今日は音楽ついでに、

今、ん太郎の自宅に収まっているこのピアノくんのstory。

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最初の乳がんが見つかって休職し
抗がん剤FECなどを受けていた夏。


無謀にもピアノを購入しました。



小学一年生から高校三年までやっていたピアノ。
その後はたまに遊びで弾く程度だったケド。


親にも秘密で孤独に部屋にこもって闘病していたとき
寂しいし空しいし、何かで気を紛らわしたいし
っていうことでどうしようもなく買いたくなって
某有名ピアノ会社でニコニコ



ところが、ん太郎の前住居は廊下が狭くて
ドアを外したりいろいろ手間をかけて下さったにもかかわらず

搬入中に、角を曲がり切れず(ちょっと前方不注意もあり)、
トイレのドアノブにぶつかって
ピアノの蓋に小さな傷がついてしまったのです


新品ピアノの搬入の日に傷叫び


立ち会っていた調律師さんは、これはヒドイ!
木目のピアノなので、色が合わなくなったりしないよう、
蓋だけでなく本体ごと全体交換を要求するように、と
勧めてくださいました。


わたしもせっかくの高い買い物なのでと思い
そういう話で決着。
その型の新しいピアノが届くまでは傷ついたそのピアノを使用し、
届いたら交換、ということに。


傷は、この程度。斜めから見ればわかるケド、くらいです。
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その日から夏中、体調の悪くない日は、日がな一日弾いていました。
その傷ついたピアノ、すごく音の響きが上品で、深かったのです。
ちゃんと音がよく響くのに、ケンケンしていない。
グランドピアノでもないのに、タッチの違いによく反応してくれる
……もう、これは恋恋の矢に近い感情です。
一日6時間~8時間、
食事の時間以外はずっと弾いていました。


ショパンのバラード1番、
好きだけど難しくて弾けなかった曲も
練習量がハンパないだけに、次第に形になってきた頃


新しいピアノが運ばれてきました。



調律のときから
音を聴いて
この子は違う、私の子じゃないむっ
って、シックリこない気持ちでしたが
あの夏中弾いた上品なピアノは、その新品ピアノと引き換えに
秋の声が聞かれる…そう、ちょうど今頃の季節に、
どこかへ持ち去られてしまいました。


傷のないピアノに換えてもらって、満足、のはずなのに
調律師さんが帰り、一人になって弾いてみると
どうしても持ち去られた傷ついたピアノが恋しくて恋しくて しょぼんしょぼんしょぼん
たまらなくなりました

新しい子は
音域によって
音が明るすぎたり出にくかったり
とにかく、傷ついたあのピアノに比べて
上品さがなかったのです。




新しいピアノの音色を好きになろう、
音色を育てよう、と
がんばって弾き込んでみましたが
愛情がどうしても湧きません
あきらかに音が違うのです。


子供じみていると言われるかもしれないけれど
その時の私は
取り憑かれたようになって
あの傷ついたピアノを取り戻すことばかりを考えるようになりました。



購入したピアノ屋さんが、中古として引き取っているという話だったので
そのお世話になった営業マンさんにまず電話。

なんとかならないかと相談しましたが、
会社としては、同じ型番のピアノの音質が違うということを認めるわけにはいかいかないし、
一度納品したものを交換ということは許されないという立場で、
無理ですよパンチ!パーという話でした。


そう言われても諦めきれないくらい
その時のん太郎は熱に浮かされていましたメラメラ 恋の矢


交換が駄目だったら売ってもらおう
今、うちにあるこの新しい傷のないピアノを
中古としてそのピアノ屋さんに売り、
そして、
あの傷のついたピアノを改めて購入するという形ならば
いいんじゃないか
差額は支払えばいい。



そう考えてしつこくその営業マンさんに電話しました。
この手ならば文句なかろうと思ったのですが、
支店長さんや本社などとも相談した上で、
いくらお金を払ってもダメ、と断られました。

理由は、やはり、ピアノの音色に個体ごとの良し悪しがあるということを
認めるわけにはいかないということのようでした。




ほんとに、なぜこんなにこだわったのか、
自分でもわかりません。
恋、愛着、そして抗がん剤の孤独を共に乗り越えてくれた同士。


客観的に音の違いも大きかったと思いますが、
そこに感情的なものが重なって、
どうしても譲れない、という気持ちになっていました。
あのピアノが返ってこないなら
もうなんだってどうでもいいドクロくらいな
投げやりになりそうな気持ちもありました。
わがままなんですけどね。


こんなことなら最初の搬入の日、
傷ついても交換を請求しないでいたらよかったのに
新しいピアノに交換まで完了してから、
やっぱり戻してくれ、というのですから
聞き入れられなくて当然だったのかもしれません。




情緒不安定だったことも手伝って、
大げさじゃなく、ほんとに失意のドン底ドクロ ドクロドクロ




ところがクラッカー




駄目だ、という最終結論を聞かされてから数日後、
その営業マンさんの携帯 携帯から電話がかかってきました。


前置きは、こうです。




ん太郎さん。
今日は会社としての電話ではありません。
会社の方針は、先日お伝えした通りです。交換はできない、と。

けれど、長年ピアノを扱ってきた営業マンとして、
ん太郎さんが、ピアノの音色にそれだけこだわり、
愛着を持ってくださることに
心を揺さぶられました。

私がやっていることが会社に知れたらマズイのですが、
それなりの覚悟…クビも覚悟のうえで、
個人として、できるだけのことをさせてもらおうと思い電話しました。




ピアノが戻ってくるかもしれないということだけでなく
この営業マンさんのお気持ちが嬉しくて、
人生捨てたもんじゃないなって、涙が止まりませんでした。




その後も大変でした。
既に買い手がついていた傷ついたピアノは、
一旦、ちゃんとそのお宅家に搬入しなければ、
搬送会社との料金精算の帳簿関係から矛盾が見つかってしまいます爆弾
大きな会社なので、販売台数と搬送台数が合わないなんて見逃されないのでしょう。
そして、見つかれば、その営業マンさんの立場がやばい


そこで

その営業マンさんが、買われたお客様に事情を話し、納得して頂いた上で
(たしか、お婆ちゃまがお孫さんに買ってあげるという神奈川の方でした)



「どうしてもこの傷のあるピアノが欲しいとおっしゃるお客がいるので、
会社としてはいったんこれを搬入するけれども、改めて後日、
個人的に派遣した搬送会社が引き取りに伺い
この傷のあるピアノを、傷のないピアノと交換しますので。」

ということになりました。

で、
新しい買い手さんのお宅に一週間ほど滞在した例の傷ついたピアノくんは、
秘密裡にその後、ん太郎宅へ運ばれ、
ん太郎宅に1ヶ月半ほど居ついていた傷なしピアノは無事神奈川へクラッカー

営業マンさんの無償の厚意に感謝です。
ん太郎が請求されたのは新たに発生した送料のみ。

どうしてもお礼をと、その後お会いしても、
金券のようなものは決して受け取っていただけず

小さな菓子折のみ、かろうじて持ち帰ってくださいました。
どれだけ感謝しても感謝しきれません。




その傷ついた子は
いまも、ん太郎の自宅の方に、嬉しそうに座っています。
ただし、あんまり弾きすぎてマンションの上の階の方からお叱りを受け
今は、防音室アビテックスの中に閉じ込められてますにひひ





また長話をしてしまいました。
でも、いい話でしょ?


残念ながら、今は手の痺れと筋力ダウンが激しくて
しばらくは弾けませんけど、ね。












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