ささやかな事である。

始まりはとても突然に、
こっそりとやって来た。

人生は長い。
人生は速い。

だが
始まりはとても静かだった。

初めてこの地に舞い降りた日、
初めて古代の人間の存在を切実に感じた。

生まれる前の時間などかつて
振り替り感じる事などなかった。

自分の知らない人達の
堅い息吹きを目前にして
途方に暮れた。

何をどうすれば確かに
流れた彼らの時間をもっと
身近に感じ得られるのか?
堪らなく知りたかった。

今は存在しない彼らと
話したくて逢いたくて
たまらなくなった。

写真など無力な手段だと思いつつ
カメラを必死に振り回していた。

ピンとはった厳しい空気の中、
夢中で写真を撮り続けているうちに
なんだか自分が何でも出来る気がしてきた。


神秘なる古代人の見た夢が
でっかく目の前に形としてある。

なぜだか
カメラのなかにとてつもなく
大きな心があると思えた。


あれから

人生が短く太いものになった。






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