小説・カリスの金貨21
第一章【カリスの使徒】No.20

「リーヤ!」

「お父さん…」

「おお…なんだリーヤ、こんな所にいたのか…ここで何してる」

「シークに手紙を届けに来ただけよ」

「手紙だと?…」

シークの手元にある手紙に目を向けると睨み付けるようにシークに詰め寄る主人。

「なんだ?お前…今朝、ケリーから連絡が来ていたが…ふん、もう浮かれ気分か!このたわけ者が!」

“ガシッ!”

いきなりシークを足蹴にするソンバーグ。

「あぅっ」

「このひと月…寝床と食事を与えてやった恩がありながら、まだ娘を拐かす気か!この出来損ないが!」

“ガシッ、ガシッ!”

「ぐぁっ、げほっ…」

「お父さん!止めて!私が悪いのよ!シークに早く知らせたくて!」

「リ…お嬢様…いいんです…僕が全て…いけないんです…」

「そうだ!母親の体内から生まれない人間などいるものか!この作り物の合成人間が!…ケリーもケリーだ、母親が知人と言うだけで私の所にこんなお荷物を…だからあんな問題をおこす研究所に派遣されるんだ」

「お父さんあんまりだわ!シークは何も悪くない!」

心が揺れていた…“僕は人間じゃないの?…生まれて来てはいけなかったの?僕は生きてはダメなの?…。”

「ふん、折角今日は仕事で良い取り引きが出来たのに、貴様のせいで…ムナクソが悪くなった。リーヤ、行くぞ、母さんが呼んでる」

さっきの言葉とは裏腹に父親には逆らえないリーヤだった。

「シーク…ごめんなさい…」

「…」

「いいか、帰れるからといって仕事の手は抜くなよ!サボったらこうだ!」

“ガシッ!”

「あぐっ…わかり…ました…旦那様…」

母屋へ引き上げる二人。

残されたシークはただ立ち尽くすしかなかった。

“僕は…僕は…。”

そして2日が経った夜。

“ギィキシッ、ギィキシッ。”

「よし、これで全部だ、やった…これでファリアに帰れるぞ」

脱穀の仕事を終え、干し草のベッドに横たわるシーク。

満天の星達がシークを照らす。

「いよいよ明日か…」

はやる気持ちを押さえながらもウトウトしてきた、夜もかなり更けた頃。

"ヒヒーン!ブルルル…“

「!?…なんだ…厩舎の馬達がなんか…騒がしいな…」

すると窓ガラスの割れる音が。

“ガシャーン!”

「!?、今の…母屋からだ…何かあったのかな?」

仕方なくランプを片手に母屋の裏口へ向かうシーク。

「?…裏口が開いてる…」

恐る恐る裏口を覗き込むとそこには…。ソンバーグが階段の下で血だらけで倒れていた。

「旦那…様?…ひぃぃ!」

続く