世界で最も有名な名探偵シャーロック・ホームズとそのパートナーであるジョン・H・ワトスンは本当はどんな関係だったのでしょう。
映画にドラマに映像化を盛んにされてきたホームズシリーズですがここ最近の映像化では彼らの関係をブロマンス的に描くものが多いようです。
ホームズとワトスンの関係はしばしばシャーロキアン達の間でもどう定義するべきか議論になり、膨大な数のパスティーシュの中には彼らが恋愛感情をお互いに抱いている設定の作品もあり解釈の多様さを感じます。
私は正典(Canon。作者コナン・ドイルのアナグラム)の二人の関係の描写に優る物はないと個人的には思っています。
人を愛したことはないと言いながら物語の端々でワトスンを深く信頼し時に依存している事が分かるホームズと、ホームズを何よりも尊敬し時に無茶をいさめつつ彼の為なら努力も尽力も惜しまないワトスン、彼らの絶妙な距離感は文章の間から香り立つ様な色気があります。二人が腕を組んでロンドンの街を散歩したり、一緒に朝食を取りながら新聞を読むなど差し挟まれる日常描写もとても可愛いです。
また彼らの関係を同性愛で括るのが無粋という意見も否定はできません。それはワトスンは既婚者であったしホームズもアイリーンの写真を持っているからという理由ではなく曖昧にしておいた方が面白いからです。
恋愛関係ではないのにホームズは妻を亡くしたワトスンの診療所を裏から手を回して買い取らせ再び同居しますし、ワトスンはホームズと共に悪人相手とは言え犯罪行為に手を染める事を躊躇いません(犯人は二人などなど)。
彼らの間にある感情が恋愛ならこれらの行為の動機も説明出来なくはないですが、少なくとも正典の文章からそれは読み取れません。そこが萌えるのです。分かるのは深い信頼と友情があることだけです。しかし果たしてこれらの行為を友情だけで出来るものでしょうか。
彼らの関係性の謎も含めてホームズシリーズは魅力的です。