「得をするのはあなたです」
Renaissanceの巨匠
ミケランジェロの言葉である
ローマ枢機卿から創作の依頼を受け
かのピエタを完成させた彼
崇高で完璧な美しさを纏うピエタ
彼はおもむろにその枢機卿にあてた代金の請求書に
150ドゥカートと書いた
その金額は当時、庶民の年収のおよそ10年分の金額
その時、彼は24歳という若さ
当然のごとく枢機卿はその請求額に対し
「高すぎる」
と言って、はねのけた
その時、ミケランジェロが言ったのがこの言葉だ
「得をするのはあなたです」
24歳の青年が枢機卿と対等に口論を組み交わし
口にした言葉がこれである
なんともすごみのある
そして、自信に満ちあふれた言葉
西洋芸術史において
彼の才能と名声をぬりかえる才人が未だ現れていない
そんな彼の言葉
重厚であるあまり
一瞬耳を疑うような
存在感のある
彼にこそ最もふさわしい言葉
芸術においては
情熱的で大胆、かつたぐいまれな美を創造し続けた彼だが
恋愛においては
修道僧のように貞節だったと文献に記されている
果たしてそうだったのだろうか?
私はこの見解に懐疑的である
枢機卿にかのように鋭い
ひとをうならせる言葉をつきつけた彼である
彼は60歳を越えてから
40歳を過ぎていた詩人、貴族階級の未亡人ヴィットリアに恋をし
大きな愛情を抱いた
そしてヴィットリアが死するまでふたりの愛は続いたという
ダビデ像を大理石から切り出し
作り上げた彼の情熱と強烈な個性
しかしそれらはひとりの愛する優美な女性を前にして
繊細で
奥深い森を散策するように
静謐な息遣い
もっと芳醇で絶え間ない情熱であったのではないかと
推測するのである
熱い吐息
湧きいずる青年のままの情熱を秘め
ヴィットリアへ愛のソネットを綴った彼の心情
それは情熱的でありながら
男性であることよりも
むしろ、女性の性を意識した
耽美で美しいものであったであろうと想う
私自身が男性に対して想うのは
男性としての通念
つまり、らしさなどは装い
男性としての装いであって
真実はその装いを剥いだ時に顕になるものと心得ている
むしろその内面の感受性の豊かさや
物事をとらえる柔らかさ
普段はその装いによって覆われ
隠されている繊細さにこそ
心奪われ、とらわれる要素があると感じている
どこまでも情熱を秘めた静謐な息遣いにこそ
「得をするのはあなたです」
自信にあふれた彼の男性性が
ひとりの愛する女性を前に
情熱的でありながら真摯で
実に繊細で官能的なソネットを紡ぐ
歌い手であったことを想像すると
嬉しくなるのである
彼のその美しい繊細な手触りを想って
❤️
colors and atmosphere
♥︎ Hearts ♥︎
"ANTHOLOGY"
河華 あこ / 著
Karen Steph / イラスト
モン・パティシエ
一篇の詩と恋愛小品のアンソロジー
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