もう何年もサブレを食べていない -2ページ目

もう何年もサブレを食べていない

文章を書くリハビリのブログになればいいかな

 面白くない。
 このシリーズを推理ものとして読んだことはなかったが、推理ものっぽい体裁をとるなら、もう少し説得力のある話作りが欲しいところ。謎解き(?)部分はシリーズ中で一番ひどい気がする。

 もっとも、ヴィクトリカと一弥の掛け合いはそこそこ楽しい。このシリーズはこれがキモなので、これが外れると存在価値がない。ただ、中盤以降は離ればなれになってしまうため、せっかくの面白要素がなくなってしまう。だから「面白くない」という感想が出てしまったのだろう。終わりよければ全てよし、ではないけど、尻下がりは困る。
 REDの伏線も全く回収されていないのもマイナス。話が進むと思ったのに、2巻目にして過去編は印象がよろしくない。次巻以降に期待。

 それにしても、一弥は成長のない男である。この話では、戦場の体験がやや影を落としているような描写がなくはないが、いやいや、学生時代から全然変わっていない。この男ほど、かわいい、という表現が似合う男もいないと思う。正直、僕の中ではヴィクトリカ以上にかわいい。読んでいて微笑ましい。こんな男も戦争に行ったわけで、新シリーズでは性格がやや変わってしまうのではないかと危惧していたのだが、全く変わっていない。安心したような、詰まらないような・・・・・・

 後、これは旧シリーズで角川文庫版になった頃からもそうだが、後書きがないのは多いにマイナス。富士見ミステリー時代は、キノ以上に後書きが面白い作品だった。角川文庫版を手に取り、あの後書きが削除されているのを見て、愕然としたものである。狛犬や鼻血先輩の話は非常に面白かった。ひょっとしたら、この作者、エッセーのほうが面白いのだろうか? 試しに手を出してみるか。

 総評としては、シリーズのファンなら次巻までの繋ぎとして、新規の読者は旧シリーズから。(絶版だけど、後書きのついている富士見ミステリー版がオススメ)