新年を迎えて一週間。ほとんどの方は仕事が始まり、正月気分なんて吹っ飛んじゃったんじゃ無いでしょうか?

お正月、みなさんは美味しい物食べましたか?お節料理やお雑煮、お刺身などで新年を祝い、いつものビールやウイスキーを変えて、日本酒で和を楽しんだ方も多いかと思います。

今回は、オシャレなイタリアンお刺身というイメージの強いカルパッチョについてです。

カルパッチョというと、生の魚を薄切りにして皿に並べ、色の鮮やかな野菜を飾り、ドレッシングをかけたイタリア料理。
そんな風に思い浮かべる人が大半かと思います。

しかし、この様なカルパッチョはイタリアにはありません。
日本人には当たり前な魚の生食。
世界的に見ると、生魚を食べるというのは変わった文化なのです。世界の大半は魚には火を通して食べます。
この日本の刺身文化、世界に誇れる文化であり、個人的に日本人で良かったと思う文化の一つなのであります。
やっぱり魚は生が美味い。
その事に世界も気付いたようで、今では世界的に寿司・刺身が大ブームです。

そんな生のお魚大好きな日本という国にやって来たイタリア料理カルパッチョ。
日本の刺身文化の元で作り直されたのが、いま広く知られているカルパッチョになりました。

じゃあオリジナルなカルパッチョってなんなのか?
元々は生の牛肉が使われていました。
生の牛ヒレ肉を薄く切り、皿に張り付けるように並べ、マヨネーズベースのソースに、薄くスライスしたパルミジャーノ・レッジャーノ。

水の都、ヴェネツィアで生まれた料理です。
ヴェネツィアの老舗レストラン「ハリーズバー」が発祥と言われています。このレストランはカクテルのベリーニが生まれたお店としても有名です。
昔、ある伯爵夫人が医者に火を通した肉を食べることを禁止されていました。
じゃあ生肉を食べようと友人のハリーズバーのシェフにお願いし、出来たのがカルパッチョです。
そして生の牛肉の鮮やかな赤を、特徴的な赤色を使う画家、ヴィットーレ・カルパッチョの絵画に見立てて、「カルパッチョ」と名付けました。

つまりカルパッチョというのは人の名前なのです。そして生肉だったのです。
今は食べる事が増えてきましたが、日本人にとって生の牛肉を食べるのは抵抗を感じると思います。
そこで馴染みの深い生の魚に変えたと言うわけです。

由来を辿ると、もはやカルパッチョじゃありませんね…マグロならありかな?
でも料理というものは進化していく物。
海を越え、遠い国で鮮魚のカルパッチョとして進化したのです。

この生魚を使ったカルパッチョ、刺身ブームも相まってイタリアに逆輸入され、イタリアでも普通に食べられるようになってきています。
まさにイタリアと日本の文化の融合。

だから私達日本人が薄切りの生の魚に、オリーブオイルやビネガー等でイタリアンぽくするなら、それは立派な鮮魚のカルパッチョなのです。
何かのレシピ通りに作らないとカルパッチョじゃない!なんて事は無いのです。

普通のお刺身に飽きたら、自分なりのカルパッチョを作ってみてはいかがですか?
物を食べたとき、食べ物の味を感じることを味覚と言います。当たり前ですが。
食べ物の味というのは、この味覚に感触、香りに温度など様々な要素が重なりあって、味というものを感じます。

それでも一番重要な味覚。その味覚とは何なのか?何が作用しているのでしょうか?

~五味~
みなさんは五つの味を知っていますか?
食べ物の味を構成する五つの味。そして人間が感じ取れる、五つの味覚です。

*甘味
*塩味
*酸味
*苦味
*旨味

この五つです。
学問的に言うならばこの五つですが、料理を作り、食べるときは辛味も重要な味です。
では、何故辛味は味とされていないのか?それは後術することにします。

~味はどこで感じる?~
人は味を主に舌で感じます。
人の舌には、味蕾と呼ばれる感覚器があります。そこに様々な物質が触れて、味を感じます。
この味蕾に、五味を感じる神経が繋がれているのです。
よく舌先は甘味、舌の脇は酸味などという、舌の部分で感じる味が違うというのは、研究によってどうやら間違いだった事が分かったようです。
でも舌先の方が甘味を感じやすいのも事実だと思うのですが…ただの錯覚なんでしょうか?

~味の正体~
○甘味
甘味の正体は糖質です。それも単純な糖質。
お米や麦などのデンプンも糖質ですが、単純な糖質では無いので甘味を感じません。
口で噛むことで、唾液の消化酵素によって単純な糖質へと分解されるので、ご飯を噛み続けると甘くなるのです。
人工甘味料等は、化学の授業で出てきたような、組成式だかなんだかにすると、糖質と同じ輪っかの構造があるらしく、その為甘く感じるのです。
つまり、糖質や人工甘味料に共通する輪っかが甘いのです。

○塩味
塩味は、その名の通り塩の味です。単純に塩味を感じるのは塩化ナトリウムだけしかありません。
この塩化ナトリウムは、水に溶けると塩化物イオンとナトリウムイオンにすぐ分かれてしまいます。
このナトリウムイオンが塩味の正体です。ナトリウムがしょっぱいのです。
もしかすると、理科の実験などで使ったナトリウムの板、しゃぶってたらおしゃぶり昆布みたいに塩味がするかも…?試した方いたら是非教えて下さい。

○酸味
酸味というのはphが低い、つまり酸性の物が酸っぱいのです。酸の味ですから、そのままです。
何故酸性が酸っぱいのか?それは酸性というのは、水素イオンを多く含んでいるのです。
この水素イオンが味蕾に触れることで、酸味を感じます。つまり、酸味は水素の味なのです。

○苦味
苦味、渋味を感じさせる物質は、沢山あります。
そして、苦味は舌の味蕾だけでなく、歯茎等でも感じることが出来るそうです。
アルカリ性の物は大体苦いです。アルカリという名前の語源が灰ですから、灰や灰になる前の焦げは苦いですよね。
また、化学物質も苦いです。歯茎や舌の表面に化学変化を起こし、他の物質に変えてしまう事があるそうで、それも苦いと感じます。

○旨味
この旨味というのは、今から100年ほど前に日本人が見付けた味です。海外では長い間無視されてましたが、今では世界の共通認識として旨味が認められています。
この旨味は、昆布出汁のグルタミン酸から発見されました。
合わせ出汁のエントリーに書いたように、昆布出汁の味は日本人しか分からないので、旨味を外国人が理解するのは難しかったのかも知れません。
この旨味の正体は、グルタミン酸やイノシン酸、コハク酸などのアミノ酸です。
そしてアミノ酸はたんぱく質の基です。
たんぱく質の塊である肉や魚、またその出汁が美味しいのは納得ですね。

○辛味
五味から仲間外れにされた辛味。
この辛味、実は痛みなのです。
味蕾で感じるのではなく、口の中の痛覚で感じます。つまり、口の中に痛いものが入ってくると、辛く感じます。
辛いものを食べると唇が痛くなったり、辛いものを触った手で目を擦ると悲惨な事になるのは、辛いものは痛いものだからです。
なので、厳密には味では無いのです。


~何故味覚は必要?~
何故味覚が必要なのか、それは食べれるものか判断する、ということでは無いでしょうか。
本来、酸味というのは腐敗した食べ物の味です。酸っぱい物は腐ってるから食べれない。
苦味は毒です。苦いものは毒だったり体に良くない物だから食べれない。
辛味は痛みなので、痛いということは体に悪い。だから食べれない。

また、糖質やアミノ酸は生きるためのエネルギーなので食べなくてはいけない。だから美味しいと感じる。
塩も生きていくのに必要不可欠なので、人は塩味を求める。

これが動物としての人間の味覚です。
しかし知恵を持ち、文明の発達した我々人間は、本来危険信号である酸味、苦味、辛味さえも楽しんでいます。
秋刀魚の肝の苦味がたまらない!!とか、レモンの酸っぱさが爽やか!!など。
つまり、動物としての味覚というのは、食べれるものか判断する為。
理性を持つ人間にとっては、美味しい物で幸せを感じるために、味覚というのは存在するのでしょう。

~酸っぱい、辛い、苦いを食べたくなるのはストレスの証拠!?~

酸味、苦味、辛味は上でも書いたように危険信号です。危険ということは刺激物です。
その刺激物を欲するということは、ストレスが溜まって、味覚の刺激によって発散したいという、心の声なのだそう。
激辛ラーメン食べたい!とか、酸っぱいものでスッキリしたい!などと思ったら、美味しく食べて、心を休ませてあげると良さそうです。
また刺激物を摂りすぎると、味覚が鈍感になってしまいますので、程々に。胃腸にも影響を及ぼすこともありますからね。ストレスが溜まっているなら尚更です。

~まとめ~
料理は化学だ!という方がいますが、確かに化学であり、科学だと思います。
一杯の味噌汁も沢山の物質で出来上がっています。一口の味噌汁でも、舌の味蕾は沢山の物質を感じ取っています。
その結果、美味しいなぁ幸せだなぁと感じるわけです。
そんな風に思いながらご飯を食べると、また違う楽しさが出てくると思います。
出汁。
和食でも、西洋でも、中華でも出汁というのは味の旨味や香りを担う、大切な要素です。
食材だけでは出しきれない部分を補い、料理全体のまとまりや、厚みを出します。
フランス料理では、いろんな食材や油分を使いますが、出汁いかんで旨い不味いが決まると言われる程です。
食材の味を活かした繊細な和食では、こと更出汁の出来で全てが変わってしまいます。

僕自身、専門がイタリア料理なので和食はそこまで深い知識を持っていませんが、日本人ですので、和食の合わせ出汁は作れるようにしたいものです。

~合わせ出汁~
昆布と鰹節

○昆布を固く絞った布巾で拭きます。

昆布は浜で乾かして梱包するので、小さいゴミが付いてる事があります。
昆布表面の白い物は旨味成分ですので、これは拭き取らないようにしましょう。

○鍋に昆布と水を入れ、しばらく浸けます。

出来れば2、3時間置きましょう。昆布の旨味成分は水にゆっくり溶け出します。

○火をつけ、弱めの火で沸かしていきます。

○沸騰する前、プツプツ泡が出てきたら昆布を取り出します。

沸騰させると、昆布のえぐみなどが出てきます。

○お玉一杯の水を加え、お湯を静めます。

○鰹節を入れ、火を強くします。

○沸いたら10秒程沸かし、火を止めます。

目安は、浮いてた鰹節が沈んで回り始めたら。
鰹節も沸騰させると、嫌な味が出てきますが、沸騰させないと旨味成分が出切らないので、少しだけ沸かします。

○さらしや、キッチンペーパーで濾します。

焦らずゆっくりと。勢いよく濾すと灰汁が混ざり、澄んだ良い出汁になりません。

○さらしにあけた鰹節を、軽く絞ります。

絞ると雑味が入ると嫌がる人もいますが、まだ旨味が残ってますので、軽く絞った方がしっかり味が出ると思います。

○濾した出汁を火にかけ、灰汁を取ります。

ボコボコ沸かさないように。沸かしすぎると濁ったり、出汁の香り成分が飛んでしまいます。

○香りの良い、美味しい合わせ出汁の完成。

全工程で丁寧に灰汁を取ると、更に洗練された出汁に仕上がります。


~昆布出汁は日本人にしか分からない!?~

この合わせ出汁は、昆布の旨味成分グルタミン酸と鰹節の旨味成分イノシン酸が合わさることで、相乗効果を生み出し、それぞれ単体より数倍も旨味を感じるのです。
それでもかつお出汁、昆布出汁というのは単体でも美味しい物です。関西では昆布出汁だけを使うことも多いです。

このイノシン酸、鰹節ですので動物性の旨味ですが、グルタミン酸は海草である昆布なので植物性の旨味です。

実はグルタミン酸、海草の旨味というのは
、単体では日本人にしか感じられないという研究があるのを知ってますか?

ある研究者が、フランスのコックを集めて昆布出汁を飲ませた所、みんな味の無いお湯だと答えたそうです。
そこにかつお出汁を加えると、しっかり旨味のある出汁だと分かったそうです。
イノシン酸との相乗効果は感じれる様ですが、グルタミン酸単体の味は分からないようです。

また、日本人には海外の人達より、味蕾という味を感じる舌の上にある器官が、多いことが分かったようです。
その為、日本人は繊細な味が分かるのです。
昆布出汁の旨味を感じれるのは、こう言うことが原因なのかも知れません。

長い間肉食を禁じられ、周りには海しか無い島国であり、外国との交流も無い中、先人達が日本の食文化を築き上げてきました。
きっとそのおかげで味蕾が増え、昆布出汁という美味しい味を感じることが出来る、繊細な味覚を持った我々日本人が出来上がったのでしょう。

そう考えると、何でもかんでも辛くする人や、何にでも酢をかける人などが増えてるようですが、実に勿体無い事をしているなと思ってしまいます。
辛味や酸味は刺激物ですので、過度に食べると、味覚を鈍らせてしまう原因になります。

せっかくもうすぐお正月。
忙しい時期ですが、出汁を引いて、繊細な味を楽しむのも良いんじゃ無いでしょうか?