携帯が鳴った。
画面を見ると、懐かしい友達からだった。

久しぶり、と始まり軽く世間話をした後、報告があるとのフリ。
内容を聞くまでもなく、結婚の報告。

祝福の気持ちと共に焦りも生まれる25歳の春。

これで今年入籍が決まった友人は3人めだ。

私はこのまま今の彼氏とゴールインするのだろうか。

焦ってするものではないが、相手は誰であれ、早く済ませたいというのが本音。


以前、友達と食事をした際、好きな人が複数人いた場合、どうすれば一番好きな相手がわかるか、という話題になった。

ある心理テストでは、森の中を歩いている自分を想像し、川に架かる橋の向こうで手を振っている相手は誰でしょう、その誰かとはあなたが一番会いたい相手です、という回答だった。(これは回答が会いたいの一点であるから、一番好きな相手と結び付くとは限らないが)
私が提案し、友達の強い賛同を得た方法もあった。
それは、旅行会社のパンフレットを見て、誰と行きたいか、誰が頭に浮かんだか、というもの。

その場にいた全員が納得してくれた。


今、いや、3年前からこの2つの質問の答えは決まっていた。

ずっと付き合っている彼氏だ。

なのに浮気を繰り返す自分は本当に何なのだろう。

結婚という一つのゴール、一つの汚れない愛の結晶とは程遠い今の自分。

今日はそんな自己嫌悪に陥る日だった。
仕事が終わった後、同僚とカラオケに行った。

なかなか盛り上がり、気付けば延長もしていて、なんだかんだでカラオケが終わったのは朝方だった。

家に帰るのが面倒で、帰り道にあるヒロくんちに行くことにした。

ヒロくんは今週は夜勤だから、夜中に仕事が終わり、朝から昼過ぎまで寝るという私とジャストな生活リズム。

最近携帯が壊れていたらしく、その間連絡がとれなかったのでヒロくんに会ったのは久しぶりだった。


お風呂を借り、寝巻きも借りる。

濡れた髪でぼーっとしていたらヒロくんがドライヤーで髪を乾かしてくれた。

至れり尽くせりだ。

化粧を落とした私を見て、すっぴんのがいいよと言ってくれて、素直に嬉しかった。


布団に入ったのは7時くらいだった。

ヒロくんに彼氏がいることを伝えたのは最近だ。

連絡や会う回数が減ったのはそのせいかもしれない。

それでもこうして甘えさせてくれる。

以前は彼氏がいないことにしてヒロくんとよくあそんでいたから、体の関係もある。

ヒロくんとは体の相性が抜群にいい。

だから同じ布団に入ったからには期待してしまう。

でもヒロくんは手を出して来ない。

彼氏がいることがストッパーになっているのだろう、以前ならとっくに行為に及んでいるのに。

ムラムラしながら、でも自分からいくのはちょっと嫌なので、完全に待っている状態だった。


気付けば寝ていた。

目が覚めたのはアラームをかけた1時間くらい前だった。

ヒロくんも目が覚めていて、私は寝ぼけているのもあり、ヒロくんに抱き着いた。

ヒロくんとの距離が近い。

どちらからともなくキスをする。

そこからは早かった。

お互い体の相性がいいことを認識していて、ヒロくんも私とヤりたかったと言っていた。

相性やばいよね、だって。

一番相性がいいヒロくんとのえっち。

でも、なんか違う。

どこか冷めてる自分がいる。

なんだろう、この感じ?

なんだか急に彼氏に申し訳ない気持ちになった。

同時に恋しくなった。

でも、こうして浮気を繰り返す自分がいて、浮気する程度のつき合いなら彼氏は要らないのでは、とも思った。


そんな思いを抱えながらヒロくんに借りた寝巻きを洗濯機に入れ、ヒロくんちを後にした。


ハヤトとはmixiのような、ある意味出会い系のサイトを通じて知り合った。

同じ年、似たような職種であることからメールや電話のやりとりで仲が良くなり、実際に会う運びとなった。

何回も写メの交換はしていたし、電話で話もしていたから会って気まずくなることもなく、楽しい時間を過ごした。

ホテルの一室で。


ハヤトには年下の可愛らしい彼女がいる。

私には付き合いの長い同棲中の彼氏がいる。

お互い恋人がいたから、すんなりこうなったんだろうな、と帰り道の車の中で思った。

ハヤトとの時間は楽しかったし、体の相性もいい。

好きといえば好きだ。

でも、そこまで。

また会いたいとは思うけど、会わなきゃいられないって程ではない。

会ってからの連絡は今まで通りだったけど、頻繁にハヤトが会いたいを連呼するようになった。

仕事中や寝る前にやりとりするメールだから、ほとんど一行か二行の短文メール。

その内容はなんであれ、やりとりすることが楽しいから、とりあえず話題がなくなったら使う『会いたい』の文字だと解釈していた。

簡単に言うと、お世辞のようなものだと思っていた。

だから私も適当に合わせて返信していた。


しかし、違った。

仕事中にふと見たハヤトからのメール。

内容は短いものだが、本当に驚いた。

『彼女と別れた(笑)』

おいおい、まじかよ!

(笑)ってついてますけども...

ちょっとおもしろいから後でじっくり話を聞いてやろう。

心配よりも好奇心に掻き立てられ、時間をみつけてハヤトに電話した。

顔はニヤニヤしながら、私はざっくり聞いた。

なんで別れたの、フったの、フられたの、なんでなんで?!

ハヤトは冗談が通じる相手だし、お互いなじりあえる仲だから気は遣わない。

遠慮せずに質問した。

返ってきた答えは

『誰かさんが俺の心に入ってきちゃったから』。

...は?

それって...

?!

バカでもわかる。

その意味が。

でも信じられなかったし、信じたくない気持ちもあった。

ハヤトの冗談だと思って何回も、嘘でしょ、とか、またまた~と言ってみた。

でも本当の話らしかった。

私はもちろんハヤトにもそうだが、ハヤトがフった女の子にも申し訳ない気持ちになった。

自分が一組のカップルを別れさせる原因になるなんて。

本当にとんでもないビッチだ!


でも破局した二人の仲を私がどうこうできるわけじゃないし。

ハヤトはそれ以上私に何も言わないし求めてもこないし。

とりあえずこのままハヤトとの付き合いは平行線を辿らせようと思ったのだった。