少しおっとりした話し方をする彼。

その声は、聞くたびに彼女を心地よくさせた。

そして、物腰柔らかな口調の中に時折混ざる

”男らしい”言葉が胸をどきっとさせた。

男性に守られていたいタイプの彼女は

その言葉がちりばめられているメ-ルに心躍らせていた。



飲み会に行ったのは、先月だった。

彼女は

”今月、どこかで都合がつけば飲みに行きたいですね”

と、メ-ルを打つ。

あっと言う間に返ってきたメ-ルには

”○日はどうかな?”

と、日付があった。

彼女は、二つ返事でOKをした。

その日が楽しみで仕方なかった。




あれから、なんとなくメールを送る毎日が続いていた。

たいした用事はないけれどもどちらからともなく送っている。

彼女の中では、ぼんやりとしたル-ルがあった。

”交互に送ること”だ。

昨日の夜は、彼女が送信して返事はまだだった。

彼からのメ-ルを待っていたが、いつも送信されてくる時間には

着ていなかった。

今日はいそがしいのかな…。

彼女はそんな風に思い、短いメ-ルをしてみることにした。

ものの数分で、彼女のスマホは短い振動で返信をつげた。

メ-ルこないかと思った。さみしかったよ。

その言葉に彼女は、気をよくした。

彼女は追いかける立場が多かったので

求められることに、嬉しさを感じていた。


煩わしさはなく、駆け引きもない楽しいだけのやりとり。

じんわり、ぬるま湯につかるような心地よさが彼にはあった。

少し甘えん坊が見え隠れする彼。

正直、彼女の好みのタイプとは言えなかった。

顔も、その甘えたそぶりも…。

唯一、気に入っていたのは声だった。

だけども、彼女は段々を気を許し惹かれていくのを感じていた。

何度も自分の胸に確かめていた。

好みのタイプではないみたいだけど??

どうして、気になるの??









彼女は酒が苦手だった。

飲んでも、たいして酔っ払いもせずに気持ちわるくなるばかりで

酒に少しも楽しさを見出せていなかった。

だけれども、彼と飲んだお酒はとても楽しく

また、何時もの様に頭痛がしたり吐き気をこらえることもなかった。

初めてのショートカクテルも、あっという間に飲み干していた。

チョコレートのカクテル。

まったり甘くて口にまとわりつく。

楽しいこの時間を表しているようだった。

彼は、サービスなのか山盛りのミントが入ったモヒートを飲んでいた。

そしてやっぱり、彼女に一口飲ませて

彼女がアルコールのきつさにびっくりしてる様を見て

笑っているのだった。

それを見て、また彼女も可笑しくて笑っていた。


ガラス越しに見える雪はふんわりと舞い、街頭の光でキラキラは増し

スノードームの中にいるような感覚に陥る。


お互い、仕事がいそがしかったせいか

疲れがどっと溢れ出し眠たげな目になっていた。

お互い同じ顔をしてるのに

お互いに、眠そうな顔をしていると言い合い笑った。

会話もぽつぽつと、途ぎれ途ぎれになったころ

そろそろ…と店を出ることにした。


スノードームの街は寒い。

あっと言う間に酔いが醒めそうだった。

寒いねとお互い何度も確認しながら歩く。

沢山の人が足早にホームを目指していた。


彼女は電車が来るのを待っていた。

反対のホームに彼を見つけて手を振る。


電車に乗り込むと、あいてる席を見つけてすぐに座る。

心地よいけだるさが全身を襲ってきた。

スマホを取り出し、ご馳走になったお礼と

また行きたいとメールをした。

すぐに返事がくる。

メールのラリーが続く。

他愛のない会話だが、彼女はとても楽しかった。

久しぶりに楽しさを感じて、心が柔らかくなった。





















彼女は友達に女の子を紹介する予定を立てていた。

双方と連絡をつけ

日取りが決まったところで、話がながれてしまった。

4人で行く予定だったのて

もう一人の彼に予定が変わった連絡をした。

決まっていた予定がずれてしまったことに

彼女のせいではないのだけども、申し訳なく思っていた。

そう感じていた彼女は

折角だから2人でいきますか?

と、連絡していた。

とんとん拍子に話がまとまり、2人で飲みに行くことになった。

彼女は自分で誘っておきながら多少の面倒さを感じていた。

正直、まだよく知らない人と2人で飲みに行って

楽しいのだろうか。

話ははずむのだろうか。

そんな気持ちを胸に残しながら

約束の日の前日にあわてて彼と待ち合わせの時間を決めた。

そろそろ鍋が恋しい季節だった。

彼女たちは鍋が美味しいと評判の店に行くことにした。



2人の話は思ったよりも盛り上がった。

少し厳しい人だと思っていたが

口調も表情も優しさのにじみ出る人だったことに

彼女は楽しくなり慣れない酒も口にした。

彼も新しい酒を頼むたび

ひとくち彼女にわけて楽しんでいた。


1軒目で解散する予定だったが

お互い名残惜しくなり、もう1軒寄ることにした。


彼の口からぽんぽんと飛び出すお洒落なBarの名前に

慣れた感じがすると思いながらも、楽しい気持ちを隠せずにいた。


彼女も大分前に行ったことのある名前が出てきて

久しぶりに行きたくなった。

2人並んで座り、ちらちらと横顔を盗み見る。

また酒をシェアしながら、取りとめのない話が続く。




また次回、行きましょうね。

彼女は自分から誘っていた。





















動けないほどではない

座れないほどでもない

でも、じわじわと腰が痛くて

つらい

鎮痛剤を飲もうかな