原っぱをぐるぐると転げ回るのにも飽きて
公園に据え付けられているベンチに座ってジョイントをくわえ
冬のとげとげしい空気と一緒に、ライターの炎をジョイントの先端でつかまえる
服についた乾燥して枯れかけている葉っぱを、手で払いながら煙を吐き出す

ある決められた時間がくるまで決して落ち着く事がないはずの脳の思考を
その煙は一瞬ゆるやかにしてくれる
くすぐったいような、なんてゆうか
落ち着きをもてない皮膚にも温もりがもどってきた

僕は何気なく空を眺めた
空いっぱいに星がちりばめられていて
ぴゅんぴゅんと流れ星が流れる
どこまでが幻覚か全くわからない
宇宙大戦争でもはじまりそうな星空がそこには広がっている
ミサイルがとびかってるようにも見えるし
UFOが凄いスピードで飛び回ってるようにも見える
視線をおろして街に目を向けると、やっぱりUFOがとびまわってる

僕はなんだかぞわぞわしてつぶやくんだ
「…うさんくさいな、まったく」

凄い…なんて口にだして言ったらその世界観にとりこまれそうになる
それ位すさまじくてうさんくさい景観

山の中腹、丘になった公園のベンチでひとり
街を見下ろせばUFOが街を飛び回って
空を見上げれば満天の星空の中で宇宙大戦争がおこってる
地球という星も宇宙銀河系のひとつで
いつ後ろからレーザー銃をもった宇宙人が襲ってくるかわからない

僕はそんな世界でベンチに横になる、そして

「そうなんだ、そうなんだ…まったく…」

なんて、ひとり呟いて新しいジョイントに火をつける
そして目をとじ、落ち着かない体をめいいっぱい小さくする
太陽が昇るのを、もしくはある時間がくるのをじっと待つんだ
宇宙の地球という星で。

そう、それは冬の山道だったんだ

ジーンズの下にはニットのタイツをはいていたし
セーターの上に軍ものの厚手のジャケットも着ていたけど
突き刺すような風はふせげなかったし
歯をガチガチならせながら僕はカブにのって山道を駆っていた

なぜ?なんていわれても答えようがないし
ただなんとなく気のむくままに
それはある種の支配下におかれた脳の行動様式を完全に再現してるんだ

「そうなんだ。そうなんだ。」

何かに同意しながら僕は山の中腹にある公園にはいっていく

深夜の駐車場はチェーンが張ってあって入れないから
チェーンの前にカブを置いて
震えながらチェーンをまたいで中にはいっていく

そこの公園は丘のようになっていて、とにかくだだっぴろい
公園で一番の高台にたって景色を見おろす
海とそれに沿うように街のあかりがみえて
とても見晴らしのよい眺めだ
月明かりに照らされて夜の闇も少しずつ薄くなっていく

僕は自販機で買ったあたたかいミルクティーを開けて少し口にふくませる
その瞬間目の前でフラッシュがたかれたように感じられた

街のあかりがゆっくりと点滅しだして
月明かりに照らされた海もキラキラと輝きだす

僕はもう一度ミルクティーを口にあて
今度は目を閉じてぐいっと飲み込んでみる
瞼の裏では極彩色の幾何学模様がいっそう光度をあげて動き回る
あたたかい液体が喉を通り熱として体中に運ばれて行く感覚を鋭敏にとらえながら
ゆっくりと瞼をあける

僕は言葉を失ってしまった

街のあかりがビュンビュンと動きまわっている
まるでUFOが街の中をとびまわってるかのように
いや実際にそうかもしれないが

「これじゃカブに乗れないや…」

なんて、ありえない幻覚をみながらも
自分でも驚く程冷静な言葉が、口をついてでてきて
僕はとても馬鹿げた気持ちになってきてしまって
気持ち良さそうな原っぱに飛び込んでグルグルと転げまわった

夜の闇は都会のそれとは違い灰色がかった黒ではなく
純度がものすごく高い濃紺

田舎の山道をしびれたような頭をふりながら、濃紺な闇の中をヘッドライトもつけず
ノーヘルでカブを駆る

向かい風はまるでゲル状で肌にちょっとした抵抗をもってまとわりつく
濃紺の闇の視界には透明度の高いレイヤーをかけたように
蛍光色の幾何学模様が浮かんでくる

脳にもろに直撃してきたリゼルグ酸ジエチルアミド
一時間程前に飲み込んだペーパー

「まったく…」と僕は呟く

何が「まったく…」なのか
それこそ全くわかっていない
混乱する脳がそう呟くよう指示したんだ
僕の一つの体の中で、脳の意思と自分の意志は別のように感じられる
もしくは脳:自分+リゼルグ酸ジエチルアミドに二分割された自我
そう考えてもいい

「まるで母親みたいな脳みそだな…」
混乱する脳を軽く整理してちょっと唇を歪めながら僕は呟く
今度は自分の意思だ

16歳のバキバキな僕とまるで母親みたいな脳みその対立やら
ゲル状の風に蛍光色の幾何学模様に包まれながら山道を駆ける、
夢のような質感の現実やら
いっさいがっさい不安定な自分の問題であるんだろう

エネルギーに満ち溢れた僕の青春は
そこらへんにいる突っ張った兄ちゃんと何らかわりはなかったけど
日常に起きる色々な出来事が、微妙な…
ほんと微妙なずれをともなって僕をスポイルするんだ

嘘も真実もなく…あるのは虚像に犯された現実だけ
ただそんな中を生きてきたんだ。