ユウちゃんが木箱に入った白桃を持ってきた。貰い物の貰い物であまりものらしいが、高級果実は意外にそんな運命なのかも、と、ちょっとざまあみろ、な気分だった。
少しだけ赤みのさした白桃は、妙にお尻っぽかった。桃から生まれた桃太郎、というが、あのお話は、この白桃のようなお尻から生まれた子供、という印象を語ったものなんじゃないか、などと考えたりした。
実を言うと、ボクは小さいころに食べた桃の印象が悪くて、自分からは好んで食べたことがなく、多分、ここ数十年来、桃なんて食べてないと思う。が、さすがに木箱に包まれる優等生だけあって、ちょっと唸り声が出る甘さ、いや香り、いや、舌触りだった。桃ってこんな味なの?と聞くと、食べたことないの?と言われて、ないよ、と答えたら、そうなんだ、ってちょっと笑われた。おかしいか??
そういえば、涼ちゃんが桃とびわが大好きで、一緒に房総半島に行くと必ずびわ狩りしようと言っていたことを思い出した。桃もびわも、ボクはどっちもうまいと思ったことが一度もなく、なんでそんなおばんくさい果物が好きなの?って聞いたら、それは本当においしいのを食べたことがないからだ、と涼ちゃんに見下されたことがあったが、彼女の言う、本当においしいの、とは、こういう味のことだったのかと思った。
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で、PCを注文して、配送先をユウちゃんの部屋にして、領収証名義をユウちゃんのママのお店にして、ようやく肩の荷が下りた感じがした。たったそれだけのことだが、ここ十日ばかり、ボクはずいぶんこのことが、気がかりと言うか、負担と言うか、重荷と言うか、そういう感じのものだったことに気付く。それは、ボクがあまり人から何かを頼まれる生活を送っていないからでもあるだろうし、相手がユウちゃんだということもあるだろう。いずれにしても、ちょっと疲れてちょっとホッとした。
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で、『Woman』でも観る?と聞くと、観たよ、というので、なぜか、どこで?と聞いてしまい、友達んちとか実家とか、と言うのを聞き、ふーん、そうなんだ、と反応してしまった。
じゃあ、何見る?と言っていたところに、恵太君からメールで、どの麻生久美子持っていく?と聞かれたので、ちょっと人が来てるけど、と返信したところで、察しのいいユウちゃんが帰ると言い出し、恵太君という最初の会社の同僚だけど、と説明したが、そんなことはどうっちでもいいらしく、ボクと同じで、あまり人と会いたがらないユウちゃんは、眠くなったから帰る、というわかりやすい言い訳をして帰って行った。
なので恵太君に、『おと・な・り』でも借りてきてよ、とメールしたところ、了解と返信があったものの、しばらくすると、それないよ、とメールが届き、仕方ないから、なんでもいいや、と返信すると、小一時間ほどして、『ゴールデンスランバー』を掲げた恵太君がやってきた。あれ?麻生久美子は?と聞くと、ちょっとお休み、ということだった。そうね、たまにはね、ということで納得した。
リビングに入るなり、匂いが甘い!と恵太君が言うので、残りの白桃をテーブルに全部並べて、好きなだけどうぞ、と差し出したら、ほー、いい眺めだね、というので、やっぱり恵太君も相変わらずのおしりフェチなのだろう。
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『ゴールデンスランバー』は、どういうことが伝えたいのか、まるでボクにはわからなかった。でも、それなりに最後までちゃんと見た。それはきっと堺雅人と竹内結子の魅力なんだろう。ふたりとも、どんなドラマでも映画でも、出てると不思議にちゃんと見続けてしまっている。見る者の耳目を引き寄せてしまう役者、つまり、そういうのをスターというんだろう。
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DVDを見終ると、恵太君も今日は眠いと言って帰って行った。夏休み明けの一週間で、きっとみんな疲れてるんだろう。
ボクも仕事はやめにして、横になった。眠れぬまま、ユウちゃんと知り合ってからの長い時間のことを考えた。考えてみると、恵太君と知り合ってからも、ほぼ同じような時間が経過している。そしてこんなに近くに住んでいるのに、恵太君とユウちゃんに接点がないことが異常に不思議に思われた。でも、この界隈に住んでいる、数十万人の人々とは、何十年たっても何ら接点ができないのだから、別に不思議でも何でもないのか、と思うと、妙な気分になった。
そんなことを考えていると眠れやしないので、起き上がってビールを飲み、なんとなく『Woman』を、今日は第8話、7話、6話と遡って見た・・・ようやく少し眠くなったみたい・・・
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つづく