項垂れる首 聞こえない耳 叫べない喉 動かない足。だけど君は確かに僕を見ていた。暗い瞳で僕を見ていた。
未だに心の蔵から赤黒い雫が滴り落ち、白のブラウスを染めていた。君を貫いたまま刃は、鈍く光る。
これが現実か夢か僕には分からない。ただ、これが悪い夢なら早く目覚めてほしいと思うのは御都合主義というやつだ。
……ついにやってしまったのか。
君からの雫が僕の左手を濡らしていた。
手に入れたものは離したくない。たとえどんな形になろうとも。でも手に入れたものはすぐに僕の手をすり抜けて行く。残るのは赤い跡と、バラバラになった蝶。
蝶は僕の大切な人。それ故に僕はすべてをほしくなった。僕を愛してくれる蝶の全部がほしかった。生も死も、支配できる すべてが。
これでいい。後悔なんて一つもしていない。むしろ、今の気持ちは快感に近いものかもしれない。
左手には赤い雫と消えない傷。
これで蝶はボクノモノ。ボクダケノモノ。
~Paranoia~
(ボクハ パラノイア)