新しい洋服
新しいバッグ
新しいPHSに新しいリップグロス

全てが新しかった18歳の春、私は街から離れた教習所に通っていた。知り合いもほとんどいない、土地勘もないそんな所。全ては異色を放ちたいB型の本能。人と同じ教習所には通いたくなかったのだ。

いつも通り教習を終えてタバコに火をつける。
喫煙所はいつも満席。同じグループが場所を陣取る。

柄の悪いそのグループの中に「彼」はいた。
服装はいつも真っ白い作業服。けして素敵な服装とはいえない。

でも、一瞬トムクルーズなんかに見えるくらい、鼻筋の通ったまさしく美形”イケメン”だった。
がっちりした体格、高い身長、荒っぽい話し方。

煙を吐きながら目ではいつも彼を追っていた…

後ろで私の名前を呼ぶ声がした。
振り返ると同じ短期大学に通うトモコがこちらに手を振っている。

彼女が駆け足で近づいてくる。
柄悪集団をくぐりぬけようとしたその時、”彼”が言葉を発した。

「トモコ!」

ドキっとする。胸が高鳴る。
知り合い?どうして?まさか??


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その時期、私には彼氏と呼べる人がいた。
同じ歳、やんちゃでストリート系の彼は他の誰よりもやさしかった。

女の子って不思議なもので「やさしい」人を理想にあげる割には、「やさしすぎる」と男として物足りなくなってくる。見た目は男っぽい。というか男の子っぽい。なんでも聞いてくれる彼。でもそこに男としての魅力が感じられなくなっていた。
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トモコが「白い作業服の彼」を紹介してくれた。
彼の名前は「トシ」。同じ歳でトモコとは幼馴染だった。


胸の中でホッと深呼吸をした。
でも次の一瞬で私の全身がロックした。

「彼女は元気?」

聞けば、数年付き合っているかわいい彼女がいるらしい。

なぁんだ。彼女いるんじゃん。

残念ながらも、そこは仕方がない。自分も人の事は言えない。

「こんばんは」
何回か言葉を往復させた後その場を離れた。


次の日大学でトモコと私は盛り上がった。
話題はもっぱら、外見も話し方も、たばこを吸う姿勢でさえ”男前”なトシのことだった。

毎回、男性特有の作業服を着ているから”男らしく”見えるのか?
口調が”やさしさ”からはかけ離れた荒っぽさだから”強そう”に見えるのか?


自分の彼と比べてはトシのことを考えていた。
筋肉のついた引き締まった体つき。顔も体格もまさに理想だった。


思いもよらぬ出来事が私の耳に触れたのは、それから1週間後のことだった。