昨日は敬老の日。
 皆さんの中にも、お孫さんやお子さんたちからプレゼントをいただいたり何かしてもらったりといった方もいらっしゃるでしょうね。
 さて今回は、老人への入り口でもある『定年退職』に因んだ小話を一題。



 定年、最後の日

 今日、ちょうど定年退職をむかえた初老の男がひとり、駅前の立ち食いそば屋で一杯のそばを食べている。

 エビの天ぷらが一尾のっかった一杯500円のそばだ。

 男は長年、毎日昼休みにはこの店に通っているが、一度も店員とは話したことがない。

 当然、話す理由なども特にないのだが、今日男は自然に自分と同年齢であろう店主に話しかけていた。

 「おやじ、今日俺、退職するんだ。・・・」

 「へぇ・・・。そうかい。」

 会話はそれで途切れた。

 ほかに特に話題があるわけでもない。

 男の退職は、今日が店を訪れる最後の日であることを表していた。

 すると突然、男のどんぶりの上にエビの天ぷらがもう一尾乗せられた。

 「おやじ、いいのか。」

 「なーに、気にすんなって」

 男は泣きながらそばをたいらげた。

 些細な人の暖かみにふれただけだが涙が止まらなくなったのだ。

 男は退職してからも、この店に通おうと心に決めた。

 男は財布から500円玉を取り出して、

 「おやじ、お勘定」

 「へい800円」

 

 先細る年金受給金額、受給年齢の高齢化、医療・介護保険負担の増額、云々。
 この小話は「世の中そんなに甘くはないよ」というオヤジからのメッセージとも取れなくはありませんね。