先にABSのネックヘッドサポートについては、詳しく説明すると言っていました。現座北海道医療センターの筋疾患者や重心と関連する在宅のユーザー(筋疾患以外の類似疾患を含みます)のニーズに沿った新しいネックヘッドサポートの企画設計を行っているところです。
元々、ABSではネックヘッドサポートの提案は、旧八雲病院他の既に大きな側彎等が出来上がってしまったユーザーで、頭頸部にアプローチしなければ、呼吸や嚥下そして、口操作の電動制御にも支障を来す人たちへの対応として、取り組みを始めたものです。
元来ABSは、頭頸部のグッドコントロール(ハイハイやイヤイヤができやすいこと)を達成すべき良姿勢の指標としています。ですから、その頭頸部に対する直接的なアプローチは出来るだけしない条件で、つまり、頭頸部以下のシーティングの適正化で、シーティングの問題解決をすることを原則としていました。
しかし、私が拝見した旧八雲病院のユーザーの多くは、筋疾患だけでなく、重心の方達は年齢を重ねる毎に様々な要因があると思いますが強い側彎の傾向を強めます。
これらへの即時的な対応には、つまり、電動操作に口でする場合を考えると、グラグラの頭の条件では、正しく危険を避けた操作はできません。どうしても頭頸部にアプローチし最適化した頭頸部支持が求められました。
本来は、その様な状態にならないような経時的なシーティングアプローチがあれば良かったのですが、昔のシーティング理論(つまりABS以外の固定的な)で出来上がっていたシーティングシステムとの長い付き合いが多かったユーザーばかりだったのです。
このような状態にならないためのアプローチとして、側彎が発生する前に車いす移動に体幹の対称的な動きをできるだけしやすい環境設定として、駆動をアシストするヤマハのJWの活用などもしていますが、それらだけでは生活を支える環境として十分では無く、なんとかする方法を考え実践を通して少しでも良い環境設定が求められました。
ヘッドサポートには、輸入品を含め多くの既製品があります。しかし、国産の一般的な物は、枕の発想から抜け出せておらず、ネック支持の要素を求めると輸入品に助けを求めるしかありませんでした。
しかし、その輸入品も頸部支持を期待できそうな形状をしているものの頸部支持部の締め付け力が弱く、また素材自体の芯材の強度不足もあって、おそらく移乗を含む介護条件などもあるのか、大切な頸部支持部分が変形してしまい本来の目的を果たせていない状況がありました。これについては、輸入品の外観を真似たと思われる工房技術者の物も同じ傾向がありました。
そこで、当時八雲病院のシーティング業務に深く対応していただいていた業者さんの力を借りて、細部の調整が容易で強度を確保できる市販の接続金具とパイプ材と組み合わせたフルスペック仕様と言えるネックヘッドサポートを提案してもらい、コメディカルの評価を受けることとなりました。ここで、お断りしておくべきと思い記載しますが、この業者さんは大変辛抱強く、「ここはこう」などの定性的というか曖昧な意見を街の職人として、とても根気強く聞き、対応してくれる人です。私も彼を信頼し、函館の隣町の厳しい状態にあるユーザーへのサポートをお願いし、その作業を私がサポートする関係が続いてています。
さて、本題に戻ります。これは臨床の観察による細かな設定を実現できましたし、柔軟性が高いことから、臨床活用の結果をもって次の段階方向性を得るには優れた対応方法だったと思います。
しかし、頭頸部支持に関する疾患毎の様子に詳しいコメディカルの介入が無ければ、機能することが難しい物であったと思います。
それに加え細かな修正には一般的では無い工具の使用や難解複雑な構造を理解した対応が必要でした。 つまり、誰でもが簡単に直感的に修正することを求められる在宅ユーザーの使用には、問題が多かった様に思います。
また現状の工夫の積み重ねによって出来上がった物も、様々な調整要求に応えるために、ネックヘッドサポート背後にむき出しのパイプなどがあって、介護時の背後からのアプローチを困難にしていました。これは、緻密なサポートが期待できる病院や施設では問題が感じられなかったかも知れませんが、在宅ユーザーの決して広くない生活環境や車載時の対応で大きな問題をかかえていました。
説明が重複してしまいましが、このことは病棟での使用などでは有力なコメディカルのサポートもあって顕在化しない問題であって、いつしか、現状のままで問題が無いよねといった雰囲気に支配され、それ以上の改善に関する対応ができない状態になっていました。(にしむら)