五十日(ごとび)の夜に事件は起こった。
とにかく渋滞がひどかった。ドッグランから15号へ出るまで、いつもの数倍時間がかかった。
渋滞しているにも関わらず、原チャリが白バイに捕まっていて、さらに渋滞を招いていた。
こういう周りの状況が読めない白バイは一般人の敵でしかない。
車内でも苛立っていた。
大好きなUCCブラック缶が売り切れていたし、ドッグランで数ヶ所足や腕を蚊に噛まれた、しかも、草ぼうぼうで、アデルもいとも、ベタ草のせいで身体中がベタベタしていた。
しかもひどい渋滞。
その店は多摩川駅にある。
予約がとれた8時半までには、充分すぎるほど時間があったが、せっかちな性格が邪魔をして、渋滞していたせいもあり、異常にいらだっていた。
15号から環八へ入り、下丸子から、沼部方面を走り、丸子橋を左に見ながら、多摩川駅に到着した。この辺りは駐車場がないため、田園調布の住宅街手前の小さな駐車場から歩いた。
お店に到着したが、入る直前に電話がなり、外で話していると、中から早くしろ早くしろと、しかめっ面で嫁が手招きしている。
電話の相手は八百屋のヨッちゃんで、注文のオーダーの電話だった。私が青果業を初めてからなので、もう15年以上の付き合いになる。とにかく優しいヨッちゃん。
米足りてるか?野菜食べてるか?いつも以上の優しさだ。私が早く電話を切りたいと思えば思うほど、どうでもいい話をしてくる。
中から、イライラしながら、嫁の手招きはさらに力強くなり、しかめっ面も怒り顔になっていた。
我々はいらだちのピークにいた。
車内での苛立ちが富士山のピークだとしたら、いまの嫁と私はキリマンジャロあたりのピークかもしれない。
やっと電話を切り、店内へ入った。
初めての店、もんじゃ焼きが有名らしいが、とにかくお好み焼きにしか興味のない夫婦。
嫁、海鮮玉
俺、豚玉にイカのトッピングで注文した。
ん?海鮮?そういえば昨日も海老をたくさん食べていたな…
どんだけ、海老好きやねん!
昨日の海老しゅうまい

昨日の海老マヨ!

写真左。あと撮り忘れたが、海老入り焼きそばも食べた。それにしてもラキは可愛い!
そうこうしていたら海鮮玉到着!

今日も海老!
東京へ来てから、自分で焼くスタイルにはだいぶ慣れてきたが、やはりこのスタイルは納得いかない。
関西ではほとんどの店で店員さんが焼いてくれる。
なぜお金を払って、焼かないといけないのか?お好み焼きは焼き方ひとつで味が変わるので、お店としての、そのあたりの焼き方や味に対してのプライドはないのか?
いろいろ考えてきたら、私の豚玉(イカトッピング)到着


豚は混ぜずに上にのせるスタイル。

嫁の出来上がり。

そして、嫁の完成!
私も普通に少し食べた。
が、ここで事件は起きた!!
あたり前のこととして、食べていいと思い、食べたつもりが、大激怒されたのだ!
しかも食べた量も6分の1、いや8分の1だけだ!
それだけの量でキレられた。
嫁の言い分はこうだ。
「アンタ、自分の豚玉あんねんから、焼けるの待って、自分のたべや!」
いや、待てよと。
自分のが焼けるのに少し時間もかかるし、空腹と苛立ちで、腹を満たす為に少しだけ食べた、いや、つまんだ程度で、なぜにこのお方はこんなにも怒っていらっしゃるのだ!
しかも海老を食べたとさらにキレてきた!
「私聞いてもないのに、勝手に私の大好きな海老を食べた!三個しか入ってないのに、そのうち一個食べた!」(写真には海老4個あるがな!数ごまかすな!)
昨日も中華で、たくさん海老を食べたのだ、どんだけ海老すきやねん!
だいたいお好み焼きってのは、ワイワイ、ガチャガチャ食べる、楽しいもんやろ!
台無しだ。
鉄板を囲んだ楽しい食事が!久しぶりに食べるお好み焼きが!空腹を満たしてくれる楽しい食事が!一日の疲れを癒す楽しいはずの夕食が、すべてが台無し。
たかが、8分の1のお好み焼きを食べただけで、結婚してまもなく30年もたとうとしている、これまで大事に大事に積み重ねてきた夫婦生活が。
言いたいことも言わずに、耐えがたきを耐えてきた夫婦生活。子供と家族の為に好きな仕事を辞めて、汗水たらし、あくせく働いてきた。
それなのに、たかだか8分の1のお好み焼きを食べただけで、何故に私はこんなにキレられないといけないのか。
いととアデルの親権はどうするか、(いや間違いなく俺やろ!)いろんなことが頭をよぎる。
私は自分が持っている、あらゆるコネと金で、このたかだか8分の1のお好み焼きを食べただけで怒り狂っている彼女に立ち向かう。
こういう苛立ちの連続や、苛立ちの限界からくる些細な事件から、戦争というのは起こるのだろうと、自分のアツアツの豚玉を食べながら思った。
我々はむしゃくしゃしながら、ただただ目の前のお好み焼きを無言で食べた。
いや、ん?普通にうまいよね?
関西生まれの嫁も納得するお好み焼きだった。
数々の困難や苛立ちを乗り越えて、知らぬまにエベレストという美味さのピークに到達した。
いや、美味しいお好み焼き、ありがとう。
お好み焼き大鳳
また寄らせてもらいます。
ちなみにアデルといと用に、豚のサービスもいただきました。

ペットにも優しい、お好み大鳳、必ずまた寄らせてもらいます。
そのときは夫婦仲良く食べさせてもらいます。