ヘンタイよっちゃんのブログ -209ページ目

ある少女

あれは今から10年も前のことだったと思う。

年間に一度位しか使用しない製品を取引先の会社に預けて

おり、使用する度に取りに行っていた。


会社のあるY市から千葉県のM市までは相当の距離が有り、

半日いや、一日掛かりで取りに行ったものだ。

10年前の真夏のその日、後輩の若手社員と共に大きい車で

高速を乗り継いで現地に向かった。 むろん近くの都合の良

い場所まで高速が通っているはずも無く、インターを降りてか

ら一般道の長い道のりを走る事になる。


高速を降りて一般道に入ってから30分も経たない内に昼食

の時間を過ぎている事に気付き、大きい車を停められる所を

探しながらM市に向かっていた。 12時30分を回っていたと

思う、その時間に大きい車が停められるラーメン屋を見つけ

て車を寄せた。



L字型の赤いカウンターと4人掛けのテーブル席が数席有る

そのラーメン屋は昼時も相まって混雑していた。

丁度出て行ったお客さんと入れ替わりに後輩とカウンターの

席に座れた我々は、それぞれ注文をした。 大食いでは無い

後輩が僕の真似をして大盛りのラーメンを注文していて、『無

理だろ。 無茶だろ』 と思っていたら、案の定大分残してギブ

アップしていた。



カウンターに座ってから気になっていたのだが、

ひたすらラーメンを作って提供するご主人と、その奥の洗い

場でさらにひたすらに洗い物を続ける少女が居た。


その少女はやせ形で真っ黒に日焼けをした小学3年から4年

生と思われた。 長い髪を後ろで縛り、何も言わずにただひ

たすらに洗い物を続けている。 僕はラーメンを食べながら

その少女の健気な姿に感心し、ずっと様子を見ていたのだ

った。


調理をしているお父さんに何かをいう訳でも無く、だたひたす

らに過ぎ去ったお客さんの器や皿を懸命に洗っている。

夏休みの最中、昼の暑い時に、友達は皆遊んでいるだろう

時にひたすらに洗い物を続ける少女に僕は感動してしまっ

たのだ。


これで、お父さんに何か言ったり、お客さんに大人びた口でも

聞こうものなら冷めてしまったと思うが、少女は違った。

健気な美しい姿にすっかり感動してしまった僕は会計を済ま

せると店の外の自販機でファンタグレープを買ってお父さんに、

「これ、あの女の子にあげて下さい」 と言って渡したのだった。

お父さんは笑みを浮かべて頷いて僕たちを見送ってくれた。


それ以来あの店には行っていないが、もう20才近くになって

いると思われる女の子はどうしているだろうか。 

幸せになってくれているといいのだが。

お店は今もあるのだろうか。

暑い夏が来ると思い出す少し淡い思い出なのだった。