読書日記 17.2.11 「督促OL修行日記」
著者 榎本 まみ 文春文庫
アマゾンの紹介文には、
「人見知りで気弱なOLが、年間二千億円の債権を回収するまで
「今度電話してきたらぶっ殺す!」日本一ツラい職場で、ストレスから心身共に衰弱しつつも一念発起、独自に開発した究極のメソッド。」
と書いてある。督促とクレーム対応に苦労した著者の、自分でつかみ取った方法論が書いてある。著者は大変研究熱心でもあるようだ。参考になったところを抜き出しました。
ぜひ読んでください。
1 言質を取る、という方法
「入金の日にちと入金の根拠は絶対にお客さまの口から言ってもらうこと」
「は、はい……」
私がコールセンターに配属されたてで、まだ何もできなかった新人時代。先輩からお客さまに電話した時に「これだけは死んでも聞け!」と言われたのが、この2点だった。
なぜ入金日と入金根拠をお客さまの口から言ってもらうのかというと、万が一入金の約束を破られてしまった時に、お客さまの口から日時を言ってもらっていれば「お客さまがおっしゃるからお待ちしていたのに~」と相手の罪悪感をちょっぴり刺激することができるのだ。
これは督促だけでなく、しょっちゅう遅刻したり仕事の締め切りを守らない相手にも有効だ。待ち合わせ時間や締め切りを相手の口から言ってもらえば、「日時はあなたが決めたんじやないですか~」と相手の罪悪感を刺激できる。
「言質を取る」という言葉がある。質には人質や抵当という意味があるらしい。そう思うとなかなか恐ろしい響きを持つ言葉だけど、約束は相手の口から言わせることで、よりいっそうその責任を重くすることができる。人と約束をする場合は、日時と場所を相手の口から言ってもらうことが重要なのだ。
2 こちらの要求を、ストレートに言わず、質問形式に変形して投げかける、という方法
「お金返して!」と言わずにお金を回収するテクニック
貸した相手に面と向かって「あのお金、返してよ」と言うのは誰だって気が引けるもの。でも督促の仕事でなくても、社会人なら時に相手にお金の催促もするし、仕事の締め切りを守るように言わなきゃいけない時もある。
うーん……、どうしたら相手を怒らせず、気まずい雰囲気にならずにお金を返してほしいって言えるのかなあ、そんなことを考えていたある日のこと、私はたまたま読んでいた論理学の本にこんな一文を見つけた。
「人間の脳は疑問を投げかけられると、無意識にその回答を考えはじめる」
これだ 「お金を返してください」とこちらの要求を押しつけても、相手の反発や怒りを誘う。だったら「入金できる日はいつ?」という質問を投げかけて、脳に回答を考えてもらうようにすれば、罵倒されずにすむかもしれない
「お客さま、いつでしたらご入金いただくことが可能でしょうか?」
督促をする時にこうして質問形式にして切りだすと、相手の脳は「えっと……○月○日に給料が出るから、その翌日だったら大丈夫かな」と考え出す。そして、
「×月△日だったら払えると思うけど……」
と答えてくれる。日にちを聞きだしてしまえば、後はこちらのものだ。
「それでは来週の木曜日にご入金お待ちしています!」と念を押して自動的に入金の約束を取り付けてしまえばいい「お金を返してほしい」とストレートに聞くのは角が立つけど「いつだったら大丈夫ですか?」と日にちを聞けば相手に嫌な思いをさせずにお金を回収することができる。
ただ、お客さまも延滞しているだけあって中にはお金がない人も多い。入金日を聞いても「いつ返せるかわからないなあ」と返してくることもままある。こういう場合は、期日がダメなら金額を聞いてみる。
「じやあ、いくらでしたらお支払いいただけますか?」
そこで返ってきた頷が1000円でも500円でも、とにかく入金してもらう。本当はお金はあるけれど「めんどくさい」とか「支払いたくない」とか思って入金をしないお客さまもたくさんいる。たとえ一部でも入金してもらえれば「この際、残りもきれいにするか」という心理が働くのか、その後の入金率も高まる。
「お金を返して」と言うのではなく「何日に払える?」と尋ねる。日にちがわからないと言われたら「いくらだったら払える?」と質問を変えてみる。これで、相手との雰囲気を悪くすることなく入金の催促をすることができる。
私の友人に仲間内の飲み会の幹事を引き受けてくれる優しい女の子がいる。彼女はいつもお会計を引き受けているのだが、中には酔ってそのままお金を払わずに帰ってしまう人たちがいて、後日「飲み代を払ってほしい」と言い出せず自腹を切ってしまうこともあったそうだ。そこでこの2つの方法を伝えたところ、ずっと楽に連絡できるようになり、今では100%回収しているらしい。
3 いきなり怒鳴られた時に相手に反撃する方法
コールセンターは督促の電話をかけるだけでなく、お客さまからかかってきた電話にも対応している。ある日私のところにもお客さまからの電話か入ってきた。
「オイコラ どうなってんだよ一」
鼓膜が破れるのではないかと思うくらい大きな声で、お客さまの声がヘッドフォンから響いてきた。
怒鳴られたショックで、私の思考回路は一瞬にしてフリーズしてしまう。
(どうにかして怒鳴られたショックで固まるのを防げないだろうか……)
そして色々と試行錯誤をした結果、一番効果的だったのはちょっと驚くぐらいに単純な方法だった。
いきなり怒鳴られてビクッと体が固まってしまったら、その瞬間思いっきリ足をつねる。もしくは足の小指をもう一方の足で踏んづけるなどして、下半身を刺激するのだ。
(痛っ!)と感じると同時に、怒鳴られたショックによる金縛りは解ける。そこからお客さまに反撃することができるのだ。
いやちょっとその方法は……と思われるかもしれないけど、これはずっと怒鳴られて言い返せなかった私を救ってくれた画期的な方法なのだ。直接つねったりしなくても足を踏ん張るだけでもだいぶ違う。
4 足には本当の気分が表れやすい、といこと
動物学者のデズモンドモリス氏曰く、「下肢(つまり足)には本当の気分が表れやすい」らしい。不安な人は足が落ち着かないし、足を広げている人は偉そうな印象になる。
実際、お客さまとの間にクレームを起こしたり、相手に言い負けてしまうオペレーターさんは、足元が落ち着いていないことが多い。オペレーターブースの後ろからオペレーターさんの足を見ていて、足をぶらぶらと浮かせていたり、足を組んだりしているオペレーターさんは、トラブルを起こす確率が高かった。
逆も真なりで、足を整えることで心も整えることが可能なんじやないだろうか。
いきなり怒鳴られてショックで固まってしまったら、グッと足に力を入れて踏ん張ってほしい。そうすることで早く金縛りを解くことができる。そしてお客さまに即座に反撃を開始できるのだ。
