まだ、ベロと交際中のこと。


夕食は何度かご馳走になったが、いつもカレーライスばかり。


うんざりしていたが、


「一緒に食べよ。」


と、言われしぶしぶ居間へ、ついていく。


テーブルにはホットプレートが置かれていて、めずらしくカレーじゃないらしい。


・・・・


お好み焼きらしいが


!?


みじん切りにされたピーマン、人参、ひき肉を混ぜ込んである生地をホットプレートに流していくベム(元義父)。


直径5~6cm厚さ2~3mmの輪ができていく。


他に具材もなし。


ペラペラなのですぐに焼け、ゆきうさぎのお皿におせんべいのようなそれが乗せられる。


当時まだ高校生のゆきうさぎは、嬉しそうに


「ありがとう。」


と言って、置いてあったとんかつソースをかけ食べるしかできなかった。


・・・


・・・・・


・・・・・・・


ネットリしていてゴワゴワしている。


山芋すら入っていないらしい。


ピーマンは好きだけど、このピーマンは許せない。


さすがのゆきうさぎも「おいしい」とは言えなかった。


そんなゆきうさぎの横で、何枚も何枚も美味しそうに食べているアダム家の人達。


確かに、「お好み焼き」はお好みだけど・・・


基本を押さえることの大事さを痛感し学ばせてもらった。

嫁いだゆきうさぎがまずしたのは、言うまでもなくキッチンの掃除。


ゆきうさぎは妊娠中だったが、そんなことは言ってられない。


下手をすればにかかわる。




まず目についたのは、古びた冷蔵庫。


おそるおそる開けてみる。




冷蔵室には、半額シールが貼ってある大量のお惣菜たち。


製造年月日からして食べるのは危険そう。


食べないなら買わなきゃいいのに・・・・


なんて思いつつ冷凍室を開けてみる。




ビッチリと詰まっていて、何が何だか分からないので全部出してみる。


冷凍焼け変色し、何肉かの判別も難しい。


そして奥の奥からでてきたものは・・・


[ 製造年月日 63・○○・○○ ]



??


当時平成7年、西暦1995年


しばらく「63」の意味が分からず考え込むゆきうさぎ。



!!!!!!




そう、昭和なのだ。


昭和63年の何かの肉だったのだ。





近くで見ていたベム(元義父)が笑いながら


「捨てなさい捨てなさい」


と言ってくれたので、ありえない食材たちを控えめに処分したゆきうさぎ。





、やっと帰宅したベラが部屋にやってきた。


「キレイになったね」


と、褒めてもらえると思った18歳のゆきうさぎに



ムッとした顔で


「まだ食べられるのに!」


と一言。





今なら言えるのに。


「犬でも食べませんから!!」


と・・・









ベラは「頭の病気(血管がつまりやすい)」があるにも関わらず、夜遅くまで帰らない。


なので、ゆきうさぎが嫁ぐまでは家事は警察官ベム(元義父)の仕事。住み込み駐在勤務なので家事をおこなう時間はたっぷりある。


だが、男のする事。


交際中、食事をご馳走になったのでお礼に後片付けをしようとキッチンへ行って泣きそうになった事がある。



油でドロドロのガスコンロ。


水垢どころか得体のしれないものがこびりついたシンク。


「ふきん」と言って渡されたのは、真っ黒でネトネトで雑巾としてもありえないもの。


カビが増殖した食器乾燥機。




この家で食事をしたことを深く後悔した。


ベムはともかく、それを放っとくベラが信じられなかった。





数年後、そんなアダム家へ嫁という家政婦「ゆきうさぎ」がやってくる。




だがこのキッチン、これだけではすまなかった。




それは、また・・・