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4.農業を菌類の活動から見直す

(1)土作りにも菌は貢献する
菌類が農耕用の土壌作りにいかに貢献しているかを説明している本がある。
菌は有機物を分解する過程で糖類を作り出す。
この糖類が土壌粒子を接着して、土壌団粒を形成する。
通気性がよく、水はけもよく、しかも保水性が良い理想的な土が作られることになる。
仮りに砂地であっても菌類が働いているところでは、菌が作り出す糖分によって砂地が団粒状の土に変わっていくそうである。
砂漠の緑化の主役も、実は菌類だという可能性がある。

(2)植物間の相性という現象
福岡正信はじめ、自然栽培を実践する人は、植物と植物の間には相性の良し悪しがあると指摘している。
以下は、千葉のおーけー農園さんの観察の例である。
ハコベは母子草と共にしか生えていない。
クローバとカラスのエンドウはとても良好な関係にあり、豆の育ちが良くなる。
イチゴはニンニクとの相性が抜群で、一緒に育てると両方とも大きく育つ。
米の裏作としてレンゲ草を植えると翌年の米の収穫量が上がる。

この地上から観察できる現象も、実は我々からは見えていない土中の植物の根と菌の相性や、ある種の菌と別の種類の菌の相性に関係がるのかもしれない。
かなり以前には自然栽培の信奉者の中には、肥料を与えていない畑で豊に実る作物を見て説明に困り、「見えない力、エネルギーXがある」と、何か神秘的な言葉で説明しようとする人もいた。
しかし、これからは菌類、そしてこれも肉眼では見えない細菌類、その他微生物の働きから説明される必要があるだろう。 (※注 あとがきをご覧ください。)

(3)肥料・除草剤と菌について
①菌根共生を壊す肥料
言うまでもなく、植物は無機物を取り入れて有機物を作り、菌類は有機物を無機物に還す。
肥料を使うことは、化学肥料であれ十分に熟成させた有機肥料であれ、直ちに植物が摂りいれられる無機的な栄養を土に入れていることになる。
ということは、上で述べたような菌の活動、菌と根の協力関係を省くことができる。
だから、養分が豊富な温室などでは植物は菌根なしに成長できるために、菌根共生は見られないらしい。
植物の根も、栄養が手近にあるために必要最小限にしか伸びなくなる。
風雨や虫に弱い虚弱な植物が出来上がる。

さらに、熟成していない有機肥料を土に入れる場合には、菌類は有機肥料の有機物を無機化する活動にエネルギーを注ぎ、根との協力関係を結ばなくなる。
有機物を植物の根からもらう必要がないからだ。
また、有機肥料の持っている過剰な窒素化合物は植物が吸収した後で有害な物質に変わる可能性があるのだから、有機肥料を使うことも考えものである。

②除草剤は必要というイメージ
野菜を育てるためには雑草のない「クリーン」な土が必要だというイメージは、野菜を育てるには肥料が必要だというイメージと共に根強く頑迷だ。
やはり、雑草が生えていると栄養が雑草に奪われてしまう、という考えが根本にある。
雑草、野菜、花などという分類は人間の必要性から植物を分類しているにすぎない。
人間が消化できない草、毒性を持つ草は雑草、花が美しくない草は雑草、などと勝手に分類しているにすぎない。
同じ植物なのであり、もちろん菌根菌にとってはどれも植物なのだ。

菌根菌の菌糸は一つの植物と結びつくだけではない。
幾つもの植物の根と共生関係を結ぶ。
植物の種類が多ければ多いほど菌糸のネットワークは豊かに広がっていく。
アドベジのサイトの巻頭にある「雑草の中でたくましく育つネギ」を再度ご覧ください。
栄養は植物間で奪い合いをしているのではない。
むしろ菌を介して土中の栄養は豊富になり、植物間で分け合う関係にあると言えるのではないか。
相性の良い植物の関係は、この分け合う関係が良好なことに拠るものと考えられる。

ある種の雑草を抜かれるたり、取り除かれたりするだけでも菌根菌の菌糸は痛めつけられて、菌と植物のネットワークは弱ってしまうだろう。
明らかな弊害があるにもかかわらず、除草剤はなぜ使われるのか。
除草剤の会社が利益をあげられるから?
農業の「伝統」だから?
現状では、除草剤を使わない農業は、一般の農家や農協から白眼視されている。


あとがき

何の因果で菌の話にのめり込んでしまったのだろう。
生物といえば、高校時代の生物の時間はもっぱら居眠りの時間だった。
今読んでいる本は様々な化学物質名や化学式がたくさん出てくる。
大学時代に化学を専攻していたとはいえ、今や在籍したという以上の記憶はない。
しかも40年以上前の話で、化学式などを見ると頭が痛くなるという体たらくだ。
しかし今現在の問題意識からすると、さらに頭痛薬を飲みながらでも難しい本を読み進めなければいけないようだ。

「菌と農業」については、昨年の10月ぐらいに書こうと考え始めたのだが、本を読んで準備することと忙しさにかまけて、ようやく一段落。
しかしつい先日、「菌や細菌の働きをまとめて『エンドファイト」と呼び、これを農業に活用する試みが注目を浴びているんですよ」、という情報をおーけー農園さんから頂いた。
知らなかったのは迂闊でした。
だけど私の考えてきた方向性は間違えではなさそうだ。
少しほっとし、また勇気付けられました。
頭痛薬を飲みながら「エンドファイト」の勉強を始めます。

3.菌の役割

(1)分解者としての菌類

よく知られているように、生物の世界は生産者、消費者、分解者に分類される。
生産者は植物。葉緑体を持ち、地中の水と空気中の二酸化炭素(無機物)を原料にして、太陽エネルギーの力を借りて光合成をする。
そのときにデンプンなどの炭水化物(有機物)が生産される。
有機物は炭素の長いチェーン、(-C-C-C-・・・・・・-C-C-・・・)を持つ。
これが、地球上に生きるすべての生物の栄養になる。
これに対して、消費者は植物が作る有機物を栄養として食べる草食動物、さらにそれらを食べる肉食動物に分けられる。
有機物は植物から動物の体内に移動することになる。
分解者は、生産者や消費者が枯れたり死んだりしたもの、またそれらが出す老廃物や排泄物など(有機物)を分解し、最終的に水と二酸化炭素(無機物)にして自然界に返す役割を持っている。
分解者には、ミミズやだんご虫、ヤスデ、ダニなどの小動物、細菌、菌などが属している。
細菌や菌は、この分解者のグループの最終的な位置にいて、分解の最終の仕上げをする。
つまり、これらの細菌や菌は有機物が持つ炭素の長いチェーン(-C-C-C-・・・・・・-C-C-・・・)を炭素1個の二酸化炭素にまで切っていき、それらを再び植物が光合成に利用することになる。


(2)菌根菌の主な役割

そして、菌類の中でも菌根菌は植物の成長との関係でとても重要な役割を担っている。
菌根菌は植物の根と協同作業をする。
菌根菌が根の細胞に付く。
根に付いた菌根菌の菌糸は植物の根から有機物を提供してもらう。
それで終われば単に寄生しているだけだが、菌根菌は植物に様々なお返しをする。

?炭素循環における役割
すでに触れたように、菌類などが空気中に二酸化炭素を放出させることで植物の光合成を可能にしているわけだが、土中にも水に溶ける炭酸水素イオンHCO3―や
炭酸イオンCO32―つくることで炭素分を根からも吸収できるようにする。
ある研究者は、菌根菌が根に付いた植物は菌根菌が根に付いていない植物と比べると、光合成が促進されることを報告している。
このため、植物の地上部における成長も際立ってくる。
茎の中の維管束が大きくなり、葉脈の直径が倍近くまでになり、葉の厚さが1.5倍以上になるまで成長することなどが観察されている。

?窒素循環における役割
植物の成長に必要な栄養の代表は「窒素・リン酸・カリ」と言われているが、この中の窒素を植物が取り込むのにも菌根菌は大きな働きをしている。
土中の窒素は、アンモニアやアミノ酸、硝酸のイオンの形で存在するが、これらを菌根菌が土中から吸収し植物に受け渡している。

?その他の栄養の引渡しにおける役割
植物が必要とする元素は16種類に及ぶ。
主なものは、炭素、窒素、水素、酸素、そしてさらにリン、カリウム、カルシウム、イオウ、マグネシウム、鉄が挙げられる。
菌根菌の菌糸は実に数メートルも伸びるものがある。
植物の根が届かない場所から、栄養を運ぶことができる。
また、菌糸は植物の根に比べると非常に細いので、植物の根には入っていけない岩の隙間などにある栄養素を摂りいれ、植物に送り込むことが可能だ。
植物は様々なミネラルなども受け取る。だから野菜も栄養と味わいも豊かなものになるわけだ。
さらに、植物の根毛が何かの原因で切れてしまった場合には、菌糸が根毛の役割をすることもある。
興味深いことだが、根の役割は菌根菌を付着させる器官にすぎないという説もある。
根と菌根菌の共生は植物の成長にとって不可欠といえる。
このように、土中にある様々な栄養分が菌根菌を通して植物に取り込まれていくのだが、
一例としてリンの取り込みについて見てみよう。
リンが根の先端から7cm離れたところにあるとしよう。
このリンを菌根菌が植物に送ることが実験で観察されている。
また、土中にあるリンは水に溶けにくい状態にある。
この場合、菌根菌は自分から有機酸を分泌して、リンを水に溶ける状態に変える。
このことを通じて植物の根はリンを吸収できるようになる。
こうなると、菌根菌は単なる栄養の引渡しをしているというより、栄養を供給しているといっても過言ではないほどの貢献をしていることになる。
他のミネラルの供給も類似した仕方で行なわれているわけだ。
さらに菌根菌は、人間が体内に摂りこむと危険なもの、例えば重金属などを植物が取り込むことを抑制する役割まで果たしてくれているとも言われている。

                                 (つづく)
3月25日のお野菜のお申込は締切とさせていただきます。

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次回は4月22日です。

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