No. 1,198 こころのメモ９４７（ACアダルトチルドレン札幌

185/365 【心的外傷と回復】自己決定を行う能力

こんにちは村上です。

ジュディス・L・ハーマンの『心的外傷と回復』から一部抜粋して話しています。

本書は、戦争で受けた心の傷と、レイプや虐待で受けた心の傷は、同質のものであり、回復にはPTSDへの理解や、専門的な治療、セルフケアが必要で重要であると説明しています。

少しでも生きづらさが楽になるようなヒントになればと思います。

p205から参照します。

心的外傷と回復

第七章　治癒的関係とは　p.205

　心的外傷の体験の中核は何であろうか。それは、無力化disempowermentと他者からの離断disconnectionである。だからこそ、回復の基礎はその後を生きる者に有力化empowermentを行い、他者との新しい結びつきを創るcreation of new connectionことにある。回復は人間関係の網の目を背景にしてはじめて起こり、孤立状態においては起こらない。生存者は心的外傷体験によって損なわれ歪められた心的能力を他の人々との関係が新しく蘇る中で創り直すものである。その心的能力には「基本的信頼を創る能力」「自己決定を行う能力」「積極的にことを始める能力」「新しい事態に対処する能力」「自己が何であるかを見定める能力」「他者との親密関係を創る能力」がある1。これらの能力はそもそもが他者との関係において形成されたものであり、まさにそのように再形成も他者との関係においてなされなければならない。

1．E.Erikson,Childhood and Society,2nd ed.（New York：Norton,1963）.

心的外傷を負うことは、

もしかしたら、

自分で自分のことを決めることに

影響を与えるのかもしれないという話しをします。

「自己決定を行う能力」とは、

今、自分がしたいことや

やるべきことの

最善を選び

決めて

行動することを言います。

また、

未来へ向けた

行動計画を立てるとか、

人間関係における

自分と相手とのかかわりで

どのように振る舞うのが良いのか

判断する。

それはつまり、

責任を負うという

自己責任を意識しながら

最善の行動をするということです。

こんな風に言うと

多くの人が

たじろいだり

腰が引けたりするかもしれません。

ただ、

心的外傷を負っているという観点から考えると、

自己決定や自己責任を意識して

自分事として

捉えられないなら、

そんな心的状態が

心に傷を負っていると考えられます。

それは何かというと、

心的外傷を負うほどの

ショック体験を

親や他人から味あわされたことで、

主体性という

『自分』

という存在自体を

感じられなくなっているかもしれないということです。

なぜ自分が自分を感じられないかというと、

親や他人から

言葉や暴力によって

圧倒され

殺されるような

恐怖を

一方的に味あわされ

それがあたかも

心にカタチがあるなら

破壊されたような

ショックを受けたからです。

ショックを受けたことで

心は

機能不全となり

本来なら感じられるはずの

『自分』

という存在を

すみずみまで全体的に

感じられない

（感じたくない〜感じるのが怖い〜感じるのが恥ずかしい等）

という心的状態に陥るのが心的外傷です。

不信感や怒りに胸は渦巻き

奪われた

自分という存在が

もう戻ってはこないという

喪失感もありますし、

そんな理不尽に破壊された

自分などが

この世界と一人前に

かかわれるはずがないと

自分に対しても

不信感でいっぱいになっているとも思われます。

このため、

自己決定や自己責任などという

主体性をもって

どんなことにも正面から向き合い

逃げずに

どんな結果であっても

受け入れるという

心構えには

とてもなれないと

疲弊し投げやりな気分になっていても

不思議じゃないと言いたいのです。

自分で決められないということが

ダメ、ということを言っているのではなく

自己決定ができないのは

理由がありますという話しです。

したがって

自己決定していけるようになるには、

・自分の弱さを考えてみる

他人を見て不快感を感じることがあるなら、もしかしたら、その人の弱さを通じて自分の弱さを見ている可能性があります

・優柔不断とは何だろうと考えてみる

主体性を育むためには、自分で決める練習が必要ですが、選べない理由があるはずなので、自分の決められなさを考えてみましょう

・人の顔色を伺っていないか、人と比べていないかを考えてみる

自分の選択や行動を考えたときに、本当に選びたい物事や、人間関係をみたときに、自分の本心、本音を確認してみてください。思ってはいても、なぜか言えないとか頭が真っ白になるという方は、ちょっと心のメインテナンスがあった方が生きやすくなるかもしれません

自己決定や自己責任は、

簡単に身につきませんし

ひとりで何とかしようとしても

なかなか難しい課題かと思われます。

ご相談ください。

一緒に何が最適なのか考えましょう。

みすず書房ホームページ

「心的外傷と回復　増補新版」

心的外傷と回復【増補新版】 | みすず書房あらゆる心的外傷（トラウマ）の諸相とその治療への方向性を具体的・情熱的に示した、トラウマ問題の「バイブル」の増補新版を刊行。

www.msz.co.jp

※当記事の参照元

心的外傷と回復　ジュディス・L・ハーマン著　中井久夫訳　小西聖子解説／1998年9月10日第10刷発行／みすず書房／400ページ／6,600円+税

担当心理カウンセラー

村上なおと

カウンセリングサロン Anela

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