GW前に、起業家仲間のマサさんに電話した。
仲間と言ってもマサさんのほうはずっと同業の部長を務めておられた方で、
大先輩でもあるのです。

「会社にも印鑑証明書ってあるんですか?」
いつもながら、間抜けな調子で僕は聞く。

「うん、あるよ」久しぶりに電話して薮から棒な質問にもかかわらず、親切に答えてくれるマサさん。
「印鑑カードを持って法務局に行けばすぐにもらえるよ」

なるほど、法務局だったか。。
僕はそそくさと電話を切ってググろうかと思ったが、ふと、気付いて、話を繋げた。

「このPHS、解約することになると思うんです」
「そうなんですか。。」特に何でもないような調子で答えるマサさん。
「また、連絡先教えて頂いたら。。」

起業して間もない頃に、自社の経理担当者と連絡をとるため、
そして、何人かの起業家仲間も巻き添えにして、みんなで契約したのだ。
そのころ通話定額なのはウィルコムだけだった。

マサさんは、僕の巻き添えになった訳ではなく、偶然、以前からPHS派だったので、
「定額になって良かったですね」などと言いあっていたりもした。

結局、通話専用の携帯をもう一台持ち歩くのが面倒だったのか、
誰もPHSを持って出ないという状況になってしまって、そして、ここへきて、
家族割やビジネス割などでケータイキャリアも定額通話を始めたのがとどめとなってしまった。

なんでもそうだが、契約するのは簡単にできるのに、解約するのは煩雑な手続きが必要となる。

今回、僕に課されたのが、印鑑証明書を提出することだった。
これがないと解約できないという。。契約のときに不要だったものが解約時に必要になるということに
不条理を感じながらも、早く固定費を削減したいという思いで、波風立てず従うことにした。

しかし。。印鑑カードなるものがない!
どこにも見当たらない。

僕は、登記の時に参考にした『』や、
これから起業しようという友人のダイスケさんに紹介してもらった『』のページを貪り、
必死で印鑑証明書について調べた。

大体、印鑑登録自体をしたかどうかも怪しかった。

「うーん、仕方がない。ウィルコムと喧嘩して何とか解約させてやろうか。。」などと、
ダメダメなことを考え始めたとき、

「あっ! 見つけた!」

資料の山の中に、印鑑カードを見つけたのだ。

しかし、もうGWは終わり、
また、マグロ漁船が出港してしまう。

ウェブを調べてみると、どうやら、郵送でもいいらしい。。ん?
「インターネットでも送付依頼できます」???

「なーんだ」

しかし、法務局の奇々怪々な文章は何やら意味深なことを言っている。

電子証明書???

「取得します」

「。。。7万。。。!?」

冗談じゃない!
なんで印鑑証明書もらうだけで7万も払うんだよ!

こんなものは7万が7円のように感じるような大企業が使うものだ。そうに違いない。。

登記事項証明書のほうはそんなもの必要ないらしい。
そもそも、誰でも手に入れられるものらしい。

手数料は1通1000円(履歴事項全部証明書)。

印鑑証明書の場合は1通500円。

しかし、まあ、今まで印鑑証明書もなしによく会社経営がやってこれたものだ。
というかやってない。。

ちょっと気合い入れるか!
まずは部屋の掃除だな。。休み中なにやってたんだ??


P.S

 印鑑証明書は管轄の法務局でなくても貰えるらしい。
 これで、マグロ漁船に乗りながら、経営ができる。
 固定費削減♪

 ウィルコムカウンターも近くでOKだと思う。。
 データ通信カードだけは残しておこうかな。。ドコモはHi-Speedなら
 スカイプできないらしいし。。

2007年7月14日(土)

 あと2ヶ月で創業2周年を迎える週末の午後3時。
 まだ、梅雨は明けていないのか最近雨が多い。

 今日もさっきまで雨が降っていて、今、遠くで雷鳴が響いた。
 きっとまた降りだすに違いない。ほんのひと時の晴れ間、僕は天満橋を渡っていた。

 僕はこの橋がなぜか好きだ。

 大学を中退して初めて働いたのもこの近くだったせいだろうか。
 1日17時間、土曜日は休みだが日曜の夕方からまた出勤する。
 
 高校のころから付き合っていた彼女がかわいそうだと周りにも言われたし自分でもそう思った。

 4年間会社勤めをし、6年間個人事業を続けて、株式会社を創設することになった。
 むろん、この間には数え切れない困難の数々があったわけだが、なぜか今はそのことを語りたい気分ではない。

 最初に断っておかなければならないが、僕は世間一般にイメージされる社長とは違う。平日は毎日出勤し残業して夜遅くに帰ってくる。駐車場代が払えないのでクルマは手放した。といっても元々、親から貰った小型車だ。

◆ ◆ ◆

 資本金300万円。常勤の社員は僕を含めて3名。まだ会社法施行前だったから、役員には両親と妹が名を連ねている。経済産業省の特例ですでに1円から株式会社が設立できる時期だった。

 当初はインターネットを使ったビジネスを考えていて面白そうなアイデアはたくさんあった。
 その中のいくつかを実際にやってみた。

 しかし、何をやっても成功しない。最初の1年はあっという間に過ぎた。
 そして、資本金も食いつぶし社員は諸々の理由もあったのだが結局、僕一人となってしまった。

 今、思えば、そのときの僕に足りなかったのはアイデアでも技術力でもなく、経営力だった。
 経営力といっても高度なものではない。そのときの僕は会社というものについてあまりに無知だったのだと思う。

◆ ◆ ◆

 高校生のころバレーボール部の友人のなかに、成績はすごく良いのに父親がどうしても就職しろというのでそうしたという奴がいた。

 (これから何度か登場しそうなので名前をつけておこう)
 ヤマモトという名の痩せた青白い顔の男だ。僕より少し背が高い。

 「手に職をつけろ!」というのが彼の父親の口癖だった。

 それにしても板金屋に就職するなんて。。。それも、関空のエアコンのエアダクトの歪に曲がったところだけ作るとかいう変わった会社だ。

 ヤマモトは残業が200時間とか手取りがいくらとか当時学生だった僕には分からないことをよく話していた。

◆ ◆ ◆

 結局、僕も大学は中退して働くことになり、選んだ道がプログラマだった。
 それからもう十数年経ち、今は自分で会社を起こして3期目、丸2年になろうとしている。

 何かの本でゴーイングコンサーンという言葉を知った。

 つまり、会社というのは続けることが大事なのであり、うまく続いていくように工夫し努力するのが社長の仕事ということである。僕は真正直にその言葉を受け入れて資本金が尽きても何とか続けていくための方法を考えた。

 これは僕だけが勝手に名付けて使っている言葉だが、「マグロ漁船に乗る」という仕事がある。

◆ ◆ ◆

 西梅田で働いていたときのこと。

 帰り道でデモ隊に遭遇した。これは正式にはデモというのかどうか分からないが、拡声器で何かを訴えていたのでそんなようなものだろうと思っている。警察が周りを囲み交通誘導もしていたので、危険な感じなど皆無だった。

 ただ、その訴えている内容がいまいちよく分からない。

 「パート労働者にも出産一時金を!」(これはなんとなく分かる)

 「派遣社員の二重派遣禁止!」(ん? と思う)

 「偽装請負の禁止!」(え!? と驚く)

 後になって調べてみて分かってきたのだが、これは、ある「女性を大事にする政党」によるものだったらしく、つまりは女性の労働環境を良くして欲しいという訴えだったのだ。

 しかし、これは困ったことに僕の仕事がやり難くなる。

 二重派遣禁止ということはうちのような小さな会社が大手と直接取引きしなければ違法ということになる。もちろん、これは既に違法であることは分かっている。しかし、次の偽装請負というのは、実質的には派遣であるのに請負であるような契約を結ぶということで、つまり、うちのような小さな会社は二重派遣ができないから偽装請負するのである。それも禁止にしようという訴えのデモだったのだ。

 それにしてもそんなことわざわざ訴えなくても、既に禁止されているじゃないか。いったい誰がそんなことを望んでいるんだ。と最初は思ったが、すぐに想像がついた。

 おそらく、世の中には(特に女性に多いのか?)社員になりたくて、まずは派遣社員からと思って契約しているのだけれど、一向に社員にしてくれる様子はなく、それどころか会社のいいように使われて、人手が足りているときは足りていない子会社などに派遣にだす。しかし、それでは法律違反なので契約上は請負契約とする。それに対して、もともとはその会社の社員になりたかったのにたらい回しにされていいように使われるなんて許せないという人がたくさんいるのだろうと想像したのだ。

 それは偏ったものの見方だ。一方からしかものごとを捉えていない。僕はおそらくその政党には一生投票しないだろうと思う。政策がどうという前に、そういった偏ったものの見方をする党が政権を握ると、その反対側にいる人たちはきっと苦しむに違いないと思うからだ。

 僕は小さな会社を経営しているということもあるが、一人の自由を求める労働者として、二重派遣と偽装請負の問題には「遊び」を持たせるべきだと思う。社員の不満を煽るようなことはしないで欲しい。

 「二重三重に派遣されると中間でマージンをとる会社が増えて自分の給料が減るんだ」という間違った考えに走るのを助長しないで欲しいと思う。

 どこが間違っているのかという質問に対する答えは無数にあるが、そのひとつとしてまず言いたいのは、次の協力構造についてである。

 ・「企業は派遣社員を利用することにより人員を抱えすぎるというリスクを減らす」
 ・「派遣会社がそのサービスにより企業から利益を得る」
 ・「しかし、派遣会社自体も人員を抱えすぎるのはリスクとなる」
 ・「我々のような小さな会社はそのリスクを埋めるというサービスを提供している」
 ・「そして、その社員は自分の学歴や経歴では絶対に入れない企業に入り、大きな仕事をすることができるというメリットを得る」

 この構造のどこにも中間マージンで儲けようなどという思想がないことを理解しないといけない。

◆ ◆ ◆

 『ミナミの帝王』という映画で出てきた言葉だったと思うが、「マグロ漁船に乗る」とか「肝臓を売る」など卑劣な方法で借金を返済させるということがあるとかないとか(真偽は分からない)。

 ところで、先日、アイフルの借金取立てが厳しすぎるということで訴訟をおこされていたが、結論はどうなったのだろうか、少しの間、営業停止させられていたようだが、何がどう厳しくて、どこまでやると罪になるのか線を引くことができたのだろうか。

 そして、今、金利のグレーゾーンの問題で揺れていると聞く。
 簡単に言うと、消費者金融の利率というのは大体29%弱だが、その利率が民法違反なのだけれど、その違反に対する罰則が「警告する」だけであって懲役刑も罰金もないので、大半の金融業者が無視している。そして、刑法で定められている最高の利率が約29%で、こちらはちゃんとした罰則があるので皆守っている。
 この民法と刑法の利率の差がいわゆるグレーゾーンというわけである。

 このような法体系になっていること自体おかしいと言えばおかしいのだが、僕のような経営者の目からみると、もっとおかしく感じることが起こっている。

 それは、金融庁がこのグレーゾーンをなくそうという発想で、2年越しの法改正を行なうということに端を発するのであるが、これ自体は別に悪いことではないし、常識的な判断であると思う。

 僕がおかしいと感じるのは、それに呼応して沸きあがってきた借り手の声であり、それに対する裁判所の判決である。

 「グレーゾーンが違法なのであれば今まで払ってきた金利を返してくれ」という訴えに対して、
 「訴えどおり返しなさい」さらには、「その金額に5%の利子を付けて返しなさい」などという一連のやり取りである。

 消費者金融が絶対悪なのであれば理屈は通らないが、それらの判決結果に対して特に違和感も感じないだろう。しかし、消費者金融が絶対悪であるという理由は何か? 違法な取立てをしたからか?

 僕は逆に将来が確実ではないが一生懸命働いて、必死で借り入れのお願いをしているにもかかわらず、一銭も貸さない銀行のほうが罪が重いのではないかと思う。

 バブル崩壊後、会社経営がうまくいかず自殺したという経営者の数がどれほど多いか。彼らは皆、自業自得なのか? それに比べて消費者金融の取立てに苦しんで自殺した人の数はそんなに多いのか? そして後者にはまったく罪はないとなぜ言い切れるのか。
 
◆ ◆ ◆

 高校のときの友人ヤマモトの父親が言っていた「手に職を」という言葉が本当に身にしみて分かる。

 今日、僕はそんな生活をしている。
 プログラマとして十数年働き、まさに「手に職を」つけた僕は、映画の中の借金に追われた人がやるように、マグロ漁船に乗った。

 それでもいいと思った。
 友人で出資者の一人でもあるナオッチが僕に言ってくれた。

 「続けてればそのうち良いことがあるさ」

 僕は、早く「そのうち」が来て欲しいと願いながら毎日働いている。
 そしてそのときが来たときのために経営の勉強も続けているのである。

◆ ◆ ◆

ところで、ブログタイトルのはじめについているDIYという言葉だが、Wikipediaによると、

 専門業者に依頼せずに自らの力で生活空間をより快適にしようとする概念のこと。
 英語でDo It Yourself(ドゥ イット ユアセルフ)の略語で、「自分で作ろう」の意。

という意味らしい。
単に日曜大工かと思っていたが、なかなか高尚な含みがあるものだ。

「Do it yourself」、よく分かるなぁと思った。

まさしく僕が今やってることなんだと。

◆ ◆ ◆

はじまり、はじまり。。。