私の家庭教師時代の教え子に、A君という中学一年生がいた。彼は小学生の時、原因不明の足の病気で長く学校を休んだため、学校の勉強に遅れが生じてしまい、勉強嫌いになり、不登校気味になった経験を持っていた。そんな彼を心配して、両親は家庭教師をつけたのだが、彼が勉強に対してものすごい嫌悪感を持っているために家庭教師達が長く続かなかった。そのため、その頃から異端児だった(笑)私に白羽の矢が立ち、彼の担当となった。訪問した最初の日は予想通り、散々なものだった。-家になかなか帰ってこない、帰ってきても車に閉じこもり出てこない、家に入ってもトイレに閉じこもり出てこない。-そんな彼だったが、私が彼の妹と楽しそうにゲーム感覚の勉強をしている声を聞いて、さながら天照大神のように、トイレという心の岩戸を開けて出てくるようになった。やっと一緒に勉強をやるようになった頃、いつものように妹を交えて勉強という名の遊びをしていたのだが、A君は順番が待てない。自分勝手に物事を進めようとする。そんな彼を両親は叱ってとがめるのだが、頭ごなしに言う両親の言葉ではいまいち効き目がない。そこで私はしばらく考え、物語を作ることにした。前の授業で、絵本の読み聞かせや物語作りをしていたので、戒めというのではなく、先生の例として紹介した。その効果があったのかどうかは分からないが、A君は以前よりいいこになった。その物語は以下のものである。
小さな島の物語 ~Little Island Story~
南のはてのずっとはて、小さな島がありました。
あんまり小さい島なので、ひとっこ一人いやしません。
そこにいたのはたったの2匹、お猿のモン太と小鳥のぴーたん。
モン太は得意の木登りで、椰子の実取って食べていた。
ぴーたんカワセミ泳ぐの上手、魚を取って食べていた。
あるとき嵐がやってきて、椰子の木全部折れちゃった。
食べ物無くて泣いていたモン太にぴーたん魚をあげた。
「こまったときはお互い様よ。」優しいぴーたん魚をあげた。
しばらくたってまた木が生えて、椰子の実取れるようになったころ
今度はしばらく日照りが続き、魚が全然取れなくなった。
けれどモン太はぴーたんに、椰子の実一つもあげなかった。
「だって、僕が全部食べたいのだもの。」いやいやモン太は椰子の実あげない。
食べ物無くてひもじくて、小鳥のぴーたん死んじゃった。
またまた嵐がやってきて、椰子の木全部折れたとき
モン太はまたまた泣いたけど、優しいぴーたんもういない。
いまさらいくら泣いたって、優しいぴーたんもういない。