午前0時10分。
一時停車していた緑の大型トラックが動き出す。
裸電球が小さく揺れる2畳ほどの空間には、オフィスレディ姿の神谷まゆの他に、AV女優の安城アンナと、スキンヘッドの新島建介がいて、座り込んで話をしていたが、こんな時間にバス停から乗ってきた男がいた。
妙齢のその男は、彫りの深い顔立ちで七三分け。ワイシャツにスラックスを着用している。
男はSM調教のプロ、
板尾創路だった。
新島建介はその男を見るなり、
「板尾、この女、安城アンナを縛ってくれ」
と、言った。
安城アンナは、まばたきをし、不満そうな顔で新島を見ている。
板尾はアンナにゆっくり近づくと、ワイシャツのポケットから赤い糸を取り出して、
「両手を出しなさい」
と、言った。
しぶしぶ従うアンナ。
板尾は、アンナの両手をくっつけて左右の親指を立てさせると、その親指が離れないように赤い糸で縛った。
不思議にも、2本の親指を縛られただけで両腕が左右に開かない。
新島建介は、アクの強いつらがまえで無精髭を撫でると、
「おいアンナ、人はなぁ、哀しいほどおのれの為に生きるモンや。
お前、ロシアンルーレットやる時、死んだら死んだ時とおもて引き金ひいたやろ。