怒濤 | 日日是好日

日日是好日

毎日を、「いい日」にしたい。

怒濤の数日間をすごしました。

アトリエで始めたアルバイト。

よくない噂はきいていたけど、やっぱりそのとおり。
ひとりひとりが、自分のストレスをほかの人に押し付け合っていた。

社長は毎日どなり倒していて
同じ非難の言葉をいろいろな表現で言う人がいて
思いやりの気持ちを持つことなんかみんなとっくに放棄していた。

「なにを言われても、自分が一生懸命やっているなら気にしない」ということを、強く強く心に念じて仕事をしてました。

夜は眠れないし ごはんは食べれなくなるし ひどかったけど。

目標があるから。そこにたどりつくために必要なことだったから。
技術だけ盗んでやる。って思ってやっていた。

だけど、突然、くびになりました。

きゃー。人生初のリストラに遭った。

いつもは底意地の悪い人がにこにことしながら、本心をいいわけでくるんで話していた。
気持ちが悪いと思った。気持ちの悪い笑顔。

バイトはもうひとりいたのだけど、その子は1ヶ月くらい先輩。

結局のところ、バイトは最初からひとりしかとるつもりはなかった。

その子が使い物にならなかったときのための、保険。それがわたしでした。

人間として、というより物として見られていたみたいだ。
いつでも、捨てられる。きがねなく。

こうして、また仕事さがしがはじまるのでした。


嵐のような日々の中で、とつぜん雷に打たれて、しばらく放心してしまいました。

だけど、なぜだかそんなに「むかつく」とか「自分はだめな人間だ」とか思ったりはしなかった。

他人は、変えられない。
それを前よりも深く心に刻んでいたからだと思います。

わたしは毎日精一杯やっていた。
いつも「遅い」と怒られていたけど。

それ以上のことを、自分に課すのは絶対にやめよう、と誓ってました。

わたしはすぐにそういうことをする。自分へのハードルを不自然なほどにあげて、それが超えられないと自分を責めてしまう。

でも、それをやめようと思った。本気で。

一生懸命やっている自分を認める。それでいいんだ、とまず自分が自分を受け入れる。

そうしなければ、常に非難されている状況ではすぐにつぶれてしまうから。

自分がやっていることを、ほめる人もいればけなす人もいる。
それは変えられないんです。どうしたって。見方ひとつだから。

だから、そういうのにふりまわされるのをやめた。

他人のことは、関係ない。

誰かがいらいらしていようと、自分を大きく見せるために大声をだしていようと、自分は自分でできることをする。
それだけを考えよう、って毎日思ってました。

一生懸命やったら、そのあとはもう自分の力は及ばない。他人次第です。


人のことを人として尊重できない。
こんなに悲しいことはない。

それが、たとえ苛烈なビジネスの場であっても、そうだと思っています。

それが守れないくらいなら、やらないほうがいい。

そのアトリエは、そういうところでした。
自分も他人も尊重できない。マイナスのエネルギーをぶつけあってわざわざ傷つけあっている。
わたしにはそういう風に見えた。

それでいい、と思っているのなら、それがその人の人生。

そして、そのことはわたしには関係がないこと。

わたしは、自分のできることをやった。人のことを尊重する努力をした。

もう、それだけでいいかあ、っていうかんじ。


だけど、「親になんて言おう」って考えたときに、ちょっと泣きそうになりました。

あんなに喜んでくれたのに。
やっとお金も稼げるようになったのに。

応援してくれる気持ちを踏みにじることをしたくなかった。

父は激怒して「そこに電話してやる」とか言い出してあわてた。
ごめんね、と思った。

まわりの人のやさしさに、救われる思いです。


結局、最速でリストラされたけど、この数日間はむだじゃなかった。

服をつくるアトリエというものをのぞかせてもらえたし したっぱがやる仕事も少しは覚えたし。
なにより、「自分を受け入れること」と「他人のことを気にしないこと」の大事さを痛烈に学びました。

そこは、わたしの長年の弱点だったから。

それから。

わたしは本当に、服づくりをする仕事がしたいのか、ということを考えました。

アパレルの厳しさ、特有の厳しさだと思うんですが、それを身を以て体験したことで、「自分の本当にしたいこと」についてもういちど考え直そうと思ったのです。

朝から、それこそ終電まで働く。給料は安い。人的環境も悪い場合が多い。体力的にもきつい。

それから、やっぱり仕事にした時点で、妥協をしないといけなくなる。

それでもやりたい、というなら、そういう苦労以上のなにか強い目的がないといけない。

わたしにそれはあるんだろうか。

もちろん、この業界の中でもいろんな会社があって、働き方もさまざまだとは思うけど。
やっぱり、比較的きつくはなると思う。

好きなことを仕事にするんだ!って信じて疑わなかったけど。

そこに固執しなくてもいいのかな、っていう気がしています。

「天職」と「適職」はちがう、って本に書いてあった。そのとおりだと思った。

天職は服をつくること。でも、適職はちがうかもしれない。

服との関わり方は、「朝から晩までどっぷり、疲れ果てるまで一緒」じゃなくてもいいのかもしれない。

そんな風に思ったんです。

生き方は、ひとつじゃない。
わたしは無用なこだわりを持っていたのかもしれない。


あー、やっぱりいろんなこと考えられた。

むだにならなくてよかった。

これから、白紙に戻った日々の中で、未来のことを少しずつ考えていこうと思っています。