■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
思えば、その日のアリスさんの様子はいつもと違っていたのだ。
『どんなふうに?』と訊かれると、具体的にこうとは言い難いのだけど、とにかくいつもと違っていた。
その日の夕方。私たち【 ODD NUMBER HUNTERS 】の面々は…っと、説明しなければならないかな。【 オッドナンバー ハンターズ 】。これはししょーとよく狩りに行く狩り仲間のグループについた名前だ。
元々はムイムイさんという女性ハンターさんの要請に応じて、その窮地に駆けつけたハンターさんたちを呼んだ名称だそうだ。でも、今ではこのロックラックの街で活動する一部の…私やししょー、その狩り仲間さんたちを表すようになっていた。
その【オッドナンバーハンターズ】の人たちは、いつものようにメンバーの一人、パティの働くさくら亭に集まり夕食をとっていた。けして広くないさくら亭のホールは、私たちのグループと、夕食を食べに来た一般のお客さんで賑わっている。すると…
「はい、アギ! これあげるっ」
喧騒の中でも通る声。アリスさんだ。ししょーの古くからの狩り仲間。そして、『敵』でもあるという自称『謎の女ハンター』のアリスさんは、ししょーのテーブルの前に立つと、腰につけたポーチから小さな皮袋を取り出して、ししょーの前に置いた。
前に見たことがある。
(あれって、たしか…)
同じ光景を以前、私は見ていた。あの皮袋の中身はおそらく『命の粉』。振り撒くと、周りにいる人の傷を癒してくれる広域回復アイテム、『生命の粉塵』を作るための調合素材だ。
『サポート系ハンマー使い』
自らをそう呼ぶししょー。狩りの際、ししょーは生命の粉塵と共に、この命の粉と『竜の爪』を狩り場に持ち込み、現地で調合しながら仲間の回復支援にあたるのだそうだ。そのため、ししょーの命の粉の消費量は尋常ではなく、いつも品薄に困っていた。
そんなししょーに、アリスさんやタンクさんが命の粉を分けてあげる…その光景はよく見られる。
おそらく、今回もその一環なのだろうが…
「おお、いつもすまんな、アリスよ!」
ししょーがアリスさんから命の粉の入った皮袋を受けとった。
「はいっ、じゃあもう10回分!」
「おっ…おおおっ!?」
ししょーの戸惑いの声が響いた。再びアリスさんが皮袋を取り出し、さっきの皮袋を受け取ったししょーの掌の上に置いていた。
「ん? どうしたの、アギ?」
ししょーの上げた声に、アリスさんがにんまりと笑いながら訊いた。
「どうしたもこうしたも…調合20回分もくれるとは。ずいぶん、太っ腹ではないか、アリスよ?」
「そうぉ? なんてことはないわよ~」
そう軽く答えるアリスさん。でも、ししょーの驚き方から見て、生命の粉という物は、けしてたやすく手に入るものではない…そう私には感じられた。きっと…
「何かあるんじゃないか? アリスよ。また無理難題を吹っかけようとしているのではなかろうな…この袋を懐に入れた途端…」
警戒感を露にして言ったししょー。その言葉に続けて、
「ひっひっひっ、受け取ったなぁぁぁあ!!」
まるで小さい子供に読んで聞かせてあげる絵本の物語に出てくる悪い魔女のようないやらしい笑い方で…見た人が思わず『邪悪』と言いそうになってしまうような笑い方で。アリスさんは『にまぁっ』と笑いかけた。
「こ、こえええええっっ!?」
「うわっ! 黒いよ! 今日のアリスさん、黒いよっ!!」
「なんまんだぶなんまんだぶ…」
「逃げてっ! かいちょー逃げてぇぇぇぇっ!!」
その笑いにあてられた、ししょーをはじめとする数人のハンターさんたちがガクガクブルブルと体を振るわせる。
「まあまあ、そう警戒しないで」
そんな皆さんの様子に、アリスさんは『満足げに』笑うと、周りのみんなを安心させるように手を振った。そして、腰のポーチから何かの入った袋を取り出すと、ししょーに向けて放り投げる。
「おっ!?」
袋は放物線を描いて飛び、やがてししょーの腕の中に納まった。
「ああ、また受け取ってしもうた…うお!? 爪まで!…牙も!?」
受け取ってしまった袋の中を確認したししょーの口から、歓声とも悲鳴ともつかない声が漏れた。
「あー…『竜の爪』に『竜の牙』かぁ~」
ししょーの開けた袋の中を横から覗き込みながら、タンクさんが呟く。 飛竜系のモンスターから採れる爪や牙も、生命の粉塵を調合するための素材のひとつだ。
「…こりゃあ後が怖いな」
そんなことを呟きながら、タンクさんはししょーの肩を叩いてあげていた。そのタンクさんの気遣いに、ししょーはとても複雑な表情で腕の中の、アリスさんからの贈り物の数々を眺めていました。
おかしい。
私は『ひっひっひっ』と、あの魔女の笑みを浮かべるアリスさんを見ながら思いました。
前にも言ったとおり、ししょーにアリスさんが物を分けてあげるのは以前からよく見られたこと。でも、一度に…ここまで大量に素材を渡したことはなかったはず。
アリスさんは惜しげもなく、ししょーに素材を渡しています。
(何かある…)
いくらししょーとアリスさんが仲がいいとはいえ…今回のことはその仲の良さを考えても気前が良すぎだ。
(やっぱり何かある!)
満面の笑みを浮かべるアリスさんを観察しながら、私はそう思ったのでした。
(続く)
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

アリス「…なんだか、すごい描かれ様ねぇ、アギぃ?…( ̄▽+ ̄*)フッフッフッ三( ̄□ ̄;)アレッツ!?三(・_・ 三・_・)あれっ? アギ??」

「えーっと、ですね…逃げました」

「へー、ほーっ、ふーんっ…随分じゃないの。じゃあ、次でもっとガッツリとイヂてやる
から、まあ、いいわ。次を見てなさいよ、アギい(o*゜∇゜)o~♪」
…と、勢いのみでw とりあえず、今日はこれにて~~~~