「演技は感覚でやるもの」 「理屈じゃない、心で演じろ」
こんな話をよく聞きますよね。確かに演技には感情が大切です。でも実は、うまい俳優ほど自分の技術を言葉で説明できるんです。
今回は、なぜ演技を「言葉にする」ことが上達につながるのかを、わかりやすく解説します。
「なんとなく演技」の問題点
よくある悩み
演技を始めたばかりの頃は、感覚だけでもうまくいくことがあります。しかし、だんだんこんな壁にぶつかります:
困ったこと1:同じようにできない
- 昨日はうまくいったのに、今日はダメ
- 本番で練習通りにいかない
- なぜうまくいったのかわからない
困ったこと2:アドバイスがわからない
- 「もっと自然に」と言われても、どうすればいいの?
- 「感情をもっと出して」って、具体的には?
- 他の人のアドバイスが抽象的すぎる
困ったこと3:成長が止まる
- 一定のレベルから上達しない
- 自分の弱点がわからない
- 何を練習すればいいかわからない
「言葉にする」って何?
演技を言葉にするとは、自分がやっていることを他の人にもわかるように説明できるようにすることです。
悪い例と良い例
例えば「悲しい演技」について:
❌ 曖昧な説明 「悲しい気持ちになって演じる」 「心から泣く」
✅ 具体的な説明 「胸に重いものがあるイメージを持って、息を浅くして、声を小さくして、目線を下に向ける」
この違い、わかりますか?
言葉にすると何が良いの?
1. 同じことができるようになる
料理のレシピと同じです。材料と作り方がわかれば、何度でも同じ料理が作れますよね。
演技も同じで、「何をしたか」がわかれば、また同じようにできます。
やってみよう:
- うまくいった演技を録画する
- 何をしたかメモする
- 次回も同じことをやってみる
2. 練習が効率的になる
自分の得意・不得意がわかると、何を練習すればいいかはっきりします。
例えば:
- 声が小さい → 発声練習
- 体が硬い → 身体表現の練習
- 感情が伝わらない → 感情表現の練習
3. 人とのやりとりがスムーズに
演出家や共演者との話し合いがうまくいきます。
良いコミュニケーション:
- 「この場面では怒りを表現したいが、どのくらいの強さが良いか?」
- 「相手の目を見るタイミングはここで良いか?」
- 「声のトーンはもう少し低い方が良いか?」
プロの俳優も言葉にしている
世界で活躍している俳優たちを見ると、みんな自分の演技について詳しく話すことができます。
海外の俳優たち インタビューやレッスンで、自分の技術について具体的に説明します。役作りの方法、感情の作り方、体の使い方など、経験を整理して人に教えられるようにしています。
日本の実力派俳優たち 長年活躍している俳優さんたちも、自分の演技について深く考えて、それを言葉で表現できます。舞台と映像の違い、年齢による変化なども、経験をもとに説明します。
実際にやってみよう
ステップ1:記録する
用意するもの:
- スマホ(録画用)
- ノート(メモ用)
やり方:
- 自分の演技を録画する
- 何をしたか時間順に書く
- なぜそうしたか考える
- どんな効果があったか確認する
記録の例:
時間:3分30秒〜45秒 場面:告白シーン
やったこと: - 深呼吸してから話し始めた
- 最初は相手の目を見た - 途中で目をそらした
- 声が震えるようにした
- 最後にまた目を見た
効果:緊張感が伝わった 直したい点:声の震えが少し不自然だった
ステップ2:技術を分けて考える
演技を4つに分けて分析してみましょう:
🎭 体の使い方
- 姿勢、歩き方、手の動き
- 表情、目の動き
- 呼吸、声の出し方
🎭 気持ちの作り方
- 感情の入れ方、切り替え方
- 集中の仕方
- 相手との関係の作り方
🎭 台本の読み方
- セリフの理解の仕方
- キャラクターの理解の仕方
- 場面の意味の理解の仕方
ステップ3:自分の言葉を作る
自分だけの「演技の言葉集」を作ってみましょう。
感情の表現:
- 「軽い悲しみ」:涙は出ないけど胸がちょっと痛い感じ
- 「静かな怒り」:表面は calm だけど心の中で火が燃えている
- 「透明な喜び」:顔には出さないけど体が軽やか
技術の表現:
- 「足裏意識」:足の裏に注意を向けて体全体をリラックス
- 「3段階呼吸」:お腹→胸→肩の順番で息を吸う
- 「視線の糸」:相手との間に見えない糸があるイメージ
ステップ4:試して改善する
確認方法:
- 言葉にした技術を別の場面で使ってみる
- 他の人に説明してみる
- 効果があるかチェックする
- 必要なら言葉を変える
気をつけること
やりすぎは禁物
言葉にすることは手段であって、目的ではありません。
❌ やってはいけないこと
- 理屈ばかりで感情を忘れる
- 完全に機械的になる
- 他の人の真似ばかりする
- 完璧を求めすぎる
✅ 正しいやり方
- 理屈と感情のバランスを保つ
- 自分の体験をもとにする
- 柔軟に変化させる
- 言葉にできない部分も大切にする
人によって違う
人によって得意な表現方法が違います:
目で覚える人:色や映像で考える 耳で覚える人:音や音楽で考える 体で覚える人:感覚や動きで考える
自分に合った方法を見つけることが大切です。
道具を活用しよう
録画・録音
必要なもの:
- スマホ(基本の録画・録音)
- 三脚やスタンド
- できれば外部マイク
コツ:
- いろいろな角度で撮る
- 音は別で録ると良い
- 明るさを調整して表情をはっきり
- 定期的に同じ内容で比較
アプリやツール
デジタル:
- 動画編集アプリでスロー再生
- 音声分析アプリで声をチェック
- メモアプリで記録管理
- マインドマップで整理
アナログ:
- 手書きの演技日記
- 付箋で技術要素を整理
- 大きな紙で関係図を作る
- ボイスレコーダーで振り返り
まとめ
演技を言葉にすることで、感覚的な芸術をより確実に身につけることができます。
得られる効果:
- 同じことが再現できる
- 効率的に練習できる
- 人とのコミュニケーションが良くなる
- より深い表現ができる
- 新しい可能性が見つかる
言葉にすることは、演技から感情を奪うものではありません。より自由に、より確実に感情を表現するための道具です。
まずは今日から、自分の演技を録画して、「何をしたか」をメモしてみてください。小さな一歩が、大きな成長につながります。
📝 今日のポイント
- 感覚だけでは限界がある
- 言葉にすると再現できる、効率的、コミュニケーションが良くなる
- プロも技術を言葉にしている
- 4つのステップで実践できる
- 理屈と感情のバランスが大切
💭 やってみよう あなたがうまくいったと思う演技を思い出して、どんな要素があったか書き出してみてください。
🎯 次回予告 「演技を言葉にする5つの簡単エクササイズ」をお送りします。今すぐできる練習方法をご紹介!
演技についての質問や相談はコメントでお気軽にどうぞ。みなさんの疑問が次の記事のヒントになります。





