今に生きるユダヤ人を知る | 52歳で実践アーリーリタイア

52歳で実践アーリーリタイア

52歳で早期退職し、自分の興味あることについて、過去に考えたことを現代に振り返って検証し、今思ったことを未来で検証するため、ここに書き留めています。

個人的にユダヤ人で尊敬する人は、哲学者のエトムント・フッサールと、進化心理学者スティーブン・ピンカーですが、ご存知のようにユダヤ人は、数多くの学者・実業家・芸術家を輩出しています。

▪️ユダヤの有名人

⑴学者

多すぎるので、人間社会に大きな影響を与えた人物のみを何人かリストアップ。結果的に啓蒙主義を促進した人ばかり=同時代人ばかりになってしまいました。

 

化学肥料の発明フリッツ・ハーバー(1868ー1934:後にキリスト教に改宗)

人工的に窒素をアンモニアとして固定できる手法、ハーバー・ボッシュ法を発明。これにより化学肥料が誕生。人類誕生以来、化学肥料の活用によって農業にかかわる人が激減する(社会構造革命)とともに、飢餓を極小化した究極の発明者と言っても過言ではないくらい。

 

血液型の発見カールラント・シュタイナー(1868ー1963)

血液型の発見によって輸血が可能になり、結果として10億人の命を救った病理学者。

 

相対性理論の発見アルベルト・アインシュタイン(1879−1955)

説明不要の理論物理学者ですね。彼の発見が原子力の開発につながるので、その有名ぶりどおり、世界的にも大きな影響を与えた人物。

 

社会主義・共産主義の発明者カール・マルクス(1818ー1883)

エンゲルスとともに、社会主義・共産主義を提唱した哲学者・経済学者。今の政治体制を見ても、いまだその影響力は絶大。

⑵実業家

ロスチャイルド家

アシュケナジ系ユダヤ人で、金融系を生業とする一族で地球上でもっとも裕福かつ有力な一族と言われる。イギリスはロスチャイルド家の資産を頼りたいがためにバルフォア宣言(1917年)をし、パレスチナにユダヤ人国家建設を了解したと言われており、ロスチャイルド家がなければ今のイスラエルはなかった可能性が高いのでは、と思われます。

 

その他、GAFAMの創業者、ビル・ゲイツ(Microsoft)、マーク・ザッカーバーグ(meta)ラリー・ペイジ(Google)、スターバックス創業者のハワード・シュルツにマクドナル創業者のレイ・クロック、ネットフリックス創業者マーク・ランドロフなどなど多数。

 

80億人の世界人口のうち、諸説あるものの1500万人しかいないユダヤ人(世界人口の0.2%!!)が今の私たちの生活に影響を与えているその度合いは驚異的です。

⑶芸術家

マルク・シャガール(1887ー1985)

シャガールの絵には、故郷のベラルーシのユダヤ人集落(シュテットル)が、印象的な形で絵に描かれています。また7本指の絵もよく描かれますが、これは「7本の指を使えば、すべてうまくいく」というユダヤの慣用句を象徴したもの。

 

(ニューヨークMOMAのシャガール:2015年撮影)

 

アメデオ・モディリアーニ(1884−1920)

ユダヤ人の有名人は、ほとんどがアシュケナジ系ですが、彼は珍しくセファルディ系。イタリアからパリに居を移し、シャガールとも交流があったとか。耽楽的な生活を送っていたがために早死。

▪️ユダヤ人はどこに住んでいるのか?

諸説あるものの、ユダヤ人は世界中に約1500万人ぐらいいて、イスラエルとアメリカで大半(全体の90%以上)を占めます。アシュケナジ系ユダヤ人はもともとは、中東欧(特にポーランド)からロシアにかけて多く住んでいたのですが、ポグロムやホロコースト、そして最後のトドメのソ連崩壊によって、多くがイスラエルやアメリカに移住したのです。

 

セファルディ系は、1492年にスペインから追放されて以降、地中海沿岸の旧オスマン帝国領に多く住んでいたはずですが、この辺りもほとんどがイスラエルやアメリカの移住してしまったのでしょう。

 

やはり、ユダヤ人にとって自分たちの国イスラエルと、自由の国アメリカに勝る住み心地の良い国はないのかもしれません。

 

*イスラエル687万人、アメリカ600万人、フランス45万人、カナダ40万人、イギリス29万人・・・

 

都市別にみると、以下の通り、テルアビブとニューヨークに多い。

*イスラエル国内:テルアビブ390万人、エルサレム99万人、ハイファ71万人

*イスラエル国外:ニューヨーク210万人、ロスアンジェルス62万人、マイアミ54万人

 

(ニューヨークのスターバックス:2015年撮影)

▪️ユダヤ人(ユダヤ教)の習慣

ユダヤ教では、独特の習慣があってこれらを守るためにユダヤ人は固まって生きていかないといけないし異教徒とも家族になれない。だからこそ、迫害されるし、差別されやすい。つまりある意味多様性を拒否する不寛容な社会ともいえます。

 

とはいえ、マイノリティーゆえもあって異教徒を迫害する歴史は持たず、とにかく私たちは自分たちで自活するんだからそっとしておいてくれ、という一方、土地を持てなかったので異教徒との交易によって稼ぐ必要もあり、なかなか辛い環境ではあったのです。

 

パレスチナ入植という国際法違反は、彼らの歴史においては超レアな悪事で、苦々しく思っているユダヤ人も多いように想像します。

 

逆にアメリカなどの自由な社会では生きやすいとも言える。固まって生活していても異教徒(特にキリスト教徒)から文句言われませんから。

 

不寛容な社会は自分たちが支配者になるか(=イスラエル)、寛容な社会(=民主主義国家&イスラーム帝国)でしか生きられない人たちなのです。

⑴カシュルート

イスラームと同じようにハラールに相当する食に関する制限「カシュルート」という規則があります。実際には厳格に守る人とほとんど無視している人と、ユダヤ人でも相当に濃淡があるらしい。私の知る限り、どんなイスラーム教徒でも絶対拒否の豚肉さえ、豚骨ラーメンを平気で食べるユダヤ人もいるとのこと。

 

イスラームのハラール同様、ユダヤ教にも「コシェル」という認定制度があって、ユダヤ人の多い街のスーパーでは、コシェルコーナーも設けられているそう。

 

それではカシュルートにはどんな制限があるのでしょう。

①踵が分かれていて反芻する動物は食べてよい

 つまり、ブタ、ウサギ、ラクダ、ウマ、イヌは食べられない(牛、羊、鳥を食べる)。

 

②ヒレとウロコのあるものは食べてよい

 つまり、エビ、カニ、貝、イカ、タコ、うなぎは食べられない。日本食にとっては結構きつい制限ですね。

 

③猛禽類など、一部の鳥は食べてはならない

④ユダヤ教の規則に従って屠殺する

⑤自然死したものは食べてはいけない

肉と乳製品を一緒に調理してはならない(パルヴェ)

 正確には「肉と乳製品が一緒に胃の中にあってはならない」という規則。ユダヤ人と付き合う場合にはチーズバーガーだとか、牛肉のバター焼きとかがダメで、しかも一緒に食べなくても、その食事の前後に乳製品と肉類の掛け合わせがあってはダメなのです。

 

これらを守るのは大変なので、ユダヤ人の台所にはキッチンを二つ作って肉と乳製品を分けて調理・皿洗いする場合もあったり、肉類の制限が面倒なので、ベジタリアンになってしまう人も多いらしい。

 

でもこうやってみると、ラビ・ユダヤ教が生まれた時代(2000年前)においては、コシュートを守ることでお腹を壊しやすい甲殻類や腐った肉を食べないようにしたり、人間の食生活や生活に益をもたらさない動物(牛、羊、鳥)は食べてよく、人間の生活に益をもたらす動物(ウマ、イヌ)や人間の食と被る動物(豚)は食べてはいけない、というように、それなりの理由があったように思えてしまいます。

 

だとすれば恐れ多くも、食制限に関する「神の意志」の目的は、おそらく人間の安全な生活を維持することなわけだから、現代においては、コシュート(イスラームのハラールも同じ)は、すでに意味を成さず、廃止してもいいように思いますがどうなんでしょう。

 

ただし教義的には、全知全能である神の意志に理由を求めてはいけない(=言われたことをそのまま守る)と思うので、多分ダメなんでしょうが。

⑵シャバット(安息日)

安息日というと、ロックバンドのブラック・サバス(Black Sabatth=黒い安息日)を思い出してしまうのですが、英語でサバスだから、ヘブライ語だとシャバット。

 

毎週金曜の空に星が三つ見えてから始まり、土曜の夕方の空に星が三つ見えたら終わるのが安息日シャバット。

 

神が世界を創造して7日目に休んだので、7日目は神も休んだんだから人間も休むべき、とし、私たち人間も日々の仕事から離れて家族と会話し、シナゴーグに行ってユダヤコミュニティ内で交流し、ゆっくり体を休ませましょう、ということ。

 

安息日は、労働にあたることが禁止で、仕事、火を使った調理、電気のスイッチのオン・オフ、パソコン入力・手書き、お金を払う、スマホいじりなどはすべて禁止。

 

これも、恐れ多くも勝手に無心論者が神の趣旨を想像すると、神は人間が社会的動物であるように創造したので、1週間に1回は必ず対面コミュニケーションの時間をとることで、で人間を人間たらしめよう、としたのかもしれません。

⑶歳時記(ユダヤ暦)

ユダヤ教の歳時記も独特です。お正月は秋に始まる太陰太陽暦。この暦にしたがって歳時記が組まれます。

日本の場合は明治の近代化で暦を西洋標準のグレゴリオ暦に変えてしまったため、本来の日本の歳時記と実際の歳時記とがずれてしまって、大失敗だと私は思っているのですが、この辺りユダヤ人はちゃんと、守っているのです。特に日本の場合は四季がはっきりしていて俳句などにも必ず季語があったりするわけで「暦って文化そのもの」であって日本人は大切な文化を明治時代に喪失してしまったのです。

キリスト教のクリスマスの時期には「ハヌカ(光の祭)」というイベントがあります。友達や家族と集まって8本のキャンドルに8日間にわたって毎晩1本ずつ火を灯すとか、お金の形をしたチョコを子供たちに配るとか、ドーナツなどの油菓子を食べるなど。

 

ユダヤ教に関する歴史の本を読むと、よく出てくるのが「過越しの祭」。ユダヤ人の「出エジプト」を祝う祭で、エジプトで奴隷状態にあったユダヤ人が解放されることを祝ったわけですが、この祭の時に酵母菌を使わないパン=マッツアーを食べます。

 

12世紀以降、十字軍編成がきっかけで反ユダヤ感情がキリスト教徒庶民の間に生まれると、それまでキリスト教社会の中で平穏に暮らしていたユダヤ人の社会に対し、キリスト教徒から彼らに対しての迫害が始まります。

 

彼らが迫害をするそのきっかけをつくるのに利用されたのがこの「過越しの祭り」。

 

過越しの祭でマッツアーを作る際に、キリスト教徒の血、特にキリスト教徒の子どもの血を混ぜているのではないかという疑いをかけ、彼らを追放・殺害する理由に。まったくの言いがかりですが何らかの理由がないと迫害するにもしにくくなるでしょうから、誰かが勝手にでっち上げたのでしょう。

 

なので過越しの祭は、ユダヤ人にとってお祝いの祭りでもある一方、辛い記憶が蘇ってくるお祭りであったかもしれません。

ユダヤ人が、殺されたキリスト教徒の子供の血を過ぎ越しの祭りに食べるマッツオー(種無しパン)に使っていると広く信じられるようになってからは虐殺はさらに広範囲に及ぶようになった。

レイモンド・シェイドリン著『物語ユダヤ人の歴史』118頁

▪️今に生きるユダヤ人もアシュケナジ系とセファルディ系で大きく異なる

ユダヤ人の大きな2系統、アシュケナジ系とセファルディ系は今でも文化や性格に大きな違いがあるといいます。

 

今のユダヤ人に「先祖が何語を話していたか」聞くとおおよそ、アシュケナジ系かセファルディ系か、わかるらしい。イディッシュ語(アシュケナジ系独自の言語)やドイツ語だったらアシュケナジ系だし、ユダヤ・スペイン語やアラビア語だったらセファルディ系ということなんでしょう。

 

歴史的にアシュケナジ系について、シチリアや南イタリアに住んでいたユダヤ人が、8−9世紀にフランク族の王様シャルルマーニュとその息子の要請でプロバンスやライン地方に移住。彼らがアシュケナジ系の起源ですが、その後ヨーロッパ東方にその住処は拡散し、当地のキリスト教社会の文化に強く影響された結果、彼ら独自の文化・言語(イディッシュ語)が生まれました。

 

一方、セファルディ系はイスラーム帝国下で主にイベリア半島に住んでいた人が起源。レコンキスタでスペイン領となった後も、「マネジメント能力が高い」「アラビア語はじめとした多言語が話せる」「アラブの最先端文明を知っている(自然科学や技術など)」等の理由からスペイン支配層にも重宝されていたのですが、キリスト教の原理主義化でついに1492年にスペインから追放されてしまいます。

 

その後、セファルディの多くは旧スペイン領のオランダの他、歴史的に異教徒に寛容なイスラーム文化圏(=当時はオスマン帝国)に戻り、オスマン帝国においても商業・官僚などの重要なポジションでその地位を獲得していくのです。

 

さてそんな彼らですが、このような歴史的背景を見れば分かるとおり、今に生きるアシュケナジ系は西洋的・ゲルマン的で、セファルディはイスラーム的・ラテン的な文化。

 

料理もアシュケナジ系は、ジャガイモが重要な食材だし、セファルディ系はオリーブはじめ、ナスと魚(うろこのある)が重要な食材。

 

性格的にはアシュケナジ系は主張強く名誉欲強く上昇志向なので有名人も多い。一方のセファルディ系は、アシュケナジ系よりもマイノリティなこともあって大人しく融和的な人が多いとのこと。

 

 

以上、こうやって整理してみるとユダヤ人は相当に興味深い人たちです。その思想の中核を深掘りすべく、これからはユダヤ教に焦点を当てて、まずは旧約聖書に取り組んでみようと思っています。