トラネキサム酸について、2回にわたって書いてきた。
メカニズム、臨床データ、そして作用の特異性。
書きながら、ずっと頭の中にある問いがあった。
「これを知ったうえで、自分ならどう処方するか」
成分の研究をしていると、ときどき苦しくなることがある。
効果を示すデータがある。
でも、市場に出ている製品に入っている量は、そのデータが示す範囲をはるかに下回っている。
理由はたいていコストで、あるいは「なんとなく入っていればいい」という慣習だった。
トラネキサム酸も、同じ問いを突きつけてくる成分だった。
臨床試験でしっかりと有効性が確認されている濃度帯は、5〜10%だ。
それなのに、市場にある多くの製品は1〜3%程度の配合にとどまっている。
私が出した答えは、有効性が証明されている範囲の上限、10%だった。
下げる理由が見当たらなかった。
「データが示す濃度で使う」というのが、私の処方の出発点だ。
次に考えたのは、「トラネキサム酸だけでいいか」という問いだ。
トラネキサム酸が主に働くのは、メラニンの「転送」を抑える経路だ。
プラスミンの活性を阻害することで、メラノサイトへの刺激シグナルを断つ。
でも、メラニンが合成される場所には、直接は作用しない。
だとすれば、もう一つの経路が必要になる。
チロシナーゼを阻害して、メラニンの「生成」そのものを抑える成分。
その相棒として選んだのが、α-アルブチンだった。
トラネキサム酸が「刺激の経路」を断つとすれば、α-アルブチンは「合成の経路」を断つ。
二つは同じゴールに向かって、異なる道を歩む。
どちらか一方では届かない場所を、二つで補い合う。
この考えから生まれたのが、「Tranexamic 10 ARB Plus」だ。
名前の中にすべてが入っている。
トラネキサム酸10%、そしてα-アルブチン(ARB)。
「Plus」は、この二つが単なる足し算ではなく、機能的な協働であることを示している。
成分を信じて、データを信じて、作った処方だ。
次回は、この二つが肌の上でどう働くのかを、もう少し丁寧に書いてみようと思う。
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