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ロックラックの船着場。
広大な砂漠の中心に位置し、砂上船や飛空船交易の中継地としているこの街には、毎日数多くの船が出入りする。
ある船は砂漠を横断するために水や食料を補給しに訪れている。
またある船は狩りを終えたハンターたちを狩り場から回収してきたようだ。
戻る船がある一方、港を出る船もある。
補給物資を積み込んだ交易船が帆をいっぱいに広げて出て行った。
その後には狩り場へと赴くハンターたちを乗せている。
喧騒と活気…怒声と笑い声が響く。この船着場は交易の街でもある、ロックラックの中枢であり、顔でもあるのだ。
「うあーっと…やっと着いたぜ~っ!」
そんな声を上げながら、先ほど船着場に接岸したばかりの砂上船から一人のハンターが降りてきた。
若い。
年の頃は十代の半ばといったところか。ハンターの身に着ける防具としてはもっとも一般的とも言われている【ハンターシリーズ】を装備している。見る者が見れば、彼が駆け出しのハンターだということが分かっただろう。
彼――ジャンボ村出身のハンター、ダニエルは狭い船倉に押し込められてすっかり凝り固まった全身の筋肉を背伸びして伸ばしながら、岸壁に降り立った。
一週間に渡る長い船旅だった。この街に向かうという交易船に乗せてもらえたのは良かった。だが、客室などあるはずもないこの船での生活は、ハンターとして日々広大な自然の中を駆け回ってきたダニエルにとっては苦痛以外のなにものでもない。
狭い船底近くの倉庫に、運んできた商品の詰まった大タルといっしょに押し込まれてきたのだ。さらに、金をなるべく使わないようにと食費を切り詰めた結果、食事は毎日3食とも穀物や豆を粉状にして焼き固めた携帯食料や船に乗る前に自分で作っていた干し肉、水ですごしてきた。
(まったく…我ながらよく耐えてきたもんだぜ…)
そんなことを考えた途端…
ぐ~~~っ
…と、ダニエルの腹の虫が鳴き出した。
「ちっ…腹が減ったな…」
思わず口に出してしまった。
(まあ、無事にロックラックに着いたことだし、久々に美味いものでも…)
そうダニエルが思った、その時だ。
「ハンターさん、ロックラックへようこそなんだニャー!」
ダニエルの足元からそんな声がした。『おやっ?』と彼が目線を下に下ろすと、そこには赤い帽子と赤い服に身を包んだ猫型のモンスター、『アイルー』が立っていた。
『ロックラックガイド』
ロックラックの街の要所に立ち、道を尋ねる人々に街の案内を行うことを仕事とする、ロックラック観光協会に所属するアイルーたちの名だ。
そのガイドアイルーがダニエルに向かってパタパタと手を振っている。
「ハンターさんはこの街は初めてかニャ? お腹が減っているならコレを見てみるニャー!」
そう言うと、ガイドアイルーは懐から取り出した小さな冊子をダニエルに渡すと、他の旅人に向かってトコトコと駆け寄っていった。
「ついこないだまで、オレもここに居たんだけどな…」
ちょっと苦笑いしながら受け取った小冊子を見てみた。
「『ロックラックグルメガイド』…か。どれどれ…」
ちょうど腹も減っていたこともあり、ダニエルは中に書かれた内容に目を通す。獣皮紙にロックラックの人気店の情報が、それぞれの店のおすすめメニューのイラストと共に書かれていた。
説明文を書いた人物はよほぼ文章力があったのだろう。ただ冊子を読んでいるだけで、ダニエルの食欲は急激に高まっていく。
(すきっ腹にはたまんねぇなぁ…)
そう思いながら読み進めていったダニエルの手があるページで止まった。
「おっ? 『ロックラックサンド』か。こいつは美味そうだな。ふむふむ…『さくら亭』か。おいっアイルー!…っていねえし」
先ほどのガイドアイルーは、ダニエルが冊子を読んでいるうちにどこかに行ってしまったらしい。彼は『ちぇっ』と軽く舌を打った。
(案内を頼もうと思ってたのによぉ…まあ、いいか)
これからの予定があるわけではない。久々に来た街の観光がてら…そう思いながら、ダニエルは街中へと歩いていった。
◆ ◆ ◆
所変わって、ここは宿屋通りに隣接するロックラックの市場。
布製のテントが林立する、この街でも特に活気に溢れる場所だ。
「おじさん、こんにちはー!」
そんなにぎやかな市場の中でも良く通る声で、さくら亭の看板娘、パティは肉を売る露天商に元気に挨拶をしていた。
「おっ、パティちゃんは今日も元気だねぇ」
肉屋の主人は、そんな彼女の様子にニコニコしながら声を返した。
「もっちろん! あたしから元気を取ったら何も残りませんからね!」
冗談めかしてパティが言うと、肉屋の主人も『ははっ、そりゃあ違いない』と笑って返してきた。
「今日は店のお使いかい? いつものヤツでいいのかな?」
主人が尋ねてくる。『いつものヤツ』とは、さくら亭の名物料理『ロックラックサンド』に使う草食獣『アプトノス』のもも肉だ。
「はいっ。じゃあ、『いつもの』を前回より気持ち多めでおねがいします!」
「ほうっ! ロックラックサンド、大好評のようだね。おっしゃ! じゃあ、今、切り分けるからそこで座って待っててくんな!」
「は~いっ」
パティは売り物の肉の並んだカウンターの前に置かれた木製のイスに座ると、市場の方へ視線を流した。
市場は様々な人が訪れる。
大きな荷物を背負った行商人や巨大な武器を持ったハンターが、彼女の前を通り過ぎていく。
そんな人々をぼんやりと眺めながら肉の切り分けを待つパティの耳に、向かいの露店から店の主人と客と思われる若い女性の会話が聞こえてきた。
その女性は、どうやらハンターらしい。昆虫系のモンスターである『ブナハブラ』の羽や甲殻などを使って造られる『ブナハシリーズ』という、一見、青い…まるで貴族が夜会に着ていくドレスのようにも見える特徴的な装備を身に着けている。さらに、その背中には鞘に収められた太刀が背負われていた。
まだハンターとしての経験が浅いパティにはわからなかったのだが、そのハンターが背負っていたその太刀は、雄火竜『リオレウス』と雌火竜『リオレイア』の雌雄二種の火竜の素材を用いて鍛える『飛竜刀【双火】』というものだ。
その装備から察するに、なかなかの腕前。だが、パティの興味がその女性ハンターに向いたのは、彼女と店の主人のやり取りだ。
「おじさん、おじさん! もうちょっとまけてくれないかな~?」
店頭に並んだ野菜のひとつを指差して、その女性ハンター――ユナが主人に値引きを要求する。
「えっ? あーダメダメ! そいつは仕入れ値が高いんだ。今の値段だって利益無しのカツカツなんだよ」
主人は顔をしかめると、手を横に振って拒否。だが、ユナは諦めない。
「えーっ! けどね、その砲丸レタス、すっごい美味しそうなんだよね~…あと10ゼニー、安くならないかしら?」
「10ゼニーっ?? ダメダメ! そんなに値引きしたら商売にならないよ!」
「だめぇっ? うーん…あっ! じゃあさ、おじさん! このレアオニオン1袋と一緒で300ゼニーでどう? まとめて買うから安くして!」
『おねがいっ!』と主人に向かって手を合わせるユナに、
「300?…う、うーんっ…こまったなぁ…」
…と主人の心が揺らいだ。
すると、ユナが主人の方から顔をちょっと背ける。パティのいる位置から、その端正な横顔が見えた。その横顔の、大きな瞳が『(-_☆)キラーンッ』と光ったような気がした。
「そうでしょ!? ねっ、ねっ! 想像してみてよおっちゃん!」
「お、おっちゃん!?」
ユナの勢いが増した。その勢いに主人は圧倒されつつある。
「頭の中に描いてみてよ! まず、そのレアオニオンの皮をパリパリパリパリィッ!って剥いてさっ!」
そう言いながら、ユナは店頭のレアオニオンひっつかむと身振りを交えて話し始めた。
「それから、そいつをうすーくトントントントントントーンッ!って刻んでね…焙ったフライパンに猛牛バターを落として…トロトッローッ!って溶かしたところにレアオニオンをドッサーッ!って落として、先に厚めに切っておいたリュウノテールをイチッニッサーンッ!って入れてね…」
ごくりっ
ユナの口上に主人が唾を飲み込むのがわかった。
「火が通ってきたら、ブレスワインをバシャッバシャッ!ってかけて火をボワッ!ってつけてフランベしてさ!」
「お、おうっ…それから??」
主人が身を乗り出さんばかりの勢いで、ユナに先を促した。
「これからがすごいのよ! ポッケ村から取り寄せたとっときのお塩『粉雪』をパッパッパパッ!って振って…」
「ふ、ふむふむ…塩を振って…?」
「土鍋でツヤツヤ…炊き立ての銀シャリ草をドンドンドドーンッ!って山盛りによそったお椀にジュワーッ!って溢れた肉汁とレアオニオンの旨味エキスが渾然一体に混ざったソースごとお肉とレアオニオンをドバドバドバーッ!ってのっけて完成っ!! そんな、おいっしー料理を作るには、おっちゃんトコの砲丸レタスとレアオニオンが必要なわけよっ!」
『わかる! おっちゃん!!』と言ったユナに、店の主人は、『うんうん…』と何度も頷くと、
「わかったぜ、ねーちゃん! 300ゼニーでいいぜ! ほれっ、砲丸レタスとレアオニオンだ! ついでにこのジャンゴーネギも持っていきな!!」
…と、ユナから買い物袋をひったくるように奪うと、野菜を詰め始めた。
「おっちゃん、ありがとーっ! おいっしー料理を作ってみせるよっ!」
ぱんぱんに膨らんだ買い物袋を主人から受け取ると、ユナが代金を支払う。『じゃ、またね!』と主人に手を振り、こちら側に振り返ったユナ。
パティにはその笑顔が、『してやったりっ』という悪戯っ子のように感じられた。
「ほう…ユナのヤツ、今日はロイのトコでお買い物か」
買い物を終えて立ち去るユナの後姿を見送っていたパティに、肉屋の主人が苦笑いしながら声をかける。
「おじさん、あのハンターさんを知っているの?」
切り分け終わり、薄手の獣皮に包まれたアプトノスのもも肉を受け取りながらパティが訊くと、
「ああ。ちょっと前に西シェレイドから来たユナって名前のハンターだ。料理がものすごく上手いらしくってな。狩りの合間に活きのいい食材を探しに来てる。で、来るたびああやって店の者を盛り上げて食材をせしめるわけだ」
…と、主人が説明してくれた。だが、説明をする彼の表情は複雑だ。ひょっとしたら、彼もユナの『被害』に遭っているのではないだろうか?
「へーっ…面白いわね。ユナさん…か」
そう呟き、パティはユナの名前と顔を心の中に留めた。だが、そこで彼女は気がついた。
「砲丸レタス…さっきの料理のレシピに…出てこなかったような気が…」
「気にするな」
小首をかしげたパティに主人が諭すように言った。
「細かいことを気にしたら負けだ」
◆ ◆ ◆
「ここが…?」
「ああ。ここが俺の活動拠点、『ロックラック』さ」
ダニエルが離れてからしばらく経った頃、新たなハンターが船から降り立った。
一人はこの街でも何度か見たことがある顔…この街を拠点として長期滞在しているハンターだった。
武器はボウガン。彩鳥『ペッコ』の素材で作られた『トロペクルガン』を背負っている。防具は先ほどのユナが身につけていたブナハシリーズのガンナー用だ。
名はカイルという。
シェレイド地方の北。フラヒヤ山脈付近の出身の彼は今、このロックラックに腰を落ち着けて狩りを行っていた。
「おっ、カイルじゃねぇか! 狩りの帰りか?」
突然、彼に声がかけられる。相手もハンターだ。片手剣を持った若いハンターと、あご髭を生やした中年の大剣を背負ったハンターの二人組だった。二人は傍らに係留された砂上船の上からカイルに声をかけてきた。
「あっれーっ、久しぶりだなぁ。ああ、さっき戻ってきたばっかりさ。アンタたちはこれから出発かぃ?」
そう言うと、カイルは二人に手を振った。二人も手を振り返した。
「おう! ちょっと砂原までな。今度、また酒でも飲もうぜ!」
「ああ、そうだな。楽しみにしてるよ。じゃぁなっ!」
一通りの会話が終わり、カイルは連れのハンターのところに戻った。
「悪い悪い! こないだ一緒に狩りに行った連中でな」
戻りながら、出向していく砂上船に手を振るカイル。船上で先ほどの二人も手を振り返していた。
「…相変わらずだな」
カイルの連れが口を開いた。その表情はまったく動いていない。無表情。その上、口調もまた抑揚のない静かで落ち着いた声だった。
「相変わらず? そうかぁ?」
連れの言葉に、カイルはちょっと意外そうに答えた。
「ああ。相変わらずだ」
そう再度口にした連れはそのまま口を閉ざした。
「…そういうハシャ。おまえも相変わらずだな」
カイルは連れ…大剣使い、ハシャに笑いかけた。
「…?」
その言葉に、ハシャは無言のまま、首をかしげた。
「その無愛想なトコといい、最後まで言い切らないところといい、さ」
「…そうか」
カイルの指摘にも、ハシャはそう言って頷くだけだった。
「まったく…」
思わず苦笑いするカイルだった。
「まあいいさ。さて、まだ夕食までは時間があるな…よしっ、ちょっと街の中を見て回るか。これからこの街で活動しようってんだろ? 広い街だからな。ちょうどいい機会だから、俺が案内してやるよ!」
狩りからの帰りの船でたまたま一緒になったこの二人。修行の旅の途中のハシャを、カイルがロックラックへ誘ったのだ。
「…」
ハシャはしばし沈黙して…
「…わかった」
…とだけ答えた。
その様子に『やれやれ』とカイルは苦笑いを浮かべた。
「よし! そうと決まれば…」
そう言うと、カイルはハシャを押すかのようにして、街の中心部へ向かっていくのだった。
◆ ◆ ◆
市場で買い物を終えたパティ。次に彼女が足を運んだのは大衆酒場。
ロックラックハンターズギルドが運営する酒場で、酒や食事を提供すると同時に、ギルドのカウンターとしての機能も備えている、ハンターたちの拠点だ。
パティがここを訪れたのは彼女の本業…ハンターとしての活動の一環だ。
彼女には二つの顔がある。
ひとつは、宿屋通りの宿屋兼酒場、『さくら亭』の看板娘としての顔。彼女のはつらつとした笑顔を見るために店を訪れる者も多いと聞く。
そしてもうひとつは、依頼を受けてモンスターを狩る、ハンターとしての顔だ。
まだハンターとしての活動を始めて日が浅い彼女であったが、彼女を指導するある先輩ハンターから、『ハンターたる者、ギルドには可能な限り顔を出しておくこと』とのアドバイス受けて以来、さくら亭の仕事の合間を縫って、こうしてギルドへ来てはクエストボードにどんな依頼が貼り出されているかは見ることにしていた。
「あれっ…あれは?」
クエストボードに貼り出された依頼書を確認していたパティ。その目にカウンターを挟んでなにやら話し込む、二人のギルド受付嬢の姿が映った。
―― PBM(2)へ続く
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
アギ「やあ! とりあえず、【モンハンPBM】第1回のリプレイ、第1弾をお送りしよう!(;°皿°)クワッ」
アリス「応募を締め切ってから1週間ね。それでもまだ全キャラが登場していないんじゃない?(´0ノ`*)ドウイウコトカシラネーッ」
「ふぬうっ( ̄Д ̄;;ヌゥ…いや、これでリプレイ作成するのも大変なんだぞ! 難しいんだぞ!(;°皿°)クワッ」
「ふーん( ・(ェ)・)ヘーッホーッフーンッ」
「ううっ…まあ、ともあれ、リプレイ(2)は現在作成中なので、今回、登場していないキャラクターのプレーヤーさん。もうちょい待ってくださると助かるぞ!(;°皿°)クワッ」
…と、いうわけでして、第1弾ですw
正直、一気にUPできるかな~と思ったりも、
しなかった
…わけなんですがw 若い頃に個人PBMを運営していたときは、参加受付から戦闘処理、リプレイ作成、冊子編集、印刷、発送まで2ヶ月以上かかってましたので;;
まあ、個人運営のものですので、気長にお待ちを;;
では、またノシ
ロックラックの船着場。
広大な砂漠の中心に位置し、砂上船や飛空船交易の中継地としているこの街には、毎日数多くの船が出入りする。
ある船は砂漠を横断するために水や食料を補給しに訪れている。
またある船は狩りを終えたハンターたちを狩り場から回収してきたようだ。
戻る船がある一方、港を出る船もある。
補給物資を積み込んだ交易船が帆をいっぱいに広げて出て行った。
その後には狩り場へと赴くハンターたちを乗せている。
喧騒と活気…怒声と笑い声が響く。この船着場は交易の街でもある、ロックラックの中枢であり、顔でもあるのだ。
「うあーっと…やっと着いたぜ~っ!」
そんな声を上げながら、先ほど船着場に接岸したばかりの砂上船から一人のハンターが降りてきた。
若い。
年の頃は十代の半ばといったところか。ハンターの身に着ける防具としてはもっとも一般的とも言われている【ハンターシリーズ】を装備している。見る者が見れば、彼が駆け出しのハンターだということが分かっただろう。
彼――ジャンボ村出身のハンター、ダニエルは狭い船倉に押し込められてすっかり凝り固まった全身の筋肉を背伸びして伸ばしながら、岸壁に降り立った。
一週間に渡る長い船旅だった。この街に向かうという交易船に乗せてもらえたのは良かった。だが、客室などあるはずもないこの船での生活は、ハンターとして日々広大な自然の中を駆け回ってきたダニエルにとっては苦痛以外のなにものでもない。
狭い船底近くの倉庫に、運んできた商品の詰まった大タルといっしょに押し込まれてきたのだ。さらに、金をなるべく使わないようにと食費を切り詰めた結果、食事は毎日3食とも穀物や豆を粉状にして焼き固めた携帯食料や船に乗る前に自分で作っていた干し肉、水ですごしてきた。
(まったく…我ながらよく耐えてきたもんだぜ…)
そんなことを考えた途端…
ぐ~~~っ
…と、ダニエルの腹の虫が鳴き出した。
「ちっ…腹が減ったな…」
思わず口に出してしまった。
(まあ、無事にロックラックに着いたことだし、久々に美味いものでも…)
そうダニエルが思った、その時だ。
「ハンターさん、ロックラックへようこそなんだニャー!」
ダニエルの足元からそんな声がした。『おやっ?』と彼が目線を下に下ろすと、そこには赤い帽子と赤い服に身を包んだ猫型のモンスター、『アイルー』が立っていた。
『ロックラックガイド』
ロックラックの街の要所に立ち、道を尋ねる人々に街の案内を行うことを仕事とする、ロックラック観光協会に所属するアイルーたちの名だ。
そのガイドアイルーがダニエルに向かってパタパタと手を振っている。
「ハンターさんはこの街は初めてかニャ? お腹が減っているならコレを見てみるニャー!」
そう言うと、ガイドアイルーは懐から取り出した小さな冊子をダニエルに渡すと、他の旅人に向かってトコトコと駆け寄っていった。
「ついこないだまで、オレもここに居たんだけどな…」
ちょっと苦笑いしながら受け取った小冊子を見てみた。
「『ロックラックグルメガイド』…か。どれどれ…」
ちょうど腹も減っていたこともあり、ダニエルは中に書かれた内容に目を通す。獣皮紙にロックラックの人気店の情報が、それぞれの店のおすすめメニューのイラストと共に書かれていた。
説明文を書いた人物はよほぼ文章力があったのだろう。ただ冊子を読んでいるだけで、ダニエルの食欲は急激に高まっていく。
(すきっ腹にはたまんねぇなぁ…)
そう思いながら読み進めていったダニエルの手があるページで止まった。
「おっ? 『ロックラックサンド』か。こいつは美味そうだな。ふむふむ…『さくら亭』か。おいっアイルー!…っていねえし」
先ほどのガイドアイルーは、ダニエルが冊子を読んでいるうちにどこかに行ってしまったらしい。彼は『ちぇっ』と軽く舌を打った。
(案内を頼もうと思ってたのによぉ…まあ、いいか)
これからの予定があるわけではない。久々に来た街の観光がてら…そう思いながら、ダニエルは街中へと歩いていった。
◆ ◆ ◆
所変わって、ここは宿屋通りに隣接するロックラックの市場。
布製のテントが林立する、この街でも特に活気に溢れる場所だ。
「おじさん、こんにちはー!」
そんなにぎやかな市場の中でも良く通る声で、さくら亭の看板娘、パティは肉を売る露天商に元気に挨拶をしていた。
「おっ、パティちゃんは今日も元気だねぇ」
肉屋の主人は、そんな彼女の様子にニコニコしながら声を返した。
「もっちろん! あたしから元気を取ったら何も残りませんからね!」
冗談めかしてパティが言うと、肉屋の主人も『ははっ、そりゃあ違いない』と笑って返してきた。
「今日は店のお使いかい? いつものヤツでいいのかな?」
主人が尋ねてくる。『いつものヤツ』とは、さくら亭の名物料理『ロックラックサンド』に使う草食獣『アプトノス』のもも肉だ。
「はいっ。じゃあ、『いつもの』を前回より気持ち多めでおねがいします!」
「ほうっ! ロックラックサンド、大好評のようだね。おっしゃ! じゃあ、今、切り分けるからそこで座って待っててくんな!」
「は~いっ」
パティは売り物の肉の並んだカウンターの前に置かれた木製のイスに座ると、市場の方へ視線を流した。
市場は様々な人が訪れる。
大きな荷物を背負った行商人や巨大な武器を持ったハンターが、彼女の前を通り過ぎていく。
そんな人々をぼんやりと眺めながら肉の切り分けを待つパティの耳に、向かいの露店から店の主人と客と思われる若い女性の会話が聞こえてきた。
その女性は、どうやらハンターらしい。昆虫系のモンスターである『ブナハブラ』の羽や甲殻などを使って造られる『ブナハシリーズ』という、一見、青い…まるで貴族が夜会に着ていくドレスのようにも見える特徴的な装備を身に着けている。さらに、その背中には鞘に収められた太刀が背負われていた。
まだハンターとしての経験が浅いパティにはわからなかったのだが、そのハンターが背負っていたその太刀は、雄火竜『リオレウス』と雌火竜『リオレイア』の雌雄二種の火竜の素材を用いて鍛える『飛竜刀【双火】』というものだ。
その装備から察するに、なかなかの腕前。だが、パティの興味がその女性ハンターに向いたのは、彼女と店の主人のやり取りだ。
「おじさん、おじさん! もうちょっとまけてくれないかな~?」
店頭に並んだ野菜のひとつを指差して、その女性ハンター――ユナが主人に値引きを要求する。
「えっ? あーダメダメ! そいつは仕入れ値が高いんだ。今の値段だって利益無しのカツカツなんだよ」
主人は顔をしかめると、手を横に振って拒否。だが、ユナは諦めない。
「えーっ! けどね、その砲丸レタス、すっごい美味しそうなんだよね~…あと10ゼニー、安くならないかしら?」
「10ゼニーっ?? ダメダメ! そんなに値引きしたら商売にならないよ!」
「だめぇっ? うーん…あっ! じゃあさ、おじさん! このレアオニオン1袋と一緒で300ゼニーでどう? まとめて買うから安くして!」
『おねがいっ!』と主人に向かって手を合わせるユナに、
「300?…う、うーんっ…こまったなぁ…」
…と主人の心が揺らいだ。
すると、ユナが主人の方から顔をちょっと背ける。パティのいる位置から、その端正な横顔が見えた。その横顔の、大きな瞳が『(-_☆)キラーンッ』と光ったような気がした。
「そうでしょ!? ねっ、ねっ! 想像してみてよおっちゃん!」
「お、おっちゃん!?」
ユナの勢いが増した。その勢いに主人は圧倒されつつある。
「頭の中に描いてみてよ! まず、そのレアオニオンの皮をパリパリパリパリィッ!って剥いてさっ!」
そう言いながら、ユナは店頭のレアオニオンひっつかむと身振りを交えて話し始めた。
「それから、そいつをうすーくトントントントントントーンッ!って刻んでね…焙ったフライパンに猛牛バターを落として…トロトッローッ!って溶かしたところにレアオニオンをドッサーッ!って落として、先に厚めに切っておいたリュウノテールをイチッニッサーンッ!って入れてね…」
ごくりっ
ユナの口上に主人が唾を飲み込むのがわかった。
「火が通ってきたら、ブレスワインをバシャッバシャッ!ってかけて火をボワッ!ってつけてフランベしてさ!」
「お、おうっ…それから??」
主人が身を乗り出さんばかりの勢いで、ユナに先を促した。
「これからがすごいのよ! ポッケ村から取り寄せたとっときのお塩『粉雪』をパッパッパパッ!って振って…」
「ふ、ふむふむ…塩を振って…?」
「土鍋でツヤツヤ…炊き立ての銀シャリ草をドンドンドドーンッ!って山盛りによそったお椀にジュワーッ!って溢れた肉汁とレアオニオンの旨味エキスが渾然一体に混ざったソースごとお肉とレアオニオンをドバドバドバーッ!ってのっけて完成っ!! そんな、おいっしー料理を作るには、おっちゃんトコの砲丸レタスとレアオニオンが必要なわけよっ!」
『わかる! おっちゃん!!』と言ったユナに、店の主人は、『うんうん…』と何度も頷くと、
「わかったぜ、ねーちゃん! 300ゼニーでいいぜ! ほれっ、砲丸レタスとレアオニオンだ! ついでにこのジャンゴーネギも持っていきな!!」
…と、ユナから買い物袋をひったくるように奪うと、野菜を詰め始めた。
「おっちゃん、ありがとーっ! おいっしー料理を作ってみせるよっ!」
ぱんぱんに膨らんだ買い物袋を主人から受け取ると、ユナが代金を支払う。『じゃ、またね!』と主人に手を振り、こちら側に振り返ったユナ。
パティにはその笑顔が、『してやったりっ』という悪戯っ子のように感じられた。
「ほう…ユナのヤツ、今日はロイのトコでお買い物か」
買い物を終えて立ち去るユナの後姿を見送っていたパティに、肉屋の主人が苦笑いしながら声をかける。
「おじさん、あのハンターさんを知っているの?」
切り分け終わり、薄手の獣皮に包まれたアプトノスのもも肉を受け取りながらパティが訊くと、
「ああ。ちょっと前に西シェレイドから来たユナって名前のハンターだ。料理がものすごく上手いらしくってな。狩りの合間に活きのいい食材を探しに来てる。で、来るたびああやって店の者を盛り上げて食材をせしめるわけだ」
…と、主人が説明してくれた。だが、説明をする彼の表情は複雑だ。ひょっとしたら、彼もユナの『被害』に遭っているのではないだろうか?
「へーっ…面白いわね。ユナさん…か」
そう呟き、パティはユナの名前と顔を心の中に留めた。だが、そこで彼女は気がついた。
「砲丸レタス…さっきの料理のレシピに…出てこなかったような気が…」
「気にするな」
小首をかしげたパティに主人が諭すように言った。
「細かいことを気にしたら負けだ」
◆ ◆ ◆
「ここが…?」
「ああ。ここが俺の活動拠点、『ロックラック』さ」
ダニエルが離れてからしばらく経った頃、新たなハンターが船から降り立った。
一人はこの街でも何度か見たことがある顔…この街を拠点として長期滞在しているハンターだった。
武器はボウガン。彩鳥『ペッコ』の素材で作られた『トロペクルガン』を背負っている。防具は先ほどのユナが身につけていたブナハシリーズのガンナー用だ。
名はカイルという。
シェレイド地方の北。フラヒヤ山脈付近の出身の彼は今、このロックラックに腰を落ち着けて狩りを行っていた。
「おっ、カイルじゃねぇか! 狩りの帰りか?」
突然、彼に声がかけられる。相手もハンターだ。片手剣を持った若いハンターと、あご髭を生やした中年の大剣を背負ったハンターの二人組だった。二人は傍らに係留された砂上船の上からカイルに声をかけてきた。
「あっれーっ、久しぶりだなぁ。ああ、さっき戻ってきたばっかりさ。アンタたちはこれから出発かぃ?」
そう言うと、カイルは二人に手を振った。二人も手を振り返した。
「おう! ちょっと砂原までな。今度、また酒でも飲もうぜ!」
「ああ、そうだな。楽しみにしてるよ。じゃぁなっ!」
一通りの会話が終わり、カイルは連れのハンターのところに戻った。
「悪い悪い! こないだ一緒に狩りに行った連中でな」
戻りながら、出向していく砂上船に手を振るカイル。船上で先ほどの二人も手を振り返していた。
「…相変わらずだな」
カイルの連れが口を開いた。その表情はまったく動いていない。無表情。その上、口調もまた抑揚のない静かで落ち着いた声だった。
「相変わらず? そうかぁ?」
連れの言葉に、カイルはちょっと意外そうに答えた。
「ああ。相変わらずだ」
そう再度口にした連れはそのまま口を閉ざした。
「…そういうハシャ。おまえも相変わらずだな」
カイルは連れ…大剣使い、ハシャに笑いかけた。
「…?」
その言葉に、ハシャは無言のまま、首をかしげた。
「その無愛想なトコといい、最後まで言い切らないところといい、さ」
「…そうか」
カイルの指摘にも、ハシャはそう言って頷くだけだった。
「まったく…」
思わず苦笑いするカイルだった。
「まあいいさ。さて、まだ夕食までは時間があるな…よしっ、ちょっと街の中を見て回るか。これからこの街で活動しようってんだろ? 広い街だからな。ちょうどいい機会だから、俺が案内してやるよ!」
狩りからの帰りの船でたまたま一緒になったこの二人。修行の旅の途中のハシャを、カイルがロックラックへ誘ったのだ。
「…」
ハシャはしばし沈黙して…
「…わかった」
…とだけ答えた。
その様子に『やれやれ』とカイルは苦笑いを浮かべた。
「よし! そうと決まれば…」
そう言うと、カイルはハシャを押すかのようにして、街の中心部へ向かっていくのだった。
◆ ◆ ◆
市場で買い物を終えたパティ。次に彼女が足を運んだのは大衆酒場。
ロックラックハンターズギルドが運営する酒場で、酒や食事を提供すると同時に、ギルドのカウンターとしての機能も備えている、ハンターたちの拠点だ。
パティがここを訪れたのは彼女の本業…ハンターとしての活動の一環だ。
彼女には二つの顔がある。
ひとつは、宿屋通りの宿屋兼酒場、『さくら亭』の看板娘としての顔。彼女のはつらつとした笑顔を見るために店を訪れる者も多いと聞く。
そしてもうひとつは、依頼を受けてモンスターを狩る、ハンターとしての顔だ。
まだハンターとしての活動を始めて日が浅い彼女であったが、彼女を指導するある先輩ハンターから、『ハンターたる者、ギルドには可能な限り顔を出しておくこと』とのアドバイス受けて以来、さくら亭の仕事の合間を縫って、こうしてギルドへ来てはクエストボードにどんな依頼が貼り出されているかは見ることにしていた。
「あれっ…あれは?」
クエストボードに貼り出された依頼書を確認していたパティ。その目にカウンターを挟んでなにやら話し込む、二人のギルド受付嬢の姿が映った。
―― PBM(2)へ続く
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アギ「やあ! とりあえず、【モンハンPBM】第1回のリプレイ、第1弾をお送りしよう!(;°皿°)クワッ」
アリス「応募を締め切ってから1週間ね。それでもまだ全キャラが登場していないんじゃない?(´0ノ`*)ドウイウコトカシラネーッ」
「ふぬうっ( ̄Д ̄;;ヌゥ…いや、これでリプレイ作成するのも大変なんだぞ! 難しいんだぞ!(;°皿°)クワッ」
「ふーん( ・(ェ)・)ヘーッホーッフーンッ」
「ううっ…まあ、ともあれ、リプレイ(2)は現在作成中なので、今回、登場していないキャラクターのプレーヤーさん。もうちょい待ってくださると助かるぞ!(;°皿°)クワッ」…と、いうわけでして、第1弾ですw
正直、一気にUPできるかな~と思ったりも、
しなかった
…わけなんですがw 若い頃に個人PBMを運営していたときは、参加受付から戦闘処理、リプレイ作成、冊子編集、印刷、発送まで2ヶ月以上かかってましたので;;
まあ、個人運営のものですので、気長にお待ちを;;
では、またノシ
「ノ」