らしい結果など皆無。
何にも手にしていないし、何にもなし得ていない。
学歴、職歴、職場での出世、地位や役職や名誉や名声。
預貯金額、収入、資産、家柄や出身地。
コネクションや過去の実績、天賦の才や努力によるスキル。
今までくだらないと思っていた物も含まれているけど、
実際はこれらの総合的なもので人となり、果ては人格まで判断されかねない。
一人一人をみて判断なんてしちゃいない。
結局は、「無印」スタートではなくて「レッテル貼り」された状態からスタートする。
自分のように、何も成し遂げていないような薄っぺらい人間は、まず蹴落とされる。
嵌められた事はあった。
多分、馬鹿だから「嵌められる」過程に気づかなかった。
昔の事を聞かれ、あるがままに聞かれたから答えた。
その結果「過去の事は関係ない。今の会社で何も成し遂げていないのに話すとは傲慢だ」
ふざけんなって思った。
聞かれたから答えただけで、新米の自分には拒否権はなかった。
他にも、人格を否定されるような言葉や、容姿をなじるような事を言われ続けた。
結果として、二週間で解雇された。
不当解雇だった為、金は幾らか貰えたが割には合わなかった。
朝から深夜まで、残業代もなしで働いて、一週間やそこらでクソ高い商材で結果を出せと言われ、
終電前に帰ることをやる気が無いなどと言われ、
「君に向く仕事なんかあるの?」とか言われ、クビを切られた。

クソ高い商材…物は良いさ。
でも、必需品じゃない上に身分を偽って客に取り入って売ることに迷いがあった。
どう考えても、あれは営業じゃない。
ただの詐欺師だ。
ちなみに、ベンツは月に一台か二台売れれば、その営業マンはそこそこらしい。
その反面、2日に一台売る人もいる。
だから、能力が低いと言われても反論はしない。
求めている種のセンスはなかったかもしれないし。
ただ、身分を偽って訪問して数百万の商品をどや顔で売り込める人間にはなりたくない。


今の職場には感謝している。
人間扱いしてくれているから。
その代わり、自分は永遠に自分を取り戻せそうにない。
今後も、きっと誰にも話さないかもしれないけれど、
あの二週間が自分を決定的に変えてしまった気がする。

支離滅裂になってしまった。

ちょっと入院してました。

その間に書き溜めていたものを・・・


「末期の酒」


夜はいっそう深く、月の明かりはその男の深淵を照らした。

闇に乗じて、塙団右衛門は数十騎の寡兵で幕府方の陣を襲撃した。

一筋の風のように、精鋭たちは駆け抜けていった。


酒を飲んでは酒に飲まれ、朝になったら身に覚えのない拳の怪我が痛んでは目を覚ましていた。

それでも、腕っ節はピカイチで諸国を転々としては負け知らずだった。

さらにたちの悪いことに、昼の顔はまじめな男で夜の顔のことは人づてに聞く有様。

かの織田信長に直臣として仕えていたが、酒の失敗で出世はついにかなわなかった。


夜討ちのずっと前のこと。

「塙団右衛門と申します。筑前様のお役に立てるように・・・」

秀吉の前で深々と頭を下げ、仕官を願い出たが秀吉もうっすらと話は聞いていたのか、

「備中殿(原田直政。織田家の重臣)が戦死された後は苦労も多かろう。わしが守れなくなるような事だけは・・・」

団右衛門は、額を擦り付けて「酒は致しません」と誓った。

秀吉としても、戦死後に一族郎党の粛清を行っているとはいえかつての重臣で古参、しかも側室の兄でもある原田の親族を無下にすることもできずに召抱えた。

酒さえなければ、武術に優れて教養も人並みに備えている男であるので断る理由は見当たらなかったのである。


播磨への出征に団右衛門は一平卒としてだが、秀吉直属軍の一員として従軍した。

その遠征は、鉄血の播磨兵と複雑な土地柄も相まって苦戦の連続であった。

その中で団右衛門は、ついに酒を口にしてしまった。

団右衛門としても、粛清された家系であることを気に病んで出自を語らず、秀吉もまた「重圧から酒を飲まれては」と、団右衛門の素性をあえて口外しなかった。

それはお互いに選んだ最善の道であり、部下に厳しい信長へも武功を立てれば許されるという計算もあった。

勿論、団右衛門にはそれだけの能力があるであろうと確信していた。

播磨で召集した兵たちは当然、団右衛門の素性など知る由もなかった。

「尾張者は下戸か」と播磨の兵たちは挑発し、団右衛門は生真面目さゆえに「尾張者」の主君のために禁を犯した。


長陣になると、支給された米で酒を造るものが出てくる。

ほのかに香りが残る酒の入れ物に米を入れれば酒ができる。

正確には、「酒に似たようなもの」であるので、質は悪い。団右衛門は悪い酔いした。

目が据わり、暴言を吐き、からかう雑兵を相手に刀を抜いた。

雑兵同士の喧嘩はよくあることなので、足軽頭は両者の間に割って入った。

「おめえら。なにやっとるんだ?」

特に尾張兵と播州兵は折り合いが悪く、たびたび衝突していた。

「尾張者のあんたになにがわかる!」

普段は気のいい百姓だが、戦時下の緊張状態から弥助という雑兵が足軽頭に食って掛かった。

「じゃあ、貴様に尾張者のなにがわかっとるんか、言ってみい!」

別の尾張兵が応酬すると、団右衛門は刀を抜いた。

「団!刀傷沙汰はまずい!」

足軽頭は止めようとするが、酒の入った団右衛門に見境はない。

足軽頭を含め、数人を切りどっかと座り込み「おうおう!俺をどうにかできるやつはかかってこいやぁ!

と酒を飲み干した。

「なんちゅう有様じゃ!尾張者だ播州者だと聞こえてみれば!」

秀吉の直臣である仙石秀久である。

「そこの、とっととこい!」

団右衛門を呼ぶが、平然としてつばを吐きつけて拒否を示した。

「美濃侍がなんのようじゃ?あ?」

仙石はふるふると怒りに震え、目は血走っていた。

「そうじゃそうじゃ、お前、小寺(小寺官兵衛。後の黒田官兵衛)の若い衆の面倒見てるってな!小寺といえば、裏切り者じゃねえか。お前も裏でつながってるんじゃねえのか?」

堪えきれなくなった仙石の家臣がいきり立つ。

「貴様!この方は羽柴家中の出世頭・・・」

「仙石の旦那だろ?」

場がざわつく。

「団のやつ、終わったな」「殺されるぞ・・・」

陣幕をかき分け、人のよさそうな小男が入ってきた。

それに気づいた足軽たちがさらにざわめく。

斬られた足軽頭も、気力で立ち上がり「大将、めんぼくねぇ」と泣き始めた。

「まあ、まあ、まてや。こいつ扱う器量もねえ癖に抱え込んだ俺が悪いわ」

小男はそう言って、松明の明かりの元へひょこひょこと歩いていった。

「筑前様!」

団右衛門は血の気が引いた。

「団のやつを処断したとて何も変わるまいよ。播州兵の連中は同胞相手にしてんだ。百姓としたら、そいつはずいぶんとつらい事だぜ。団右衛門を謹慎とする。それだけで終いにしようや」

秀吉は少し寂しそうな面持ちでそれだけ言うと、また陣幕の外へ出た。

お久しぶりです。
関東では雪が降ったり大変だったようで、
ここ東海地方も昨日辺りから特に冷えています。

今年は本当にいろんな事がありました。
あの震災を期に、ありとあらゆる災害が起こり、
雪崩式に苦難災難が降りかかって来た気がします。

あの震災の時、東北在住の友人と音信不通になりました。
陸前高田や石巻みたいに情報が多いわけではなく、
役場のサーバーがダウンしていてあらゆる情報が入って来ませんでした。
断片的な、絶望的な、そんな情報だけが入って来ました。
十日程度の間でしたが、長く感じました。
震災当日は、再就職活動中でニュースは地震発生から数時間後に初めて見ました。
関東で揺れたとか、お台場で火災とか、そんな話は聞いていました。
嫁に電話したときにも、『電話くらいしておいたら』くらいしか言われなかった。
『津波といっても、家を流すことは稀』
自分は嫁にそうはなしてました。

家に帰ると、全てのチャンネルで緊急報道番組だったのが驚きでした。
関東にも多数友人や知人が居ましたが、死んではいないなと思う情報でした。
その代わり、東北の友人は半ば諦めていました。
米軍の空母やら、各国の様々な対応やら、
ニュージーランドもクライストチャーチの直後なのに人出してくれたり、
自衛隊だけじゃ足りないから退役自衛官を呼ぶとか、
そんな中で突然電話がかかって来たと。
その後、再就職先がとんでもないブラックで、法的にもブラックだったから退職しようとしたら解雇されたり。


続く