僕がネットワークビジネスを始めた理由は単純で、高収入を得たいからだった。
なんとなく高校を中退して、僕はホストとして働いてきた。小学生の頃からずっと一緒だったイケメンの親友と話し合った結果、学校に通う意義を感じられなくなったので働くことにしたのだ。
その当時成績は学校内でトップクラスだったこともあり両親や教師からは反対されたが、僕の決意は固かったので折れることはなかった。
それ以来5年が経過したが、今のところ僕はホストになる決断を後悔したことはなかった。
ただ、収入が少ないのは困り物で、いつも仕事帰りに焼鳥屋で酒を飲みながら同じ店で働く親友と愚痴を言い合っていた。ホストの業界は出世できれば高年収だが出世するまでは月収20万円ほどで耐えなければならない。
出世できる人数は少なく下積み期間も長い。
そんな時に僕らをネットワークビジネスに誘ってくれたのが、僕たちとほぼ同時期に高校を中退して色々な商売を転々としていた友人で、彼の浮き沈みは激しかったが最近はネットワークビジネスで大儲けしている、とのことだった。
そういうわけで、僕と親友の2人もネットワークビジネスに参入することになった。やはり持つべきものは友人だ。
僕のホストとしての戦略は、ギターで下手な曲を演奏してミュージシャン志望者を自称したり適当な小説を書いて小説家志望者を自称したり下手な絵を描いてイラストレーター志望者を自称したりする「夢追い人」戦略だ。
今回僕が参入したネットワークビジネスは、食器類や洗剤を中心とした家電製品や消耗品、さらに食料品などを売るものだったので、この「夢追い人」戦略を応用すればホスト常連客をネットワークビジネスに取り込むことも容易であるように思えた。
ネットワークビジネスの本質は詐欺ではなく囲い込みだ。顧客を人間関係で囲い込み長期的・安定的な取引を実現することで利益を出すのが主なモデルであり、ポンジーゲーム的な刹那的な要素は薄い。
ネットワークビジネスの売れ行きは好調で、僕の年収は早速1000万円を超えたが、この辺りでホスト活動に時間を割くのが無駄に思えたので、ホストを辞めこれまでの常連客を連れて独立した。
労働者のままでいると搾取されるばかりなので独立するのが賢明だ。