ぐり屋の色の世界 特別編 | ぐり屋のブログ

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ネットショップ「ぐり屋」の店主によるブログです。
切り絵制作の裏側や、日々の雑多な物事について綴ります。

前回の投稿の後、しばらく別の作業を

していたところ、ある色和紙が目に

止まりました。

 

18. あか色

「あか色」です。うっかりしていました。

短冊 色見本の⑫に対応しています。

 

 もっとも、文字通り、見たままの赤色

ですから、特別な説明は不要ではないか、

と一瞬思ったものですが、この色には

ちょっとした思い出があります。

 

なので今回は、

あか色にまつわる思い出話を一つ。

 

   ◆◆◆

 

私が以前勤めていた職場は、和紙工房

でした。昔ながらの製法で、紙漉きの

職人さんが、1枚1枚手で和紙を漉いて

います。

 

私がその職場にいたのは、わずか1年と

少しの間でしたが、その間にも様々な

種類、様々な色の和紙に出会いました。

 

その中でも、印象に残っているものの

1つに「赤色」があります。

 

紙漉きの作業場では、その時々の注文に

応じて、様々な種類の和紙を漉きます。

菊版の染め紙をはじめ、和紙のハガキや

名刺、賞状用紙もありました。染め紙の

色も、赤や黄色、青や緑と、多種多様

です。

 

たまたま、ある時期に赤色の和紙を頻繁に

見る機会があり、不思議に思って紙漉きの

職人さんにお聞きしたことがありました。

 

「この前も、赤色の紙を漉かれていません

でしたか」と。

確か、以前に見た赤色の和紙は、数日前に

必要枚数分を漉き終わられているはず、と

思いながら。

 

「あぁ、あれはね······」と、その職人さん

が教えてくださいました。

「同じ赤色に見えるよね。でも、前のは

『緋色』。今のは、『紅色』なんだよ。」

 

どうやら、一口に「赤色」といっても、

2種類の赤色があったようなのです。

 

別の機会に、その2つの赤色を比較して

見ることができました。

 

どちらの赤色も、「真っ赤」というに

ふさわしいくらい、強い赤色です。

 

しかし、2つを並べてみると、なるほど

違う感じがするのです。「緋色」の赤は

明るく、少し黄色みを帯びて見えます。

一方で「紅色」の赤は、もっと重く、

暗い色に見えます。

 

「同じ赤色なのに、違う色だ!!」

この職場に入って、まだ日の浅かった

当時の私は、新しい発見に、ある種の

感動を覚えたものです。

 

ちなみに、赤色の和紙を漉いている時の

作業場は、染料の赤色がコンクリート床に

流れ出て、まるで「何らかの事件が発生

した現場」のようになります。

 

 この光景を見慣れない人が作業場に入ると

思わず「ぎょっ」とされるかもしれません。

 

   ◆◆◆

 

なお、冒頭の色和紙の写真は、「緋色」の

方の赤色です。写真の撮り方が上手くない

せいか、実物よりも暗めに写っています。

 

「あか色」のお話は、これで終わりです。

これからしばらくの間、更新が不定期に

なります。