「最近、暑くて眠れない…」
三日前、姉貴がそんなことを言い出した。
「いいじゃない、眠らなければおねしょしないで済むし」
と言ったら、姉貴は泣いてしまった。
それから今日まで、姉貴は全く笑わない。
とっておきの落語を聞かせても、くすりともしなかった。
姉貴は三日間ちっとも寝てないようだった。その割にシーツは毎日濡れていたのだが…。
どうしたものかと考え込みながら大通りを歩いていると、向こうから茶色いローブを着た老人が歩いてきた。
老人は僕の顔を見るなり、一枚の図面をくれてこの通りに作れと言った。
図面にあったのは、普通の扇風機のようだった。
扇風機なら作らずとも家にあったが、あの老人の目は真剣だったので、作ってみることにした。
夕食後直ちに作り始めて、完成したのは夜中の二時過ぎだった。
完成したのはやっぱり扇風機だった。
騙されたのかな…そう思い始めた所へ、ちょうど姉貴が水を飲みに起きてきた。
僕は姉貴を呼ぶと、できたての扇風機のスイッチを入れた。
扇風機は天井をぶち破り、夜空に向かって飛んでいった。
姉貴が笑った。