僕はアリ君。よくまじめって言われる。この前、友達のキリギリス君の家に遊びに行ったら、キリギリス君のママに『男の子は少し悪いくらいの方がもてるのよ』って言われた。
確かにキリギリス君はもてる。学校でも腰ばきで太いズボンをはいて、ワイシャツのボタンは二つ目まであけて、ネクタイはミノムシみたいにぶら下がっている。先生たちは彼をよく叱るけど、キリギリス君は聞く耳持たず。でもそれがかっこいいんだって。
キリギリス君と僕の格好は確かに全然違う。僕は町のサラリーマンみたいにきちんと制服を着て、ネクタイも上いっぱいまで締め上げている。僕はこの格好気に入っているんだけどな・・・。
あとこれはないしょの話なんだけど、キリギリス君はタバコ吸ってるんだって。そういえばこの前の授業中に、キリギリス君が枕にしていたプリント、よだれの部分が茶色に変色してたっけ。
バイクにも乗ってるらしい。『バッド・インセクツ』ってグループに入ってるんだって。僕も誘われたけど、断った。学校で禁止されているしね。
そんな僕を『面白くないやつ』って言う虫もいる。けど気にはしていない。だって他人に迷惑はかけていないし、何よりも僕はそんな自分が好きだから。
キリギリス君も、僕と似たようなことを言う。『俺がやりたいことやって何が悪いんだよ。他人に迷惑かけてないし。』
ある日、悲しい知らせが届いた。隣町のアゲハママと赤ちゃんが入院した。原因は夜中バイクがうるさいせいで赤ちゃんが寝てくれなくて、ママはノイローゼになったんだって。
その時、僕は思った。『ホントにキリギリス君は迷惑かけてないのかな?』って。だから今日、思い切ってキリギリス君に言ったら、『絶交だ!』って言われた。
悲しかった。けど、僕は正しいことを言ったつもりだから・・・。
数ヶ月後、僕はキリギリス君と仲直りをした。キリギリス君は昔とは全然違う。『バッド・インセクツ』はやめたらしい。
何より違うのはその格好、―僕と同じだ。―
僕がキリギリス君に、「かっこわるくなっちゃうんじゃないの?」と聞いたら、『お前と一緒ならかっこわるくないよ』と彼は言った。
キリギリス君はまじめになった。まだ慣れないらしく、時々彼は授業中寝てしまう。けれどそんな彼を僕は心からかっこいいと思う。それにもう、彼のプリントは茶色に変色することはないのだから。