TVを見ても、街を歩いても、オリンピック一色となった日曜日。当然ながら賭けに勝った恵太君が意気揚々やってきて、ほら、昼飯、どうする?とせっつくので、台湾料理店、とボクが不愛想に応えると、それあり?と恵太君が言うので、なんでダメなの?と問いただすと、いや、別にどこでもいいけど、負けた誠意が感じられないね、というので、敗者と言うのはこんなもんでしょ、ともっとふてくされたところ、やっぱ賭ける前にちゃんと決めときゃよかった、とかなんとか、いつまでもぶつぶつ言っているので、じゃあいいよ、賭け分は今度にして、とりあえず台湾料理店で五目そば食べようよ、と妥協することにした。そのうち、どうせユウちゃんのママの店に行くことになるんだから、恵太君を連れて行けばいいやと思ったのだ。
で、東京オリンピックとは縁の薄そうな台湾料理店では案の定、東京オリンピック招致祝いの割引とかおまけとかもなく、それはそれで寂しいね、と言ったところ、なんだよ、あれだけ便乗商法がうるさい、って文句垂れてたくせに、と恵太君にたしなめられた。
そういえば、やくみつる、って君みたいに東京オリンピックに反対だったんだね、と恵太君が言うので、ちょっと待って、ボクはオリンピックに絶対反対なんて言ってないよ、そんな非国民扱いするなよ、と言い訳したが、いや、反対者ゼロじゃおもしろくないから、これから先も反対の立場を貫くべきだ、やくみつるみたいに仕事干されても貫くべきだ、と恵太君が言うので、え?やくみつる、って干されんの?と聞くと、当たり前だよ、これから7年間は安倍政権と猪瀬都知事に反対する人間は社会から抹殺される、と脅すので、やっぱり長いものには巻かれろ?と恵太君の顔色を確認したら、さも、そういうこと、と言わんばかりだった。
で、もっと東京オリンピックバンザイムードかと思いきや、ここが東京のはずれで臨海部じゃないせいか、ポスターとか張り紙くらいのもんで、街そのものがやけに盛り上がっているという感じでもなく、ボクと恵太君はいつものTSUTAYAに立ち寄って麻生久美子出演作品を物色したが、今日の気分にピンとくるものがないね、ということになり、散々あれこれ探した挙句、『善き人のためのソナタ』と『リトルダンサー』を借りて部屋に戻った。
どっちもハリウッド作品じゃないので地味だけどなかなか映画らしい映画だったが、日曜の夕暮れ時で、日本全体が一種のお祭りムードの中、ひっそりと見るような映画ではなかったかもしれない。途中で、恵太君は誰かからの誘いが入り、これから新宿まで出かけるけど一緒に来る?と言われたが、そういう気分でもないのでボクはひとりでDVDを見続けた。オリンピックが決まっても、ボクにはいつもの日曜日以外のなにものでもなかった。
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つづく