ガイア01

≪帰 還≫(青字は少年ペドリゥート)

遠くに水色をした地球があらわれた。早くも眼下に大きく海が開け、段々海岸線が迫ってきた。太陽は遠くの山脈の上に顔を出し、銀色をした雲の間から黄金色の光を放っていた。空は青く、海は輝き、山並みは遠くに連なっていた。

(あぁ、なんて地球は美しいんだろう~)

(アミ)
「そう言ったろう。地球の人はそれに気が付いていない。それどころか、平気で破壊している。そして知らないで、自分自身も同時にね。もし、愛が宇宙の基本法だってことを理解して、国境をなくし、ひとつの家族のように仲良くみな統一して、愛に基づいた新しい組織づくりをすれば、生き延びることができるんだ。」

(国をなくして?)

(アミ)
「国は≪県≫として変わり、進歩した宇宙のように、地球にたったひとつの世界政府をつくるんだ・・・君たちはみな、兄弟じゃなかったのかい? 」

(愛に基づいてすべてを組織するっていうのは、どういうこと?)

地球人

(アミ)
「どこの国もそうだけど、家族を組織するのと同じように、つまり、みな協力して働いて利益を公正に分配するんだよ。もし5人だったら、5つのリンゴをひとつずつそれぞれが受け取る。きわめて明快なことだよ。愛がないと上に立った人はエゴをむき出しにして自分のエゴイズムを正当化するために、物事を複雑にからませる。でも愛があれば、全てがみな透明で、とてもはっきりしている。」

風景03

温泉場が見えてきた。アミは円盤を海岸の砂浜数メートルの高さに停止させた。誰にも円盤は見えない。操縦室の後ろにある出口まで一緒に行って、お互いに強く抱き合った。とても別れるのが辛かった。アミも同じだった。目がくらむような黄色い光がついて、僕を包んだ。

(アミ)
「愛が幸福に向かう唯一の道だってこと、忘れないようにね。」

足が砂浜の上についた。上は何も見えない。でも、アミも僕を見ていることはわかっていた。ひょっとすると、アミは僕と同じように、目にたくさんの涙を浮かべていたかも・・。とてもすぐには家へ戻る気にはなれなかった。アミのメッセージをちゃんと理解したことを彼に伝えるために、小枝をとって砂浜に翼のはえたハートを描いた。すると、すぐに何かが走って、ハートの周りに円を描いた。アミの声を聞いた。

(アミ)
「それが地球だよ。ペドゥリート」

村の方に出かけてみた。広場に出ると、昨夜の警官がふたり、僕の方に向かって歩いてくる。全身が凍りついたようになった。しかし、彼らは全く何もなかったかのように僕の横を通り過ぎていった。突然、ふたりは空の方を見上げた。周りにいた人たちも同じように空を見上げている。ずっと上空に飛行物体が光を赤や青や黄色に変えながら揺れている。警官は無線で警察署に連絡している。僕はなんだかとっても嬉しくなってきた。

アミがスクリーンを通して、僕を見ていることははっきりしていた。元気に手を振って挨拶を送った。ステッキをついた年配の紳士が、空飛ぶ円盤が引き起こした騒動に、迷惑そうにしながらやってきた。

雲

「空飛ぶ円盤だ!!UFOだ!!」・・子供たちは喜んで叫んでいる。年配の紳士は上空を見上げた後で、不愉快そうな顔をして言った。

「なんて無知な迷信深い人たちなんだ!気球か、ヘリコプターか、そうでなけりゃ飛行機に決まっている。UFOだと?全くバカバカしい。愚かな人たちだ。」

・・と言って、尊大なステッキを振りながら、もうこの朝の空に現れた素晴らしい光景には目もやらずに、通りの方へ立ち去っていった。

アミの声が耳元に聞こえた。「さよなら、ペドゥリート」「さよなら、アミ!」興奮して返事をした。≪UFO≫は消えた。

翌日の新聞には、この朝の事件を何も報道しなかった。なぜなら、近頃はこのような集団幻覚は、もう少しも珍しいことではなく、まったくニュースのネタにもならなくなってきたからだ。 ただただ毎日、≪無知な迷信深い人≫の数だけが、静かに増え続けている・・。

温泉場の海岸の、ちょうどアミと知り合ったあの岩の上に、円に囲まれた翼のはえたハートが刻まれている。誰もどうやって刻んだのかは知らないが、まるで、それを刻むために特別に鋳造した岩のように立っている。誰でもそこまで登れば見ることができるけど、その高い岩を登るのは、決して簡単なことではない。特に大人にとっては尚更だ。なぜなら、子どもはもっと敏捷だし、そして何よりずっと軽いから・・。

「アミ 小さな宇宙人:エンリオ・バリオス 著」(徳間書店)より

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