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油屋の側の空き地に咲く
一本の紅葉の木が
今年も赤く萌えた。

紅葉はいつも突然とやってくる。

日本に戻り実に季節の変わりゆく様が
皮膚にちゃんとじんと伝わってくる。

自分が育った地での季節感は
無意識のうちにちゃんと
人間として潤いを求めるが如く
皮膚が感じキャッチしている。


ギリシャでは
秋は数日といっても過言ではない程短い。

朝市で柘榴が並び始め
菊の赤茶の色がプンプンと
凉香を漂わせたら夜肌寒くなり、
陽が一気に短くなる。

近所に咲くアーモンドの濃赤の葉に
ふっと日本の紅葉を思い浮かべ
少し立ち止まっていると
朝の光の中に確かに冬の匂いが漂う。

そして林檎の値段が安くなる。

冬である。

色気よりもどこか大胆な行為を
ひしと感じる季節の変わりいく
様である。

今、日本で感じる季節感は
嬉しいというよりも
愛でる自分の日々刻み行く
憂いという年輪のように
思える。


心が潤うのである。


いろんな事があり
いろんな事をちゃんと
整理できないまま
日々が流れている
 
そんな中で
このままではいけない
という焦りを
一服の季節の小さな変化が
ひっそりと咲く光景に
本当に静かに太い生命力を
頂く。

時間はながれている。

見えるものはその流れの一片に
過ぎない。

ほんとうに大事なのは
流れ続けることであり
深き流れは見えない。

ということであろうと
また自分の思いをたくましく
燃やしている。

紅葉の赤き葉も、
柿の実も
今は土に帰り
日々寒さ増す中
冬が年の瀬に
迫りつつある。

芽吹きの準備なのであろう。

全ての生命の時である。